嘆き 第四話
奥瀬善九郎と法源寺の僧侶が目を見合わせて戸惑っているとき、突如として久慈信勝は叫んだ。
「すべて私が悪いのです。私が誑かしたも同じ……ひたすら南部と大浦の和を願い、精進して参りました。しかしこれほど報われぬ事がございましょうか。」
目には涙、次第に鼻からも水が垂れ、ただしそのようなものはお構いなしに、信勝は叫び続ける。
「白取と大浦を仲良くさせようと結ばせてみれば、いつの間にか白取は大浦の手駒に成り下がり。奥瀬様と大浦を結び付けようとすれば、悪巧みに利用される……。こんなにコケにされて、叫ばずにおれましょうか。」
そして信勝は奥瀬の黒い袴を掴み、必死になって訴え始めた。
「私は罰せられてもよいのです。ただ……戦だけは避けて下され。私の願いはそれだけでございます。すでに浪岡には大浦軍が入り、油川へ向けて兵を進めていることでしょう。虚を突かれた油川に勝ち目はありませぬ。町を戦火に及ぼしたくないのであれば……ご英断を。」
奥瀬から表情が消え、笑いや哀しみなど一切ない。ただただ信勝の顔を見て、さらに近くで見るために身を屈めて同じ目線に座った。そしてそのまま信勝に問うのだ。
「お主はこれからどうするのだ。」
こちらへ伝えに来たということは、兄である為信を裏切ったことになる。それを承知しているのだろうか。おそらくは……信勝は切羽詰まってしまい、そこまで考えてはいまい。
「どうぞ刀を腹に突き刺して下さい。それが嫌なら首を手で直接お締め下さい。どのような御命令にも従いまする。」
その言葉を聞いて、奥瀬の顔に表情が戻る。その面構えはたいそう穏やかなもので、戦支度で荒れ狂うこの場所には不釣り合いなものだった。




