禅譲 第五話
同日、油川明行寺。庫裏の一室で尼の妙誓は正座をし、手前に置く小さな仏様を拝んでいた……。心を落ち着かせようとして、ひたすら無を目指すものの……苛立つばかり。寺に戻ってからというもの、僧侶らは不審な動きばかり。住職である私に何か隠しているかのような、あからさまに目を背ける小僧もいた。
そこで本日この時。位の高い者らを集め、問いただすことに決めた。師匠の頼英ばかり当てにしても仕方ないし、私が “住職” なのだから私が全てを担わなければならぬのだ。
昼餉が終わり、未の刻ほどか。呼び出された数人の高僧らは腰低くして、妙誓の待つ一室へと入った……。
妙誓はたいそう不機嫌そうで、ぶっきらぼうに “そこへ座りなさい” と座布団ある方を指さした。とりあえずは言われるがままに各々座すが……もちろん彼らには妙誓の求めるところはわかっている。彼女は苛立ちながら言った。
「ここ最近のあしらいはなんじゃ。何か私がいけないことでもしたか。それとも言えぬことでもあるのか。」
高僧らはしばらく黙ったままだったが……廊下に人歩く音が近づいてきたのが分かると、眉をしかめつつ……畳に目を合わせながら頷く。妙誓 は“目を見て申せ” と文句を言った瞬間、閉めていたはずの襖は荒くも放たれた。そこには槍や刀を持った若い僧侶らがおり、許しも得ないままずがずがと部屋の中へ入ってくる。妙誓は思わずその場に立って……彼らから離れようと後ずさりをしてしまった。“何なのだ、お主らは” と叫ぶものの……次に飛んできたのは拳。紫色の今朝の上から腹に向かって一発。妙誓は口から言葉にならぬ何かを吐き、そのまま気を失ってしまう……。倒れている彼女は数人で持ち抱えつつ……縄で身動きがとれぬように体を縛られ、その一室の角にある柱に結びつけられる。
寺でも戦は始まった。




