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リーリンシア~The World Of LEARYNSIA~  作者:
神の意思とは
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通信

美夕が、急いで言った。

「ラファエル様、ショーンが言うのは本当だと思います。」ラファエルは、美夕を見た。美夕は続けた。「私は、この旅の始めに、初めて出くわした大きな魔物に殺されかけました。亮介さんが居なければ、私は死んでいた。三回も反魂術を使ってもらって、聡香さんの治癒術も同時にかけてもらったからこそ、命を繋いだんです。私も、甘い考えだったから…あの時、仲間がいなければ絶対に命を落としていました。私にも命の刻印があるんなら、ラファエル様と同じでしょう。神は、姿すら現しませんでした。私を助けてくれたのは、神ではなく仲間だったんです。あくまでも使命を成す間、自分の命は自分や仲間に守ってもらって進まなければならないのだと思います。無謀な事をしたら、呆気なく志半ばで命を落としてしまうんです。」

腕輪の向こうは、沈黙している。

ラファエルは、それをじっと聞いていたが、くるりと踵を返すと、地下へと足早に降りて行ってしまった。

美夕は、どうしたものかとキダレスとメニク、バルナバスと顔を見合わせていたが、腕輪の向こうから、慎一郎の声がした。

『で、ラファエルのことは置いといて、お前らはどうしようと思ってるんだ。ラファエルと修道士、バルナバスがリツへ行くとか言うならこっちは止めない。だが、美夕とレナートだけは返してもらわないとな。今は離れてるのは良くない。絶対に合流するべきだ。』

美夕は、その声に答えた。

「ラファエル様は今、地下へ戻って行ってしまったわ。私はみんなと合流しようと思っているの。バルナバスだって、今リツへ行くのは危ないって言ってるのよ。でもラファエル様は神と話すってそればかり、最初はキースに神殿があると聞いて、そこへ行くのに前向きだったのに。」

キダレスが、申し訳なさそうに言った。

「すまぬの。我のせいか。我があれに、リツ遺跡の話をしてしもうたから。まさか、あれほどに無茶な事を言い出すとは思わなんだからの。」

バスナバスが、美夕を見て、言った。

「ミユ、ならば我がご説得をして参るから。主らはキースへ行く方法を話し合ってくれないか。修道士達の命も懸かっておるし、オレだってラファエル様をむざむざ敵の中へと行かせたくない。」

すると、あちらから聞き慣れない声がした。

『どうしてもとだだをこねおったら、地下水脈へ放り込めば良いわ。』

美夕もキダレスもメニクも、バルナバスも仰天して腕輪を見つめる。すると、その声は続けた。

『下で我らが待っておって拾ってやるゆえ。そうしたら敵中には行けまいが。どうせあの水脈を越えるには術も使えぬのだし、突き落とすのは容易であろう。』

こっちで皆が茫然としていると、翔太の声が割り込んだ。

『こらラディアス、あっちは驚いてるんじゃないのか。ああ、すまないな美夕、シャルクスの王のラディアスだ。そんなわけだから、突き落とす前には知らせてくれねぇと命を落とすぞ。』

バルナバスが、慌ててブンブンと首を振った。

「そのような!そうならぬように、ご説得をして参るから。ではな。」

バルナバスは、そそくさとそこを離れて行く。

キダレスが、感心したように言った。

「ラディアスか。我は、ココ・サカの長キダレスぞ。これまで、主らと話をすることも出来なんだが、やはり知性があったのだな。これまで、逃げ惑うばかりで申し訳なかったの。主があっさりと兵士たちを殺すのを目の当たりにしておったゆえ、知性がありそうだと思うてはおっても、交流出来ずで。」

しばらく沈黙した後、ラディアスの声が言った。

『そのように思う事は無い。主らが我らの言語を理解できぬのは知っておったし、試しに声を掛けてみても怯えるばかりであったしな。我らは襲う人を選らんでおるのだ。兵士たちは決して生きては帰さぬが、普通の人なら殺しはせぬ。口にくわえて運んでそこらに放り出しておく。そもそも、我らは人は食わぬ。臭くて食えぬからの。』

