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リーリンシア~The World Of LEARYNSIA~  作者:
神の意思とは
110/230

地上へ

シャルクス達は、一様に黒髪になった。

ただ、それぞれ体型は違い、ラディアスが一番がっしりと背が高く、すらりとしていた。

キークはそれより少し小さいぐらい、それでもショーンぐらいの大きさはあった。マディは、真樹ぐらいの大きさになった。背はあるが、細身な感じなのだ。

そして、ラディアスが青い瞳、キークが金色、マディが緑の瞳だった。

ショーンが言った通り、きちんと服を着ていて、そこらの人と変わりなかった。ただ、とんでもなく美形だった。

「なんかさあ、思うんだけど。」ショーンは、躊躇いがちにお互いを見ている、シャルクス達を見ながら言った。「魔物とか言うけどよ、人型にしたらみんないい男になるんだよな。あっちでもそうなんでぇ。人もかた無しだよ、まったく。」

ラディアスは、そろそろと両足を持ち上げて地を踏みしめると、思い切って立ち上がった。

最初少しふら付いたが、ショーンに慌てて支えられて、そうしてバランスを取ってすぐに立つ事が出来た。他の二人も、同じようにびくびくしながら立ち上がる。

どうも、二本足というのが難しいようだった。

「誠に…よう主らはこんなもので地上を歩いておるの。」ラディアスは、一歩一歩踏みしめるようにしながら、言った。「回りに支えるものが何もないでは無いか。たった二本の脚だけでバランスを取って進むなど、誠に器用な。」

言いながらも、もう慣れて来たのかサクサクと歩き出した。翔太は、初めて地上を歩くらしい、ラディアス達を気遣いながら、言った。

「大丈夫か?ちょっと歩くのを練習してからの方が良いんじゃないのか。洞窟の道はでこぼこしてるぞ?オレ達でもふら付くのに、歩くの初心者で行けるのかよ。」

キークが、慎重に足を運んでラディアスについて歩きながら、答えた。

「良い。恐らく大丈夫ぞ。とにかくは、早う地上へ出てやることをやってしまわねば。」

どうやら、キークは早くシャルクスに戻りたいらしい。

翔太は、苦笑しながらそんなシャルクス達を連れて、慎一郎とショーン、真樹、亮介と共に、地上へと狭い出入り口へと歩いて行ったのだった。


外は、もうとっぷりと日が暮れて、真っ暗な中で月が二つ、木々の間から見えた。

翔太は大勢に囲まれながら、落ち着かない様子で腕輪を開いた。そこのグループチャットの欄に、通信可能か?と文字を打っていると、ショーンが後ろからそれを見て、お、という顔をした。

「…やっぱり、お前らはその文字を使うのか。こっちじゃそれは使わねぇ。古代の神の文字だと思われててな。誰にも解読出来なかったんだが、あっちへ来た異世界の奴らに教わって、オレにも大体読めるぞ。」

それには、え、と慎一郎がショーンを見た。

「言葉は同じなのに、文字は違うのか?」

ショーンは、頷く。

「まあなあ、あんまり詳しい事は言えねぇが、言葉だけ神から教えられて、文字は自分達で開発したっていうか。ええっと、お前達の所でいうアルファベットは使うぞ?簡単だから、公共の場所じゃあそれが多い。だが、普段はこっちの文字だ。お前らは難なく読んでるみたいだが、違う文字だろ?」

