春は手前
春は手前
桜の蕾はふくらみ
まだ寒かった
深いところ
大きく揺れると
日の常が
消えてしまった
道も街も
大切な人たちも
叫ばれた
即席の絆は
絡みにからまって
使い道のない塊りになって
転がった
突然引きちぎられた
痛みは
癒えることより
耐えられるように
なることを
望んだ
こどもたちのために
と
鮮やかな色と
やさしい春の歌が
流れた
色だ、歌だ、と
貪り泣いたのは
大人の私
春にぬくまる街は
深いところで
重苦しく揺れて
あちこち震えた
あの日
壊れた部分は
壊れたまま
動いている