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リーリンシア~The World Of LEARYNSIA~  作者:
生きるための旅へ
35/230

合流3

人影がどんどんと大きくなり、四人は目を凝らした。焚火を背にしているのでこちらの方が明るくて、はっきりと見えない。それでも、真樹の赤い甲冑と、慎一郎の青い甲冑が月明かりに僅かに反射して分かった。

「…あれ。」

カールが、足を踏み出した。他の三人、翔太と亮介、玲は怪訝な顔をした。

「なんだ?どうした?」

亮介が言うと、カールはじっと目を凝らしながら言った。

「いや…。」

何やら、はっきりしない。翔太が、イラッとしたような口調で言った。

「なんでぇ。気になることがあるなら言ってみな。」

カールは、それを無視してまだ見ていた。そして、相手との距離が50メートルぐらいになった時、確信に満ちた顔になって、いきなり駆け出した。

「カイト!」

翔太達は、びっくりしてカールの背中を見送った。向こうに見える、慎一郎と真樹も仰天した顔をしている。もう一人居る、くすんだ黒いようなグレーのような甲冑を身に着けた男が、カールに向かって走って来た。

「カール!カールか!」

二人は、お互いに駆け寄って抱き合った。そして、バンバンとお互いの甲冑を叩きながら狂ったように笑い合った。

「なんだお前、老けちまって!ああ、なんてことだ、生きてたのか!連絡が無くなって、もう駄目だったんだと諦めてたのに!」

相手は、笑って答えた。

「カールだって老けたぞ!まるでオレの父さんみたいだ…ああ本当に、まさか無事だったなんて!」

二人があまりにも興奮して喜び合っているので、翔太達も待ってられなくて、そこへ歩み寄って行った。慎一郎と真樹が、そこで困ったように立っている。翔太は、二人の姿がはっきりと見えて、口を開いた。

「…で?知り合いか。」

カールが、興奮冷めやらない様子で相手と肩を組んだまま言った。

「そうなんだ!話しただろう、最後まで通信して来ていたヤツだ!カイトっていう…死んだんだとばっかり思ってた…本当に、まさか会えるなんて思ってなかった!」と、相手を見た。「あの時は、まだ15歳の子供だったのに!」

海斗は、苦笑した。

「今じゃ30だ。クリフもカーティスも生きてる。カール、きっとあいつらも会いたがってるよ。死んだと思ってたからな。」

「あいつらも生きてるのか!」カールは嬉しそうだった。「もうすっかり諦めていたのに。今日はなんて日だ!」

「夜だっての。」翔太が顔をしかめて割り込んだ。「悪ぃがこっちは時間に追われてる。感動の再会はいいが、話はあっちで座って聞く。慎一郎、真樹、お前達の話も聞きたい。」

あまりにもカールと海斗のテンションが高いのでドン退き気味だった二人も、ハッと我に返って急いで翔太について焚火の方へと歩いた。

海斗とカールも、何やら英語や日本語ちゃんぽんで矢継ぎ早に話している。

翔太はため息をついた…気持ちはわかるが、今はそれどころではない。真樹が抱いている、小さな魔物も気にかかる。

睡眠時間がまた短くなるのを悟って、再会にも気分は重かった。


やっと寝ていたところを起こされたので、翔太は不機嫌に言った。

「で、やっぱりパージには入らなかったんだな。」

真樹は、下を向いた。

「うん。ごめん。オレ、意地になってて。軍が居る所へたった一人で行くのは無謀だよね。それで水だけでもと思って湧き水を見つけて水を補給しようとしたら、メールキンっていう魔物に襲われて。三頭は倒したけど、グズグズしてたから血の匂いでいっぱい寄って来てしまったんだ。死ぬ気で戦おうとしていたら、慎一郎と海斗が助けてくれたんだよ。だから、一緒にライデーンへ行こう。」

あっさり謝る真樹に、翔太は拍子抜けした。もっとごねるかと思ったのに。

「なんでぇ、もっと早く気づけよ。まあいい、人数は多い方が魔物が出ても早く倒せるから面倒もねぇだろう。」と、慎一郎を見た。「それで、お前もその海斗に助けられたと。」

