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第18話-1 指名手配【アトリ】

 ルードに手を引かれながら町の中を歩いて行く。

 足の裏から伝わるこの感触……カリストって地面に平らな石を敷き詰めてるんだ。

 もしかして、マイア城の城下町も同じように石を敷き詰めてるのかな?

 それに宿主さんが言ってたとおり、本当に人がいっぱい……。

 そこかしこから人の気配を感じるし、話し声もそこかしこから聞こえてきて、なにがなんだかわからないことになってるし、足音の密度が凄いし……杖があっても、一人で歩くのはちょっとこわいかも。

 

 それにしても……気のせいかな?

 ルードの歩く速さが、森の中を歩いていた時よりも遅い気がするの。


 人がいっぱいいるせいかもしれないけど、それでも森の中よりは歩きやすいはずだし、『できるだけ早く騎士団のおじさんに会いたい』って()()()のはルードだし、それってやっぱり唱巫女(わたし)を狙う人を警戒して一刻も早く騎士団に保護してもらうって意味だろうし……やっぱり、この遅さは変だと思う。

 変だと思うけど……私としては、その方が嬉しかった。


 だって、歩くのが遅い方が、少しでも長くルードと一緒にいられるから。


 ルードとお別れする瞬間を、少しでも先延ばしにできるから。


 もし……本当にもしだけど、ルードが今この時を少しでも長く続けさせようって思っているなら、すごく嬉しい……かも。

 

 しばらくすると、ルードは足を止め、促されるがままに私も足を止める。

 騎士団の詰め所に着いたのか、それとも町を巡回している騎士様を見つけたのか、雑踏の音に紛れて甲冑の音がカチャカチャと聞こえてくる。

 この音の大きさだと……距離はかなり離れてるっぽい、かな?

 ほどなくして、ルードは私の手を少しだけ強く握ると、意を決したように歩き出し、私も続いていく。

 二人か三人くらいいるのかな? 騎士様たちはなにか作業をしているらしくて、その場に留まったままカチャカチャと甲冑を鳴ら――


「まさか、唱巫女の手配書を貼ることになるなんてな」


 …………………………………………………………え?


 手配……書……?


 私の……?

 

「なんでも、ナトゥラの民の集落を出てすぐにビビっちまって、どこかに逃げたって話らしいぜ?」


 この会話……騎士様たちから聞こえてる、よね?


「ああ、なるほど。それで指名手配されちまったってわけか」


 少しずつ声が近くなってるから……間違いない、よね?


「そういうことだ。しかしまあ、だからってこれはちょっと目を疑うよな。世界のためとはいえ、こんな年端もいかない少女を――」


 こ、これってなにかの冗談――


「――()()()()()で指名手配するなんてな」


 思わず、足を止めてしまう。

 ナトゥラの民の集落に常駐している騎士様から聞いたことがある。手配書の『生死問わず』は、実質『殺せ』と同義だって……。


 それってつまり……私に、死んで聖痕を移譲しろってことなの……?

 私が逃げたのも、こわかったのも事実だけど……でも……でも……捧唱の旅そのものから逃げたわけじゃないのに……ちゃんと成し遂げるつもりなのに……どうして……?

 お爺様がこんなことを許すとは思えない……ラライアさんだけの力でこんなことができるとは思えない…………ということは、国王様?

 マイアの国王様が、私の死を望んでるっていうの?

 目が見えない私には、捧唱の旅は無理だっていうの?

 だから私に……死ねって……いうの?


「おい、あそこにいる子。フードの下の髪、銀色っぽくなかったか?」

「背丈も情報と一致してるな。一応、確かめてみるか」


 騎士様たちの会話に、心臓がキュッと締めつけられる。

 カチャカチャと足音が近づいてくる。

 騎士様たちが、私のことを疑ってる。

 こわい……こわいよぉ……。

 でも……ここで逃げたら、自分から怪しいって言ってるようなものだし、それに……そんなことをしたらルードまで指名手配されちゃうかもしれない……。

 どうしたら……どうしたらいいの……。

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