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津軽藩起始 油川編 (1581-1585)  作者: かんから
第十章 外ヶ浜平定 天正十三年(1585)夏
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千徳の奮戦 第四話

 “小癪(こしゃく)な” と兵数の多い南部軍はすぐさま千徳政康率いる決死隊を潰そうと一斉に囲む。先頭を馬に跨り駆けるのは政康本人。彼が本陣への道を切り開くと、その後ろを歩兵らが進みゆく。これは大将首を狙えば終わりぞと南部の将兵はわっと湧いて彼を狙う。しかれども政康、神仏を味方に付けているのだろうか。一向に矢が当たらぬ。当たっても身に着けている鎧や兜に弾き飛ばされるのみ。余多もの刀や槍も彼を狙うが、その度に斬り殺されていく……。軍神とは彼の事か、いやいや彼もまた人だ。今こそ勢いを以て攻め立てているが、大軍の中を無謀にも突進しているにすぎぬ。ならば周りの兵をまず先に狙えと、後ろ側から容赦なく矢の雨を降らせる。しかし兵らもまた政康に感化されているのか、いくら鏃で(やじり)が体にめり込もうとも、戦うのをやめぬ。


 だからといって怖気づく南部軍ではない。大将である(ひがし)政勝をはじめ、息子の重康や他の将兵ら、屈強な者ばかり。辺りは土埃を上げ、金属の当たる音や鎧がぶつかり合う音はもちろん、さらには人の叫びあう声で辺りは包まれた。ところ嫌わず浅瀬石の河原から田園地帯も含め、他の城兵らも政康の勇ましさに続き出てきたので、途轍(とてつ)もない混戦模様である。



 ……となるといずれ不利になるのは兵数の少ない千徳勢。次第に押され……夕方日が落ちかけることには、さすがの政康も城へと引き上げようかと思った。城にいる政氏も引きの陣太鼓を叩こうかとバチを取っていた。



 だが……あろうことか、南部軍はその優位さは保ちつつも、東へ東へと次第に兵を退いていくのが城から見える。その場で戦っている将兵にもその報は知らされ、だからといって我らも多くが傷ついた。深追いはしまいと城の方へ体を向けると……浅瀬石城には馬鹿でかい "卍" の旗が翻った。



"これが為に、南部軍は引き上げたか……"


 政康は悔しそうに自分の城を睨む。しかも後から聞く話では、すでに前の日のうちに大浦軍は詰めていた油川から津軽領内へと戻り、本日昼過ぎには浅瀬石より南西の高木村にて悠々と様子見。旗指しも掲げず、ざわと気づかれぬように……千徳軍と南部軍が相争っている様を眺めていたという。



 何たる侮辱。特に為信嫌いである政康にとって、これを看過できるはずがない。独力で南部軍を追い払ってやれと決めていたのに……結局は大浦軍が追い払ったかのよう。大浦軍が助けに来たから、南部軍は引き上げたのだ。



 これでは、やってられぬ。

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