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7.勇者、色々考える。考えてるつもり。

「第一回、路銀をどうやって稼ぐのか? を始めます。拍手」

「ぱちぱちぃ?」


 口から効果音を発しながら、拍手をする。

 疑問符はきっと、内容を理解していないからだろう。


「旅と言っても、食べ物を食べないとまともに戦えないし、質のいい休息を取らないといざと言う時に本来の力を発揮出来なかったりします。なので、これからは、お金を稼ぎながら大陸を渡っていきます。お金に困って飢えるのはもうごめんです。分かりましたか?」

「ほぇぇー! わかったー!」


 うん。このわかったー! は、分かってない時のわかっただ。

 まだ出会って間もない私でも分かる。


 一人なら、まだある程度は維持できるが、二人となると出費は倍。

 しかも、相手は龍神様の跡取り(予定)、あまりに最低限の生活では後が怖い。

 龍神様の目は、この世界唯一の神の目であり、古今東西全てを見通せると言われている。

 言わば、私がシロをどんな風に扱っているのかも見られている。

 そんな状態で蔑ろにしようものなら――――寒気がする。

 なので、まだ大丈夫と蓋をしていた問題をわざわざ開けて洗い出しているのだ。

 それに、今回からはどれくらい旅をするのかすらあやふやなのも問題だ。

 早めに取り組んでおいて損はない。


「まぁ、お店を出すとかは出来ないし、旅をしながらだから、貿易とかが良いんだろうけど、大荷物を持っての旅となると、ただでさえどれくらいになるか分からない旅が、果てしない旅になりそうだし、それに――」


 私は計算が苦手だ。

 そう言うのは全て夫がやってくれた。

 家事とかは、結婚してから死に物狂いで覚えたが、未だに計算は苦手だ。それに、貿易は儲けるどころか下手すれば損する危険すらある。となると、旅をしながら稼ぐ方法は極めて限られてくる。

 やはりと言うか、案の定と言うか、思いつくのは一つくらいしかない。


「冒険者家業かぁ……」

「ぼうけんしゃかぎょう? なのそれぇ?」

「悪いモンスターをやっつけてお金を貰う人たちの事、他にも鉱石や薬の材料となる草を集める人とかも居るかな」

「シロも悪いモンスターやっつける!」

「やっつけるのはいいんだけど……」


 改めて自分とシロを見る。

 私は18の時に成長が止まっている。夫が中央大陸を纏めるまでは10歳くらいでも傭兵団や冒険者になる姿も珍しくなかったが、それ以降は冒険者デビューの年齢は年々遅くなっていて、去年では18歳から20歳でようやくデビューと言った所なのだ。

 私はいい。まだ許容範囲だろう。だが、シロはどうだ。

 どう見ても10歳かそれ以下だ。龍は寿命が途方もなく長い。こんな見た目でも私よりも年上なのは分かっているが、見た目も言動も子供のそれだ。

 そんな子供を連れながら魔物と戦う姿は異様に浮くだろうなぁ。しかも、人間と比べたら圧倒的に強い子供。目立つ事この上なしだ。

 この国では私は犯罪者として扱われていないはずだが、どこに目があるかわからない以上、目立つ行為は極力控えた方がいい。

 どうすればいいのだろうか。


「まま、これからどこに行くの?」

「うん? とりあえず、この大陸のやらなきゃいけないのは終わったから、魔神の手掛かりになりそうなものが無いか探しながら、東の絶崖(ぜつがい)橋を渡って妖精の国に向かおうと思ってるよ。そのまま北に向かって小人の国も調べるつもり」

「妖精の国? 小人の国?」

「シロは行った事ないの?」

「うん、あのお家から出るのも初めて!」


 箱入り娘ならぬ、箱入り孫か。大層大事に育ててたようなのに、龍神様は何を考えているのだろうか。


「そうなんだ、とっても綺麗で素敵な場所ですよ。お肉は出ないけど、森の幸を使ったご飯がとても美味しくて木の上に建てられた家は此処とはまた違った(おもむき)があるの」

「ふぅん?」

「あんまり分かってないって顔だね。まぁ、行って見れば分かるかな」


 それよりも路銀だなぁ……。


「とりあえず、旅に必要なものを買わなきゃね」


 私の分は最低限あるが、シロの分は今日中に用意しなければいけない。

 時間も昼時だろうか、日がとても高く、街も一際活気付いている。

 少し耳に意識を向ければ、少しでも客を引こうと店前で客引きしてる人が居る。

 商業区に歩いてきたせいか、鼻を(くすぶ)る良い香りが鼻腔を強く刺激する。

 ここドランでは肉料理が盛んで、どこもかしくも店頭に大きな肉の塊が焼かれており、見ているだけで食欲をそそられる。


「その前に食事にしましょうか」

「ごっは~ん!」


 あまり贅沢は出来ないが、最初くらいは少しだけ奮発してもいいだろう。と、浮かれた思考に負けながら店を見て周る。

 丁度、コカトリスの骨付き肉が売っていたので、テラスに座って食事にした。

 大きな口を開けるのは淑女として如何なものかと思うが、ここでは、大口を開けてかぶり付くのがマナー。背徳感を感じながらも、あーん、と意気揚々に噛み千切る。

 溢れる肉汁が塩と共に口内で弾け、胡椒の風味が油の重みを消してくれている。そのままもう一口食べて、レモンをかける。さっぱりとした酸味が肉汁と相俟って噛むたびに旨みがあふれ出てくる。

 この店は当たりです。とこっそり評価しながら、シロと一緒に昼食を頂いた。


 そのあと、旅に必要なものを少し多めに買って、ドランを出た。


「シロ、当分戻らないけど、本当にいいの?」

「うん! ままと一緒がいい!」

「何十年も戻って来れないかもしれないよ?」

「うん!」

「そうですか、じゃあ行きましょうか」

「はぁい!」


 こうして、私とシロの旅は始まった。

 次の目的地は東の大陸。

 エルフの住まう国。

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