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津軽藩起始 油川編 (1581-1585)  作者: かんから
第七章 浪岡無血開城 天正十三年(1585)三月一日
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禅譲 第五話


 同日、油川(あぶらかわ)明行(みょうこう)寺。庫裏(くり)の一室で尼の妙誓(みょうせい)は正座をし、手前に置く小さな仏様を拝んでいた……。心を落ち着かせようとして、ひたすら無を目指すものの……苛立つばかり。寺に戻ってからというもの、僧侶らは不審な動きばかり。住職である私に何か隠しているかのような、あからさまに目を背ける小僧もいた。



 そこで本日この時。位の高い者らを集め、問いただすことに決めた。師匠の頼英(らいえい)ばかり当てにしても仕方ないし、私が “住職” なのだから私が全てを担わなければならぬのだ。

 昼餉が終わり、未の刻ほどか。呼び出された数人の高僧らは腰低くして、妙誓の待つ一室へと入った……。


 妙誓はたいそう不機嫌そうで、ぶっきらぼうに “そこへ座りなさい” と座布団ある方を指さした。とりあえずは言われるがままに各々座すが……もちろん彼らには妙誓の求めるところはわかっている。彼女は苛立ちながら言った。


「ここ最近のあしらいはなんじゃ。何か私がいけないことでもしたか。それとも言えぬことでもあるのか。」



 高僧らはしばらく黙ったままだったが……廊下に人歩く音が近づいてきたのが分かると、眉をしかめつつ……畳に目を合わせながら頷く。妙誓 は“目を見て申せ” と文句を言った瞬間、閉めていたはずの襖は荒くも放たれた。そこには槍や刀を持った若い僧侶らがおり、許しも得ないままずがずがと部屋の中へ入ってくる。妙誓は思わずその場に立って……彼らから離れようと後ずさりをしてしまった。“何なのだ、お主らは” と叫ぶものの……次に飛んできたのは(こぶし)。紫色の今朝の上から腹に向かって一発。妙誓は口から言葉にならぬ何かを吐き、そのまま気を失ってしまう……。倒れている彼女は数人で持ち抱えつつ……縄で身動きがとれぬように体を縛られ、その一室の角にある柱に結びつけられる。



 寺でも戦は始まった。


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