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津軽藩起始 油川編 (1581-1585)  作者: かんから
第二章 多田玄蕃、為信に従う 天正十年(1582)晩夏
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悪評 第一話

 その夜、為信は小笠原とその家族を城下の長勝寺に呼び、主君として(めい)を伝える。いや本来ならば為信当人が伝えなくてもよい話。家族内で小笠原が娘に申し聞かせればいいだけの事だった。それをわざわざ……いらぬ手間をかけて自ら話す。もちろん小笠原が寡黙であまり話したがらないという(さが)をもっている。でも同じ家族なのだから、そのくらいは伝えてもらうべきところ。


 詰まるところ、為信はその娘に会いたかったのだ。未だ諦めきれず……かといって会ったところで、先に繋がるというわけではないのだが、顔を見れるうちに見ておきたい。側室の輿入れを差し置いてでも。

 ……境内にホタルが入り込む。ぼんやりと輝くその光が一つ。つられて他の光も寄ってきて、池の周りにて動き回る。まばゆく遊ぶさまはかつての童心を思い出したりする。



 その(さま)を開け放たれた襖から見つつ、為信は……娘に対して申し聞かせる。


「どうか多田(ただ)玄蕃(げんば)という男に嫁いではくれまいか。三々目内(みつめない)の館主で、そのあたりの土地を治めている若い者だ。共に六羽川合戦を戦い、生き残った運良き男だ。」



 娘は……隣にいる父と母を見る。父である小笠原は……黙ったまま一言も発しない。母は……すでに聞かされていたのもあるが、笑顔を作ると同時に、なにやら哀しげな表情もする。もちろん想像はつく。せっかく離れ離れだった父と暮らし始めたのに、すぐに嫁いで行ってしまうとは……。どうであれ、娘の答えは決まっているのだから、悩むこと自体無駄なのだが。




「はい……。お受けいたします。」



 為信は一つ頷く。そして再び娘に話す。


「うむ。もし嫌だというなら、断るのも悪くはない。もし断っても他の嫁ぎ先はあるだろうし……心を落ち着かせるまでの刻が必要なら、遅らせればいい。私でよければ話の相手になろう。」


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