慎一郎は頷いた。

「真樹には話したが聡香が居て逃げられないと思ったので、シーラーンへ行くしかないと思っていた。だから、それで情報をお前達に送って、解決を託そうと思ったんだ。」

翔太は、厳しい目を向けた。

「聡香はどうした?」

慎一郎は、頷いた。

「海斗の仲間に預けてある。住み処へ匿ってくれている。だから無事だ。」

亮介と玲が、ホッとしたように息をつくのを感じた。翔太は、頷いた。

「そうか。美夕はアデリーンへ預けて来た…この旅は、過酷過ぎるんだ。あいつにゃ耐えられねぇ。もしかしたら、あいつもそこへ連れてってもらってた方がいいのかもしれねぇな。」

海斗が、頷いた。

「それはそう思う。戦闘員は何かと時には魔法を使ってしまう時がある。ここには、魔法を使える住民など居ないからな。いろいろ調べてみたが、オレ達あっちの世界から来た者達は大きな魔法を連続して出せるんだが住民達はそれが出来ない。呪文を教えてみても、体の中にある『気』があまり使えないらしくて、小さな魔法を何度か放ったらもう疲れてしまって連続して魔法が出せなくなる。どうやらオレ達みたいに無尽蔵に力を使えるってのは、特別な能力らしいんだ。」

それには、カールも頷いた。

「それはオレも調べて知った。だが軍の奴らは、ここの住民にも関わらずオレ達と同じように力を出せるんでそこだけが不思議で、何度か遠回しに町の奴らに聞いてみたりもしたんだが、誰も明確な答えは出せなかった。何かあるのかもしれないな。」

翔太が、息をついた。

「…じゃあ、ライデーンへ向かうのはやめて、まずは海斗達の隠れ家へ行ってこれからの作戦を考えた方がいいか。そうなると美夕を置いて来ちまったのが悔やまれるな。あいつを回収に行かなきゃならねぇ。アデリーンまでまた戻るのは気が重いがな。」

海斗が、翔太を見た。

「誰に預けた?」

「鍛冶屋のレナート。」翔太は答えた。「クトゥの鍛冶屋に助けてもらった時に、紹介された男なんだ。信用出来るか考えたが、オレ達と一緒に旅をする方が数段危険だと判断して置いて来た。どうにかするしかねぇな。」

海斗は、腕組みをした。

「そうか…レナートなら知ってる。15年前にオレ達の仲間が護衛の仕事を請け負って移動してる時に、軍に襲撃されて連れ去られた話は有名だからな。その雇い主だったんだと聞いている。あの後、軍を訴えて狂ってるんだと言われて、しばらく牢に繋がれた。あの男が、ひっそりと生きてたってわけか。」

翔太は、頷いた。

「ああ。だが、アデリーンへ戻るのは危ねぇし、どこかまで出て来てくれたら助かるんだが…美夕のヤツは掲示板を見てるか疑問だしな。掲示板に書いたとしても、具体的に書いたら誰かに見られてた時厄介だ。待ち伏せされるかもしれねぇ。」

慎一郎が、うーんと眉を寄せる。真樹が、言った。

「直接通信したらいいんじゃないか?オレ達はグループ登録してるんだし、それが出来る。」

海斗が、眉を寄せて真樹を見た。

「今アデリーンには軍が入ってるんだぞ。あの腕輪から音が出て話してるのを見られたら、それだけで向こうが見つかって拘束される可能性がある。あっちがどんな状態か分からないのに、こっちから通信するのは良くない。」

翔太は、腕輪を見つめた。

「…それでも、何とか知らせて会話をしないことには、すれ違う可能性があるからな。真樹、すまないが掲示板に書き込んで通信可能かどうか聞いてくれ。もし通信出来ると返事が来たら、その時は合流について話し合おう。とにかく、今は海斗達の隠れ家に向かって、少しでも進もう。体を休めたいのは山々だが、こうなったら少しでも早く安心出来る場所へ落ち着きたい。」

真樹は、頷いて早速腕輪を開いた。海斗が立ち上がって森へと足を進め、その後ろを慎一郎が、無言で歩き出す。

翔太は、その後ろへ着いて行きながら、その背に何か言いたげにしていたが、次の瞬間グッと口をつぐむと、何も言わずに、皆と共に海斗の後ろについて森へと足を踏み入れたのだった。

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