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第18話-3 指名手配【アトリ】

「うぅ……ぐす……っ」


 涙が、止まらなかった。

 マイアという国そのものが私の死を望んでいることがこわくて、唱巫女失格の烙印を押されたことが悔しくて、お爺様とお婆様を悲しませる結果になってしまったことがつらくて、涙が止まらなかった。

 それに、


「どうして……どうしてあんなことしたの……!」


 ルードの背中に額を押しつけながら言葉をぶつける。

 聞こえないことはわかってる。

 けど、言葉をぶつけずにはいられなかった。


「ルードは顔を見られちゃったんだよ? もし騎士団に私が唱巫女だってバレたら、ルードも指名手配されちゃうかもしれないんだよ? 私と同じように『生死問わず』になっちゃうかもしれないんだよ? どうして……どうして私なんかために、あんなこと……」


 でも……そのことが、少しだけ嬉しかった。

 騎士様たちから逃げる直前、ルードに抱き締められたことで、私が指名手配されたことを彼に知られてしまったことを確信した。

 だってあの時のルードは、私の震えを止めるように、優しく、力強く、抱き締めてくれたから……。

 だから、少しだけ嬉しかった。

 私が唱巫女失格の烙印を押されてなお、国そのものから死ぬことを望まれてなお、私の味方でいてくれたことが、少しだけ嬉しかった。

 ……ううん。

 もっと本音を言うと、少しだけどころか、物凄く嬉しいんだけど……やっぱり、私なんかのために、どうしてそんな無茶をしたのって気持ちが強くて……少しだけになっちゃった……。


 もし、本当に、私と同じようにルードも『生死問わず』で指名手配されてしまったら……私はこの子を……ううん、()()()を、死なせたくない。

 私だって死にたくない。

 けど、それ以上にルードを死なせたくない……!


 死にたくないけど、死なせたくないけど、私がただイタズラに逃げ回ってしまったら、捧唱の旅が滞ってしまい、大地が枯れてしまう。

 そうなったら、お爺様やお婆様が、ナトゥラの民のみんなが、ミーシャちゃんや宿主さんが、世界中の人が飢えて死んでしまうかもしれない。

 それだけは絶対に避けなくちゃいけない。


 だから……決めた!

 ワガママかもしれないけど、決めた!

 もしルードが私と同じことを考えていたら、同じことを望んでいたら、

 その時は――――…………

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