第44話-2 触れ合い【アトリ】
やっと……やっとルードと触れ合えたぁ……。
勇気を出すのに五日もかかっちゃったけど、やっと触れ合えたぁ……。
それだけで嬉しくて、恥ずかしくて、『わ~』って叫びたくなっちゃうけど、この静かな時間を壊したくなくて……ずっとこのままでいられたらいいのにって思ってしまう。
でも、それはダメ。
私は、絶対に、捧唱の旅を成し遂げなければならない。
だから、捧唱の旅の間は、ルードへの『好き』を我慢しなければならない。
それに……私が『好き』を伝えたせいで、今の関係が壊れるのが……すごく、こわい。
今の関係だけですっごく幸せだから……これ以上幸せなことはないかもって思えるくらいだから……どうしても壊したくないって思ってしまう。
だから、捧唱の旅の間は、このままでいい。『好き』を伝える勇気がないだけだって言われたらそうかもだけど、このままでいい。
「すぅ……すぅ……」
…………?
ルードの方から寝息が聞こえてくるけど……もしかしてルード、寝ちゃった?
もともと寝るつもりでこの部屋に来ただろうし、寝息もそのままだから……やっぱりルード、寝ちゃってる……よね?
「!?」
ル、ルードが、こっちに倒れてきた!?
どどどどうにか支えることはできたけど!
下手に押し返して、ルードが向こう側に倒れたらベッドから落ちちゃうかもだし……どうしよう!?
「……あ」
一つ、解決策が閃いちゃったけど……それはちょっと恥ずかしいような……でも、やってみたいような……。
ルードを支える腕が痺れてきたし、もう考えている時間もないから、やっちゃおう……かな。
急速に頬が熱くなっていくのを感じながら、お尻を後ろにズラして深くベッドに腰掛け、そ~っとそ~っとルードを私の方に倒していく。
そして、倒したルードの頭を太股の上に乗せて……膝枕の、完成……ですっ。
あぅ……これ、思ってた以上に……恥ずかしい、かも。
でも……これ、思ってた以上に……いい、かも。
ルードの倒れ方と、太股から伝わる感触からルードの頭の位置を把握し、そっと撫でてみる。
「むふ~」
頬がとろけそうなくらい緩んじゃう。
ルードよりも体が小さい私が言うのもなんだけど、ルードって本当に子供みたいに小っちゃくて、聞こえてくる寝息もどこか幼くて……ルードはこんなこと伝えられたら嫌がるかもだけど、かわいいって思っちゃう。
昔、お婆様に膝枕をしてもらった時、何度も何度も頭を撫でられたことがあったけど、たぶんお婆様もこういう気持ちになったから、ついつい私の頭を撫でちゃったんだと思う。
起こさないように、そ~っとそ~っとルードの頭を撫でている内に、なんだかウトウトしてきて、私は座ったまま深い眠りに落ちていった……。