0章:帰還
暇つぶしにでも見てやってください〜
いつからここにいたんだっけか?
少なくとも俺の感覚では千年以上だろう。
俺はいつぶりかわからない"思考"をした。
この世界の景色はいつも不変だ。
この世界に存在する膨大なエネルギーによってあらゆるものが修復されるのだ。木の実を取れば即座に新しい実が生まれ、木を切り倒せば切り口から同じ木が生えてくる。ただ、この修復力は成長を妨げるものでもある。植物は常に同じ状態に保たれ続けるのだ。
この世界ははっきり言って異常だ。
植物もそうだが、この世界に存在する動物共が恐ろしく強いのだ。たった一度の地ならしがそこから半径1km程にも及ぶクレーターを作る。竜種から放たれるブレスはどこまで続いているのか分からない大穴を開ける。
俺が異常だと思う理由はこれらの生物があまり強くない部類であることだ。もっと強い奴とは先程の奴らを余波のみで消し飛ばす程の力を持った奴のことだ。
まあ、俺がその部類に入るわけだが、、、
俺はこの強さ故にいつからか思考することをやめていたのだ。毎日ただ同じことの繰り返し。一切変わることのない景色。自らの存在が世界最上位クラスであること。それらが俺の思考を止めた。
ただ、この世界に遂に変化が起こった。
目の前の空間に亀裂が生じたのだ。今にも消えそうな細い亀裂。
俺は無意識のうちにその亀裂に手を伸ばしていた。
俺は自分の行動に驚かされた。
俺はとうの昔に〈元の世界に帰りたい〉なんて考えは捨てたはずだ。なのに俺は無意識にも目の前の亀裂に希望を見出しているようだ。
俺は久々過ぎる変化に怖がり過ぎてるみたいだな。久々の変化にすがってみるのも悪くない。死んでしまったらその時はそのときだ。
俺は亀裂に触れた。
目の前が真っ白になり、だんだんと意識が薄れていく。
薄れゆく意識の中で俺はこんな声を聞いた。
「驚いた。まさかこの世界の収束力を凌駕する力を持つ奴がいるなんて。いいもの見せてもらったよ。これは餞別だ。君の元居た世界"エルデ"まで無事に送り届けてあげるとしよう。これからどんな事をしてくれるのかな。楽しみにしておくよ。さようなら"到達者"」
一応新連載という形ですが、ほぼ処女作と思って頂けたら幸いです!コメントお待ちしてます!