ハジメノイッポ
「つかよォ、ここどこだィ?」
1人つぶやく。
空は漆黒の闇に包まれ星の瞬きひとつ見えない。
先程着地の際にクッションとして使った救急車は天井部分が大きく変形しており、あのまま町中を走ることは無いだろう。
「ケッ、脆いな」
たった人間ひとりの重さにすら耐えれない鉄板と、その衝撃にすら耐えられない己の身体に対して愚痴がこぼれる。
「あーぁ、足首痛てぇ」
ダイビングの時に痛めたようだ。
「おい!何があったんだ!」
「外の救急車の方だ!」
「急げ!」
と、複数の足音が早めの速度で近付くのがわかった。
「チッ、もう来やがったか。ンじゃおさらばよィ」
と、一人の男は夜闇に紛れその姿を消した。
『いやまてぇ!!そんな簡単に逃げちゃっていいのかよ!』
「あ?ンだようっせぇな。逃げりゃ勝ちなんだヨ」
『いやだからって!犯人が僕、いやお前。ん?まあとにかくバレたらどうすんだよ!!』
「だから逃げりゃ勝ちだっての」
と言いつつ彼は細い路地裏を迷うことなく進んで行く。
『いや逃げるのにも限度ってもんが…』
「うっせェな。殺すぞ」
彼の言葉には的確に明確に僕に向かって放たれた殺意|がやどっていた。
普段そんなものとなんの関わりも持っていないはずの僕にさえそれがわかった。
「オ?」
いつから居たのだろう。
彼は、いや少なくとも僕は彼との会話に必死になって目の前のヤツらに気づかなかった。
「おうおう、おまえらなによ?そこら辺のゴミと見分けつかねぇから気づかなかったわ」
こいつ……煽ってんだよな?本気じゃないよな?
「たりめーだばーか」
聞こえてたらしい。
「チッ、どしたのあんちゃん、独り言は老化のあかしっつーぜ?」
「ぎゃは、こいつ俺らより若いんでね?」
「ぶふ、おでのほーがわかわかしーぃ」
3人。目の前には3人の男が居座っていた。
それもまるで道を通せんぼでもするように。
「あーはいはい。そーなのよ、最近物忘れが激しくって。で?おまえらゴミだっけ?」
あおっ……
「沈めンぞ?」
小声で恐喝された。
「俺らがゴミだと?」
「ギャハ、舐めてやがんな?」
「おで、ごみじゃなぁーぃ!」
『おおお怒ってるって!や、やばいよ!』
「ケッ、オレサマがこんなチンケなゴミに負けやしねぇよ」
『いや、それ僕の体だから!?』
「あ?だから、俺が有効活用してやるっつってんだ」
『ゆ、有効活用?』
「おいテメェら3人まとめてかかってきな」
「舐めんてんなぁ!!?」
「ギャハ、殺す」
「ぶちころすーぅ!!」
『ぎゃぁぁぁぁぁああ!!』
「うるせぇ黙ってな。ぶち殺すぞ」