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津軽藩起始 油川編 (1581-1585)  作者: かんから
第三章 狄狩り 天正十一年(1583)夏
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力の向かう所 第四話

 黙って聞いていた野郎頭のヤマノシタ。頭上の出来物を取ろうと髪の毛をかきむしり、すると否応なくフケが出る。手の爪に少しついた白いものを息を吹きかけ、遠くへ飛ばす。そのつまらなそうな仕草に気付いた角兵衛は、なぜお(かしら)は至極落ち着いたままでおらすのかと疑問に思った。そこで恭しくヤマノシタへ寄り、一つ尋ねる。



「お聞きの通り、私の考えはこうです。他国出身の同志も納得してくれています。しかし頭は浮かぬ顔をしておらす。それはなぜでしょうか。」


 鼻で笑ったヤマノシタ。仕方なしに口を開く。



「要は力を持て余しているのだ、お前らは。力の向きが外へ行くならば、以前のように御所号が倒れるほどのことが起きる。だが今回は内側へ向かう……“外” へいけないのだから、“内” を喰らうしかないのだろうさ。」


 正直なところ、どうでもいいとも思えてしまう。成すがまま、成るがまま。ヤマノシタの生き方はこうだ。明確な意思を持って動いたかつての首領である万次とは違う。ならばなぜこうして頼られる立場になったかというと……最後には己の身を自由に使えと。つまりは神輿として。さらには窮地に陥った仲間をどんな理由であれ援ける。これが彼の信条だったからだ。

 ヤマノシタはこうもと言った。


「ここで俺が止めても、同じような考えの他国者が土地を奪い始めるに違いない……。そして最後には為信が倒れる。乱れるに乱れ、最初はエゾ村だけだったものが、普通の農村へ牙が向かい、果ては城を奪うことになる。……盛り上がれば、そういうことだ。」



 その言葉を聞いて、角兵衛は戸惑う。そんなことをするつもりはないと必死にとりなすのだが……




「危うくなったら俺を頼ればいい。逆にこれがきっかけで為信が倒れるのなら……それも運命だ。」


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