モノガタリノハジマリ
すみません。
長くなりすぎました。
「ふぁぁ」
掛け布団を足元に押しやりながらベッドから身を起こす。
右手にある壁掛け時計を見ると時刻は午前7時を少し回ったところだった。
「学校、行くかぁ」
朝飯は茶漬けにして支度する。
両親はいない。
二人とも死んだ。
交通事故だった。
双子の兄弟もいたようだが事故のあとにはその姿はもうなかったそうだ。
そうだ、と言うのはこの事故はかなり小さかった頃の事故なので、僕自身には覚えがない。
この話はおばに聞いたものである。
そんなことを考えているうちに時刻は7時20分。
作った茶漬けをかきこみ制服に着替える。
部屋の隅にある小さな段に線香と両親の遺影を置いただけの小さな仏壇の前へ行き、てをあわせる。
兄弟の遺影は無い。
それほど小さな頃の事故だったらしい。
「オヤジ、おふくろ、行ってくる」
どこからか行ってらっしゃいという優しい声が聞こえた気がした。
鞄を持ち玄関へ行き、靴を履く。
ドアを開け外へ出る。
空気を肺いっぱいに吸い込む。
数秒息を止めたあとゆっくりと息を吐く。
これが毎朝のルーティンだ。
ドアを閉め鍵をかける。
そして今僕の暮らしている龍黒鼐高校の寮を出る。
そして徒歩7分程のところにある
龍黒鼐高校へ向かう。
時刻は7時35分。
§※§※§※§※§※§※§※§※§※
元々は行動には余裕を持ってする正確なので予鈴にはかなりの時間がある。
20分ほどの余裕を持ってすれば遅刻などするはずもない。
しかし今日この日は、あと3分いや、1分でも遅く出ていれば、逆に1分でも早く出ていればこんな物語、こんな世界に関わることなどなかっただろう。
「…ん」
2分ほど歩いたところに大きな交差点がある。
もう高校生なので右見て左見て云々はしないが、信号が長いのだ。
だからこその35分出発なのだが。
そんな長い長い信号の前で軽やかに足踏みしながら待つ少し小柄な(155㎝ほど)女子とそれとは反対に後ろ姿からもわかるようなまだ寝ているのではないかと言うほどの脱力感ただよう大柄な(180㎝ほど)男子がたっていた。
近づくにつれ二人の会話が聞こえるようになった。
「…だってば!ね、ちょっとあんたきいてる?」
「うぅんきぃてるぅ。」
「もう!これだからあんたは!」
などと夫婦のような会話だが。
そんな2人の横に俺が並んだと同時に信号が青に代わる。
「よぅ、唯宇、紗威」
「おっ!おはよっ!」
と、明るい挨拶の女子に対し、
「んにゃ。」
と、まるで夢現のような生返事の男子。
女子の方が西園唯宇で、男子の方が東空紗威。
小さい頃からの幼馴染で、幼稚園からの馴染みだ。
両親のことも知ってくれている数少ない心許せる親友たちだ。
「ほら、信号またかわっちまうぞ」
そう言って先を行く。
「うん!ほら、行くって!置いてくよ?」
「うんにゃ。今行くぅ」
今度は親子のようだ。
そこが、ウィークポイントだったのだろう。
紗威を待って止まっていれば、きっと…
ブオォォオオ!!!
横断歩道を歩いていると横から大型トラックが信号を無視してほかの車をはねながら突っ込んで来た。
「は?」
ドゴンッッッッ!!!
凄まじい音とともに僕の身体は宙を舞った。
そしてトラックははねた僕の体を無視して、数十m進んで奥の八百屋に突っ込んで止まった。
全身に凄まじい痛みを感じながら道端に転がった僕。
_あいつらは無事だろうか。
その答えはすぐにわかった。
タッタッタッと足音が聞こえ僕の視界に涙を流して狼狽えている唯宇のすがたがみえた。
「だぃ___!?______!!!」
もう耳が聞こえなくなった。
視界にもう1人の影がうつる。
紗威だ。
僕が引かれたことが目覚ましになったのか先程までの眠たそうな雰囲気は今やどこにもない。
「__!?__!___!!!」
彼も泣いている。
あれ?顔がぼやけてきた。
ついに終わりか?
短い人生だったな。
交通事故で全てを失い、交通事故で最後を迎える。
__皮肉だ。
なんて食えない皮肉なんだ。
あぁ、空が蒼いなぁ。
面白かったですか?
楽しんでいただけましたか?
誤字脱字があったら教えてください。