嘆き 第二話
……だとしたら、勝ち目はない。堤氏の兵力を白取が割いているわけで、さらにそこへ大浦が合力となるならば、我らに勝算はない。奥瀬は至極冷静にそのことを見抜いていた。
ただし為信はよく策を用いる。まだわからないことだらけで……しかも一つの恐れが目の前にある。それは頼英が嘘をついているという可能性だ。頼英、ひいては明行寺が裏切るなどということはまずないだろうが……あの山の明るさには疑問が残るし、すべての話はこの老僧からしか聞けていない。つまりは何とでも刷り込みができるのだ。
そして……ふと思ったことを問いただしてみた。
「して……私の妹はどうしている。妙誓はやっぱり為信と戦うべしと申しているか。」
その言葉を聞いた途端、頼英の顔が一瞬だけひるむ。奥瀬は見逃さなかった。……これは何かあるぞと踏んで、頼英の言い出すのを待たずして、次の言葉を添える。
「やはりこのような大事な場だ。己一人で決めるのは心細いので、妙誓をこの場に呼んではくれまいか。あやつの直にくる物言いはきついが、本質をついておる。ささ、今すぐここへ。」
予想外の言葉に、頼英の目の前は暗転する。もちろん真夜中なのだから暗いのは当たり前なのだが、ここで言い返せないようでは “策” が潰えてしまう……。それだけは避けなければならぬ。避けねばならぬのだが……ある意味で老僧もまた本来の人の道に反することをしている。さらには彼女は奥瀬善九郎の妹なのだから、いまここで斬り殺されかねぬ。
奥瀬の疑いはさらに強まり、じっと頼英の顔を睨み……、答えが返るのを待つ。周りは騒がしく動き続けるのに逆らい、傍から見ると二人だけはその場で時が止まっているかのよう。
頼英の頬に汗が伝い、胸倉は吹き出たものでまみれている。それでもそこらの小僧と違うのが彼。なんとか知恵を絞り、口を開くのだ。
「今は恐らく、ありとあらゆることに憤慨し、苛立っておいてでしょう。正しい答えを導き出せるとは思えませぬ。」
そして奥瀬は、わざと怒鳴る。
「それでもよい。あやつの本音が聞きたいのだ。今すぐここに連れてこい。」




