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津軽藩起始 油川編 (1581-1585)  作者: かんから
第一章 津軽為信、側室を取る 天正十年(1582)夏
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家族の事 第三話


 時が経てば感情というものは当然の如く変わり、遠く離れた人との縁は薄れ、常に接する人と仲良くなるのは当たり前である。それが自然とそうなったのか、意図的に離したのかは別として。すなわち為信にとっての戌姫はそれであるし、その想いを押しつぶすかのように徳姫を大事にしてきた。今や二男一女をもうけ、仲睦まじい限りだ。


 だがふと別の女を求めたくもなる。しかし戌姫のこともあるし、中々踏み出せない自分がいる。それに小笠原の娘を側室にしてしまおうなど決めてしまっているわけでない。ただ単に語らいたいがために小笠原の家族を呼ぶだけだ。


 そうだ。すでに子を設けているので、側室を取る必要性も薄い。あとは己の快楽か、趣味か、はては暇つぶしか。いやいや上に立つ者なのだから、筋が通っていなければならぬ。家来衆の示しもあろうし……、いや。もちろん当時の一般的な概念からいえば、大将が側室を取るということに不自然さはない。その上で特に小笠原は十分なる功臣であるから、その娘を取ればお家はさらにまとまり、強固になる……。


 いやいや、何をすでに側室を取るつもりでおるのか。もしや徳姫に飽きたのか。そうなのか。男の(さが)というものは……あれだけ己や子供らに尽くしているというに。徳姫では心全てを委ねることはできないか。その隙間を別の女で……。




 そうこう考えていると、ふと我に返った。事を難しくする必要はない。主君が家来の家族と語らうくらい、ありうること。


 そして足は大浦城下の長勝寺(ちょうしょうじ)へ向かう。日は岩木山の向こうへと沈みかけ、辺りは次第に暗くなっていく。少ない供回りを連れ、ずっしりと重い門を開き、横に建っている庫裏(くり)へと向かった。……大きな馬が松につなげられているので、小笠原とその家族はすでに来ているはず。


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