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津軽藩起始 油川編 (1581-1585)  作者: かんから
第六章 堤弾正、暗殺 天正十二年(1584)秋
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不本意 第四話

 ……そして同じころ。大浦為信と奥瀬(おくせ)善九郎(ぜんくろう)が浪岡で語らっているとき。為信の懐刀である沼田(ぬまた)祐光(すけみつ)は密かに油川へ潜入。明行(みょうこう)寺の奥まった一室にて、前住職の頼英(らいえい)と面会していた。


 木戸を開けると、すぐそこには数百基もの墓の群れ。雪こそ積もるが、寺小僧が一生懸命にかたづけて、人が通れるくらいにはしてある。重労働に疲れ果て、彼らは深い眠りにつく寒い夜。沼田と頼英は囲炉裏(いおり)にて、たまに薪を入れつつ火をのべる。……その上で大きな鍋に入った水を煮えさせる。むわっと湯気が出たところで……それを頼英が持ち手を掴み、老いぼれたその腕は小刻みに揺れながら、なんとか下ろすことができた。その様を沼田は黙ってみている……。



「ご隠退されて、何年たちます。」


ふと沼田は老いぼれに問う。頼英は……



「一年か、はたまた二年か。」




 頼英は少しだけ笑みを浮かべつつ、すると沼田も同じように笑うのだ。


「覚えておられぬのですか。」


「いやいや、引退したはずなのに、他の者らは未だわしに頼ってきてしまうのですわ。だからそんなに変わらぬような気がしましての。」



「……と、申されると。」


「跡を継いだ妙誓(みょうせい)尼は立場こそ奥瀬様の妹君。しかしその(さが)ゆえ、はっきりとしすぎておられるので、皆はわしを退かせてくれぬのです。」


 つまりは……竹を割った性格とでもいえばいいのか。それが僧侶たちには不評らしい。これまでの一人の尼とは違い、住職ともなれば求められる役どころが違う。それを彼女は理解しきれていないのだろう。


「しかし、わしの立派な弟子でございますれば。これから住職らしくなっていかれると信じております。」




 そういうと、頼英は手元の茶碗に白湯を注ぐ。そして沼田へと差し出した。沼田は一礼をし……黙ってそれに口を付けた。


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