第27話-2 大地に捧げし唱【アトリ】
指を使って魔唱を唱い切るのに必要な、おおよその時間をルードに伝えた後、前方から感じるピュトンの気配に向かって、両の手のひらをかざす。
まだまだ離れているはずなのに、ピュトンの存在感は物凄くて……今にも体が震え上がりそうなくらい、こわい……。
そんな私の心中を見透かしたように、ルードが後ろから私の両手首を掴んでくる。
必然的にくっついちゃって、ちょっとドキドキするけど……安心する。
ルードが傍にいてくれるなら、ピュトンだってこわくないって思える。
これなら、落ち着いてルードの合図を待つことができる。
これから私が唱うのは、ナトゥラの民に伝わる魔唱の中で最も破壊力に秀でた魔唱。
私がその魔唱を使った際の威力を確かめるために、過去に一度だけ、なにもない平原で、ナトゥラの民の大人たちに見守られながら唱ったことがあるけど……みんなに口を揃えて『絶対に使うな』って言われた。
でも、『絶対に使うな』って言われた魔唱をもってしても、ピュトンを確実に倒せる保証はどこにもない。
だから、どのタイミングで、どこを狙って魔唱を放つかは、ルードに委ねることにして、私はその瞬間が訪れるのを待った。
前方から迫り来る圧倒的な圧迫感が、少しずつ少しずつ近づいてくる。
ルードとくっついていなければ、こわくて震え上がりそうな圧倒的な恐怖が、少しずつ少しずつ近づいてくる。
「いあ゛ら゛ッ!!」
ルードの合図が聞こえた瞬間、私は軽く息を吸い込む。
「《其の罪 赦すことあたわず》」
ルードが、私の唱に合わせるように、前方にかざしていた私の両手を斜め上に向ける。
「《大地に代わり 今 我が断罪せん》!!」
いっけ――――――――――っ!! 〝セイクリッドコンヴィクション〟ッ!!