臭いのか…。

そう言われて人として良い気はしなかったが、ラディアスは他意はないのだろう。

なので、キダレスは気を取り直して言った。

「ならば良かった。これからは、話せると良いと思うておる。」

ラディアスは、また少し黙ったが、言った。

『良い。主らがそうしたいなら話すが良い。』

結構上から目線なんだなあ。

美夕は、そのやり取りを聞いていて、思った。王だというからには、多分ラディアスは同じ種族にでもこうなのだろう。

『で、キースへの行き方なんだが。』翔太が、割り込んで言った。『あいつら、もっと軍が少ない時に、波乗りのスキル持ちが居てそいつに引っ張らせて夜に泳いで渡ったらしいんだ。今は無理だろう…船は絶対見つかるしな。となると、水中に沈んで頭を出さずに最後まで泳ぎ切るって手しかねぇんだが、はっきり言って、無理だ。ショーンが空気の玉を教えてくれたが、それも10分ぐらいしか持たねぇし。とても島へ渡り切るまで海面に上がらずには無理なんだよ。』

美夕は、泳いだのか、とショックを受けた。波のある海を、長距離泳いで渡れる気がしない。しかも、息継ぎが出来ないのだ。

「…じゃあ、近くまで船で行ったとしても、結構な時間潜ってられないんならその先が行けないって事ね。」

翔太は、頷いたようだった。

『そうなんでぇ。』

すると、またラディアスの声が割り込んだ。

『海中を行くと申すなら、我らが手分けして主らを運べば事足りるのだがな。主らは呼吸が長くもたぬだろう。我らなら、ココ・サカの近くから泳げば…そうよな、半日も掛からぬと思うがな。』

半日息を止めるのは無理だ。

そこに居る、誰もが思った。

『ちょっと待て、お前たちは半日息継ぎできなくても大丈夫なのか?』

翔太の声が訊いている。ラディアスは、答えた。

『半日と言わず一日ぐらいなら大丈夫ぞ。とはいえ、人の形では無理のようだ。常に呼吸しておるのが分かるゆえ、この頻度で必要ならば主らには絶対に無理であろうな。だが島影から出るまでは海上に出ておっても大丈夫であろうし、そこからなら数時間ぞ。』

だから数時間でも無理だってば。

美夕は段々に焦れて来て、言った。

「じゃあ、無理って事ね?ショーンさんも、長く息を止める術を知らないのね?」

ショーンの声が答えた。

『残念だが知らねぇ。仮死状態にして運ぶって手もあるけどな。だがオレだけは起きてないと、誰が起こすんだって話になるし。』

死にたくないし。

美夕は、ため息をついた。

「じゃあ、とにかくは合流しましょう。ラファエル様のことは、説得する。そっちは地下水脈の横辺りなのね?じゃあ、こちらへ来れるかな。こっちの方が兵士も誰も居ないし、きっと安全だと思う。」

慎一郎の声が言った。

『じゃあ、そっちへ行く方向でこっちも段取りする。また、こっちを出る前にチャットする。時々地上へ出て着信確認しといてくれ。じゃあな、美夕。』

美夕は、腕輪に向かって頷いた。

「うん、待ってるね。気を付けて来てね。場所は、今私の腕輪の位置がそっちで出てるから分かるよね。」

翔太が答えた。

『方向も大体の位置も分かってる、マークを付けた。じゃあな。こっちも人数居るし、歩いて一日ぐらいで着くと思う。』

美夕は、やっと合流出来るとホッとして微笑んで答えた。

「うん。これからの事は、こっちで考えよう。」

そうして、通信を切った。

キダレスが、感心したように沈黙した腕輪を見ながら、言った。

「それは便利なものよな。そんな魔法があちらの世界ではあるのか。」

美夕は、苦笑しながら腕輪をパチンと閉じた。

「魔法って言うか、テクノロジーなんですけどね。電波っていうのが飛んでいて…どうして、別の世界でも使えているのかは謎だけど。」と、地下へと足を向けながら、続けた。「それより、仲間がこちらへ厄介になります。あの、でもなるべく早く落ち着ける場所を探していくので、それまで何か、村のお仕事とかお手伝いさせてくだされば。」

大所帯が、いきなりにお邪魔するのだ。食料だって馬鹿にならないだろう。

しかし、キダレスは豪快に笑って美夕を背を叩いた。その勢いの強さに美夕はびっくりした。

「良い良い!ここは豊かな村ぞ、地下とはいっても日が入るしな。客など久しぶりであるから、皆珍しゅうて喜んでおるわ。気にすることはない。」

良い人なんだよな、凄く大きくて怖いんだけど。

美夕は、そう思いながらそれに愛想笑いで返し、そうしてラファエルを説得出来ているだろうかと、案じながら地下へと歩いて行ったのだった。

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