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津軽藩起始 油川編 (1581-1585)  作者: かんから
第一章 津軽為信、側室を取る 天正十年(1582)夏
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家族の事 第二話


 私には二人の男子の他に、娘の富子もいる。後ろを小さな足で歩く娘の姿というものも、かけがえのない存在。こうして生まれたときから共に過ごすことも、今の世の中からすれば特別なのかもしれぬ。



 かつて小笠原は妻子を縁者に預け、諸国を浮浪した。そうして津軽の地までたどり着き、最後にはわが家臣となった。こちらでの暮らしが落ち着くまで家族と離れ離れだったが、二年ほど前に呼び寄せた。もっと早く来させてもよかったはずだが……小笠原の中でなにかしらの “ふんぎり” というものがあるのだろうか。彼は十分に手柄を立てているし、誰も非難する者なるいるはずがない。もちろん "ありえぬ" 一件はあったが、それは決して彼のせいではない。いまさら何を遠慮していたのか。


 ……だからこそ、信頼におけるともいえよう。ふと気づくと、平太郎と総五郎の二子が去った後の門前に、一人の若い娘がきょろきょろと目を泳がせていた。装いはきらびやかというわけではなく、どちらかというと粗雑な……いや農婦がここに来るはずもないし。城中であるのだから。


 いつしか目が合う。為信もさすがに誰であるか気付く。



「もしや、小笠原殿の子女であるか。」



 最初こそ娘は呼びかけられたことに慌ててしまい言いよどんだが、手元に持つ風呂敷包みに目を移しつつ、小さめな声で答えた。


「はい。父上が忘れて行かれたので……どちらへ向かわれましたか。」


「もうあちらの方へいったぞ。」


 為信は小笠原の向かった方を指さした。すると娘は慌てて一礼をし、小走りにその場を去った。



 娘の富子も、十年も経てばあのようになるのだろうか。なんとも気立てのよさそうな印象……。

 今度、小笠原の家族を城に招いて語らってみようか。

 


 


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