表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/20

クエスト


 手ぶらで、ルンルンと山道を、嬉しそうに歩くイオ。いつものオッサンじゃなくて、受付嬢に対応されたのが嬉しい。


「遊び人になって良かった。良かったなぁぁ。さて、ゴブリンの巣に到着。どうするかな。」


 小さい洞窟が根城になっているようだ。煙で炙り出してもいいけど、意外と2日ぐらいは耐えて、出て来ない。気長に待ってる時間が勿体ない。さっさとすませて、昼までには帰りたい。


 落ちている小石を数個拾った。ゴブリン相手なら、これで十分だ。見張りのゴブリンに何気なく投擲。イオの投石は、弾丸の速度を超える。ドシュッと頭を撃ち抜かれたゴブリンが、静かに倒れる。


 洞窟の暗闇は、魔物の領域だ。人は、闇に取り込まれないよう松明を、灯の呪文を使う。だけど、化け物のように強くなった彼には、暗闇でも問題無く昼間のように見えるから、光はいらない。

 まるで散歩するかのような足取りで、小石を拾いながら、サーチ、アンド、デストロイ。小石が正確に、出会い頭のゴブリンの頭蓋を、簡単に撃ち砕いていく。


「残念、目当てのモノがない。ゴブリンジェネラルのくせに、キチンと仕事しろよ。まぁ、オークに期待だ。うぇぇ、ザコが多い。さて、どうしよっか。」


 最奥のゴブリンの巣に、ロングソードを持ったゴブリンジェネラルと配下の部下達がいた。数が多いので、さっきまでの方法では、反撃される。

 時間をかけると、奥のゴブリンシャーマンから火球が飛んでくる。だから、おびき寄せて各個撃破がセオリーだ。でも、しない。


 面倒だからだ。おっ、いい手を思い付いた!というかゴブリン如きに、わざわざ小石を拾う必要なんかなかった。

 何やってんだ、俺。パンパンと手についたホコリを落とし、悠々と歩いてゴブリンの巣に入る。


「ぐぎょ?」


 あまりに自然体で入ったもんだから、不思議そうな顔でこっちを見てきた。


「初めましてゴブリンくん。仕事もできないモンスターは、痛い目にあってもらう。お仕置きの時間だ。」


 足元の砂利を蹴りあげる。衝撃波が起きるから周囲がゴッソリえぐれて小さな無数の石つぶてが、広範囲に飛び散る。まるで、散弾だ。全体攻撃の石粒の雨。


 砂利を蹴りまくる。

 ドパンッという衝撃波の音がして、バチバチと、石粒が弾ける音となり、ゴブリンの悲鳴が洞窟を振動させるように響く。


「ぐぎゃお!ぎゃお!ぎゃお!ぎゃお!」


 絶え間なく襲う石つぶての痛みのせいで、反撃も防御もままならず、立ち尽くすゴブリン達。耐久力が0になったゴブリンから、戦線をどんどん離脱していく。


「ぐぎょおおおおっ!」


 最後に残ったゴブリンジェネラルが、怒り狂い咆哮した。雑魚は小石の散弾で消滅したが、ボスは散弾の低いダメージでは死ななかったようだ。咆哮には、一時的なステータスアップと、痛み無効、威圧によるスタンの効果がある。といっても、普通の飛び道具が効くようでは雑魚だ。雑魚にしては、なかなか頑張るなといった程度。


「なかなか頑張るじゃないか、なら遊び人らしく、お相手しよう。ダーツで決めるぜ。」


 途中で獲得した錆びたナイフを、投げる。立て続けに3投。狙いどおりに全てのナイフが、急所に刺さった。心臓、右目、喉。ハットトリックだ。よしっ!祝福するかのように、ボスは、バンザイして倒れ、光となり、ドロップアイテムを吐き出す。


「剣より斧の方が好きなんだが、ゴブリンソルジャーなら、バトルアックスだったのに。」


 ロングソードを獲得した。×1

 魔石:小を獲得した。×12

 蛮族の腕輪を獲得した。×10

 蛮族の牙を獲得した。×8

 蛮族の涙を獲得した。×89

 錆びたナイフを獲得した。×43

 粗末な杖を獲得した。×5

 ゴブリンの宝物を獲得した。×5


 ゴブリンの巣を殲滅した。

 


 死神は、ルンルンと歩く。歩いているのだが、山狼の全力より早い。

 次の哀れな獲物は、この近くに棲むハイオークだ。魔物の格が上がると、射撃系の攻撃は、ほぼ効かない。

 ハイオークともなると、投げナイフは、オーラバリアが無効化する。遠距離攻撃には有効なオーラバリアだが、万能では無い、近接攻撃であっさり抜けてしまう。正直、拳でも討伐できるが、豚を殴る感触が嫌いだ。そのための、ロングソードだ。ゴブリンの巣を最初に選んだのには、そのような理由もあった。


 魔獣肉は美味い。ハイオークは、基本的には数人のパーティーで挑むべき強敵だが、イオには、あまり関係が無い。兇悪なモンスターでは無く、歩く肉に見えている。倒すと光になって消えて、お肉をドロップする。


「お肉、お肉♪そんな事より、無いなぁ、何処に隠してるんだ?上玉だといいな。」


 お目当てのものを探しながら、退職金代わりに、勝手に貰ったアイテムバッグに次々とドロップ肉を入れていく。

 というか、支度金の小銀貨100枚ぽっちで、2年間、働かされた。これは、奴隷もビックリの低賃金だ。衣食住は無料になるとはいえ、依頼料金が勇者特価(善意の格安)になるため真面目にやると大損する。このアイテムバッグも自力で獲得したものだ。国に納めろとか言われるから、内緒で持ってた1品だ。


 モテたいから勇者になったのに、美女の仲間達とは、いい関係になれなかったし、勇者稼業は、もうコリゴリだ。遊び人バンザイ!


 いた!オークキングだ。キングアックスを振り回す紛う事なき、怪物。かなり強い相手だ。まともに戦えばだが。くそっ、目当てのアイテムが見つからない。キングのくせに湿気てやがる!


 しゅたたっと背後から近づき、足を刎ねる。これで、ほぼ勝ちだ。


「ぶももも。」


 怒り狂うオークキング。だが、俺は、もっと怒っているんだ。貴様等の不甲斐なさに。怒りに任せて、細切れにする。


「ゴブリンに、オーク、仕事しろっ!孕み袋が、ねーじゃねーか。」


 この手の亜人は、若い女性を、繁殖のために襲う事がある。孕み袋と言われている。攫われたばかりの女性なら許容範囲だ。仲良くなりたい。

 過去に、何度か上玉を助けたが、勇者であるゆえに、仲良くなる事は、国家に許されなかった。恩恵もあるが、制約もある職業だ。道に迷っていたので保護した情けない遊び人の男と、仲間であるはずのクレイジーレズ女騎士レオナに、囚われの女の子達を、持っていかれた苦い経験がある。


 情けないくせに、彼女が出来たこの遊び人を、俺は密かにリスペクトしている。だから、遊び人になった。少しだが、遊び人についての知識も教えて貰っている。心の師匠、今日は駄目でした。


 ちくしょぉぉ、早く可愛い女の子と仲良くなりたい。依頼を選んだ真の目的は失敗したが、クエストは達成した。残りは、コカトリスだけだ。


 キングアックスを獲得した。×1

 魔石:中を獲得した。×3

 オーク肉:極を獲得した。×5

 精力剤:極を獲得した。×7


 ハイオークを討伐した。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