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情報屋と、師匠の占い婆婆


「よう、遊び人のイオさん。お金持ちになったんだね。突然だが、旦那には、貸しがあるんだ。」


「何だ、情報屋。記憶に無いが。」


 大金を手に入れてギルドを出た途端、これだ。俺は貧乏神に取り憑かれているのか?ただし、待ち伏せして小金を要求してきた情報屋は、使える男だ。現役時代、何度も世話になった。


「記憶に無くて当然だ。貸しは、今朝、出来た。脚の綺麗なあの魔法使いと言えば分かるか?ミストが、旦那の居場所を聞いてきた。知らないって答えたら、「僕は、ここで待たせてもらいます」とか言って、店の前で、魔導書をぺらぺら見ながら1時間も営業妨害されたんだ。執念深すぎる。いずれここも突き止められる。長居は出来ないだろう。」


「あぁ、でかい借りがあったな。撒いてくれてありがとう、ほらっ報酬だ。」


「毎度っ。ありがとう、旦那。それと、俺の師匠も、この街に来てる。気をつけてくれ。」


 小金を渡して危険を回避。とにかく、これでギャンブルのタネ銭は、稼いだ。


 じっとしていたら、魔法使いミストが追ってくる。見た目はタイプだ、声も、性格も大好きだ。だが、ヤツは男だった。童貞より先に処女を失うわけには、いや、ずっと処女でいたい。ともかく、移動しなければ。



 気持ちは焦っているが、先程から、同じ道を歩いている。情報屋が変な事を言うから、そう錯覚するのか。いや、確実に4回目だ。どんどん通行人が減り、道には、もう路上占い師しか残っていない。


 くそっ、フラグ回収が早すぎるぞ。情報屋の師匠の、夢幻婆婆に、捕まった。



 夢幻牢獄。


 (いわ)く、未来を視るモノ。

 曰く、1000年を生きるモノ。


 目の前の老婆には、不思議な迫力があった。深淵に、飲み込まれそうな、いや、老婆は、すでに深淵に飲み込まれているというのが、しっくりくる。


 牢獄から出るルールは1つだけ。この老婆の暇つぶしの占いに付き合う事だ。まるで未来でも視てきたように、お告げは正確無比だ。完全に趣味の域を超えている。

 もちろん、人類の上限を超えた俺の前では、斧の一撃で脱獄できる程度の結界だが、それは、しのびない。年寄りの悲しむ姿は、見たくないのだ。


 仕方が無いので、老婆の前の椅子に座る。



「ヒヒヒ。迷い子よ、何が聞きたいんじゃ?」


「いいから、いつも通り、さっさと占ってくれ。」


「次の四天王の居場所、魔王の弱点かな?ヒヒヒ、知りたい事は、知っておるでな。最愛の人に、ついて知りたいんじゃろう。心して聞かれよ。その娘を表す4つの暗示は、おや、なんじゃ、これ?」


 水晶を眺める婆さんが、困惑した顔で固まる。こんなの初めてだ。今までは、聞いてもいないのに、四天王の居場所を、精霊族が千年秘匿にする隠しダンジョンの鍵の位置まで、スラスラ教えてくれた、占い婆さんだ。

 なぜ黙るんだ。やめてくれ。不安になる。激しく不安になる。まさかな?いや、


「どうした?もしかして、視えない、存在しないとか、やめてくれよ。お願いだ。壷を買えばいいのか?全部だ、全部買うから、それだけは、許してくれ。」


「失礼な小僧じゃな。金で結果なぞ変わらぬわ。視えておる。じゃが、この暗示が、なんの事やら分からぬから、落ち着いて聞かれよ。お主の最愛の人は、【美女】【近い】【ドキドキ】【腐ってる?】」


「腐ってる?なんだそれ?」


「私も初めて見たねぇ、そんな暗示は。ヒヒヒ。占いってのは曖昧じゃから。性根が腐ってる悪女なのか、ゾンビ娘なのか。近いってのも距離や関係性いろいろあるしねぇ。」


「くっ、分からねぇよ。あと、お代は?」


「知ってるだろ、いらないね。これは、私を縛る呪いさ。忘れるぐらいその昔、馬鹿な事を願って、女神に架せられた、私だけの罪。」


「頼むから、いつもいつも婆さんの罪に巻き込まないでくれ。私だけの罪に、なんで俺が毎度、巻き込まれるんだよ。四天王討伐は他のヤツに勧めてやれよ。それに気になる。腐ってるって、かなりのパワーワードだぞ。どうすりゃいい。」


「ふふ、考えて成長していきなされ。年寄りの忠告じゃが、坊や、運命の人が分かったら、幸せにするんじゃよ。あと、障害を切り抜けるラッキーワードは、【永久凍結】さね。これだけは、ゆめゆめ忘れないように。これを忘れたら、幸せな未来は、閉ざされる。」


「あぁ、覚えた。忘れない。」


 通行人が戻ってきた。どうやら夢幻牢獄から、解放されたらしい。これだから、占いは嫌いだ。迷ってしまう。さっきまでは、占いに興味はなかったが、いまや、この占いの内容を、占って欲しくて、たまらねぇ。


 【美女】【近い】【ドキドキ】までは、いい。大歓迎だ。【腐ってる?】ってなんだよ?それは、許容出来ない。修行のせいで、人類の上限を超えた俺だが、性癖だけはノーマルだ。


 腐ってるのをどうすりゃいいんだ?永久凍結で回避出来るのか?それとも、敵を倒すのに必要なのか?ちくしょう、分からねぇ。

 近いって意味も、全然分からない。脳筋の俺に、考える事は、向いて無いんだ。【永久凍結】というラッキーワードをシワの少ない頭に刻みつける。


 頼むっ!



 誰か教えてくれよっ!

 俺の運命の相手は、誰なんだ。




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