表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
津軽藩起始 油川編 (1581-1585)  作者: かんから
第七章 浪岡無血開城 天正十三年(1585)三月一日
64/102

禅譲 第三話


 信勝は固まったまま。怒りたいのだが……耐えがたい疲弊感、徒労に終わったすべての事が嫌になり、結局は何もなしえずに終わる哀しさ、己を抜きにして事は進んでいく。



 そんな信勝をよそに、兄の為信は矢継ぎ早に家来らへと指示を出していく。


「兼平、お前は民の動揺を鎮めよ。他国者がむやみに暴れぬよう、商家長谷川にも令をだせ。」


(こん)今羽(いまばね)街道を、小笠原は大豆坂(まめさか)街道を押さえ、知らせが油川や横内に伝わらぬように封鎖せよ。森岡は梵珠(ぼんじゅ)山から北方に兵を散らばせ、怪しい者がすり抜けて油川へ行きつかぬように手を配れ。」


 それぞれの家来らは “はっ” と威勢よく返事し、各々(おのおの)散らばっていく。彼ら全員を信勝は知っているが、忙しいためか信勝にわざわざ触れようとはしなかった。

 そして……


「沼田。最後の頼みだ。御所号が落ち着かれたら、館野越へお移りいただけ。土地は用意しておるから、子孫代々そちらでお過ごしになればよろしい。特に当人には謀反の気はない。道すがら殺すなどということは考えぬように。」



 沼田は少しだけ苦笑し、


「もちろんでございます。殿が御所号の地位を継いだのですから、彼もまた立派な御一門でございます。無碍(むげ)なことは致しますまい。」

 



為信は頷き返し、沼田はさっそく奥の方へと消えていった。白取も浪岡城内の使用人らへ説明するためにその場を去り、主だった者で残るは為信と信勝……。


 信勝は残る気力を振り絞り……兄を睨んだ。兄は真顔を貫き、信勝と相対する。



「……もしや同じ奉行衆の(あずま)殿を油川へ準備に行かせたのも……この企みのためでございますか。」


「その通りだ。残る奉行はお前と千徳殿のみ。千徳殿を企みには混ぜていないが、こうなってはご納得していただくほかないだろう。」




 信勝の身体は小刻みに震え……無意識に拳を握っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