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俺、男になる。


「えっと、その大丈夫なのか?」


「ええ、お恥ずかしいところを見せたでありんす。あの子たちは、遊女。花魁ほどの耐性は、ありませんゆえご容赦を。しかしながら、今宵は、奇跡が起きました。手前共の秘蔵っ娘に、旦那様のお話をすると、2つ返事の了解でした。磨かれた原石。気高き至高の生娘がお相手しますゆえ、ご安心なさってください。」


「そうか、迷惑かける。なんなら、君でもいいかな?」


「はぅ、枯れたわっちには、身に余るお言葉。わっちの罪深き恋は叶わぬ夢、ほんに旦那様は、悪いオトコ。しかしながら、ここはサキュバスの楽園。最高の夜を提供するプライドがありんす。では、この先になります。素敵な旦那様、最高の忘れられない一夜をお過ごしください。」


「ありがとな。」



 案内された部屋。脳を溶かすようなフェロモンが、部屋を支配していた。


 汚れなき少女がいた。


 美しい。線の細い儚げな美しさ。上目遣いの視線に、心が鷲掴みにされる。何よりも脚が綺麗だ。そして、今まで見てきた中で1番綺麗だ。老婆は原石という表現をした。美女が、化粧をしたら、絶世の美女になる。こういうことか。胸が、痛い。恋をした。


 勇者時代も、メンバーの3人に恋をしたが、それは叶わぬ恋だった。


 2年前、少年だった俺は念願の勇者試験に、合格した。

 半年ほど1人で冒険した後、凛々しいスラリとした女騎士レオナに出逢った。一目惚れで、大金を貢いだ。

 半年後、クレイジーレズだと判明したので、2人目の豊満な胸と清純な笑顔の聖女ステラを仲間にした。

 半年後、サイコビッチと判明。ミニスカートの脚の綺麗な魔法使いミストを、仲間にする。

 半年後、男の娘と判明。さらに、見た目が、魔物であらせられるオーク姫も求婚してくるし散々だ。そこで俺の勇者としての旅は終わった。

 勇者を自主退職して、自由な遊び人になった。


 女運悪過ぎだろう。しかし、今夜、失恋の傷を癒やして、前に進みます。たとえそれが、お金で繋がる仮初の関係でも構わない。

 金は、頑張ればいくらでも稼げる。花魁を一生拘束するぐらいは稼げる。つまり、それは恋人って事でいいよね?



「綺麗だ。。あ、えーと、始めまして。俺は、遊び人のイオ。」


「嬉しいです。えぇ、存じ上げております。イオ様。」


「あのさ、変な事聞くけどよ、処女なんだってな、俺でいいのかよ?」


「はい。お慕いしております。」


「あ、商売だもんな。ごめん、変な事聞いて、でも嬉しいよ。」


「違います。イオ様がいいです。他の人は、ヤです。」


 すごく、綺麗だ。零れるような瞳に射抜かれる。商売女のお約束のリップサービスのせいで、どこかで会った事があるかのような錯覚になるが、こんな絶世の美女は、生まれて初めて見た。

 体が、戦闘体勢に入り、ギンギンになる。高まる精気。しかし、彼女が、倒れる気配は無い。受け入れてくれるだろう安心感。


 俺、男になる。



「はは、なんか君とは、初めて会った気がしないな。」


「えぇ、出逢って半年ですから。」


「え?」


「あっ、しまった。」


 半年前、半年前。記憶を照合。照合完了。絶世の美女の脚と、魔法使いミストの脚が、98%の確率で一致しました。さらに、部屋の隅に、魔導書を発見。以上の確率を統合し、魔法使いミストと断定します。


 てめぇ、今まで、素っぴんだったのか!?


「ふざけんなっ、男の娘は、お呼びじゃねーんだよ。」


「ひどいっ、僕の事、綺麗だって言ってくれたのにぃ。」


「氷の牢獄ぅ!」


 ピシャーーン、カチコチ!


 俺は、魔法カードを使った。

 これは、半年前、加入したばかりの天才魔法使いミストに、火の四天王イグニス戦を想定して作らせた魔法カード「氷の牢獄」だ。肝心のイグニスとやらは、魔法カードを使う暇も無く瞬殺したため、お蔵入りになっていた。当時は、女性の手作りカードと思っていたため、かなり大事にしていた記憶がある。

 その効果は、1日程度どんな相手をも氷漬けにする。どんな相手も例外無しでと念入りに言ったが、俺に惚れてるコイツは、俺のお願いを断われなかったようだ。人生何が役に立つかは分からない。


 占い師、夢幻婆婆のラッキーワード【永久凍結】を聞いて、真っ先に、このカードの存在を思い出して、御守として持っていた。まさか、このタイミングで使うとは夢にも思わなかったが、良かった。感謝するぜ!


 お尻は、守られた。この世界に、性転換薬があるなら、ミスト1択なのだが、あいにく、そんなものは存在しない。それが、この世界のルール。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] ええ? 両方ついてるタイプ? 少なくとも人間ではないひとだよね? [一言] く、最終話まで書かないつもりだったのに……。
[一言] やはりヤツだったw
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