言われてみたらそうだ。

町中の看板などはアルファベットが多いが、たまにおかしな象形文字のような物も見掛ける。それでも、なんとなくそれも読めた。

翔太が顔を上げた。

「…てぇことは、もしかしてオレ達のやり取りは敵には読めねぇかもしれないってことか?」

それには、ショーンもうーんと悩んだ顔をした。

「どうだかなあ。捕まった奴らが教えさせられたかも知れねぇし。警戒しとくに越したこたねぇよ。」

言われて、皆は顔を見合せた。確かに今回、かなりの仲間が捕まっているはずなのだ。命を脅かされたら、何をしているか分からない。

すると、ブルブルと腕輪が震えた。

シャルクス達が一斉に退くのを見て苦笑しながら、翔太は言った。

「連絡が来たんだ。」と、通信応答ボタンを押した。「美夕?」

すると、美夕の声がした。

『翔太!あのね、ラファエル様とここの長のキダレスさんと、メニクさんとバルナバスも来てるの。』

翔太は、頷いた。

「こっちもいろいろ来てる、シャルクス達も王のラディアスと、それからキーク、マディが来てるんだ。ショーンが人型の術を掛けてな。歩いて外に出て来た。」

するとあちらから、驚いたような野太い声がした。

『オレはキダレス。グルーラン…いやシャルクスが人型になっておると?!』

仰天しているような声だ。

それには、ショーンが答えた。

「驚くのは分かるが、あっちの巫女の術にそういうのがあるんだよ。知性があれば誰だってなれる。で、そっちはどうだ?こっちはキースへ行きたいが、方法がねぇって話になってるんだが。」

すると、ラファエルの声が割り込んだ。

『主がショーンか。我がラファエルぞ。主は、リツ遺跡から来たと聞いておるが誠か。』

ショーンは顔をしかめて翔太や慎一郎を見る。しかし、答えた。

「…確かにオレはあの遺跡を調べてた、というか、様子を見に来てた大陸の術士だが、それがどうした。」

ラファエルは、その答えを聞いて矢継ぎ早に言った。

『主の話を聞きたいのだ。主に会って、なぜあの台座の場所に居たのか知りたい。主は飛べると聞いておるし、特別な命であるのは間違いないだろう。我は、あの台座に登って神の下知を戴きたいと思うておるのだ。出来たらキースではなく、リツへ参りたいと思うておる。』

美夕が、脇から慌てて言っているのが聴こえる。

『ラファエル様、それはショーンに会ってから話すという事ではありませんでしたか?あの…』

『我は無駄な動きをしたくないのだ!神のご指示があれば、問題なく目的を達することが出来るはずであろう!申しておるではないか!』

何やら向こうで揉めている。

こちらでは、それを困惑したような目で聞いていたが、ショーンが、ため息をついて言った。

「あのなあラファエルとやら。ショウタから聞いたが、命に刻印があるんだろ?あんた、何を神に聞く気でぇ。神はな、どうしたらいいか教えてください、では教えてくれねぇぞ。こうしようと思っているのでやり方を教えてくれ、なら教えてくれる可能性はあるがな。丸投げで教えてくれるわきゃねぇだろうが。甘いぞ。」

ラファエルの声は、憤ったままで言った。

『主までそのように申すか。我らがこれほどに犠牲を出して困っておるのに、神がお助けくださらぬはずはない!』

皆が困惑する中、だが、ショーンは首を振った。

「だから甘い。神がどんな存在か知らねぇくせに。そもそもがな、お前ら刻印持ちってのは神に近付く意識を持てるように、地上に修行に出されてるんだぞ。困りました、道を示してください、で、言われた通り動くような命は要らねぇ。だったら、神殿に仕えてるその辺の修道士で十分だ。そうじゃなくて、自分で考えて困難を乗り越えることを期待してるんじゃねぇか。」

ラファエルの声は、しかし意固地になっているようだった。

『主とて神がどんな存在か知らぬくせに!我ら刻印持ちの事は、いつも見守ってくださっておるのだ!これまでどれほどに困難で、犠牲を払っておるのかも見ておられる!きっと台座にさえ辿り着けば、お教え頂ける!』

翔太は、困ったように自分の腕輪から聴こえる声を聴いていた。ラファエルは、これほど余裕が無かっただろうか。もっと素直で、皆を導こうと一生懸命な命だったのでは。

ショーンが、もはや怒ったように言った。

「はいはい、お偉い刻印持ち様だからな。あのな、オレは神が居ることを知っている。会ったこともある。あいつらの考え方も知ってる。とんでもなく力を持ってることもな。お前を助けるつもりなら、とっくに台座なんざなくとも出て来て何とかしてくれてらあな。そのいつも見ている神が、お前が美夕と出会って神殿を追われて、こうして困難な旅をすることになるように、促したのだと思わねぇのか。自分で何とかしろと、オレまで遣わして会えるように持って行ったとは思えねぇのか。なんでそんな回りくどいことをするんだよ。お前自身に何とかしろと言ってるんじゃねぇのか。」

ショーンの言い方は突き放してはいるが、もっともな事だった。いつも見ているのなら、助ける力があるのなら、さっさと出て来てあっちへ行けこっちへ行けと指示して動かしたら良いのだ。それをしないのだから、きっと自分で何とかしろと言っているのだろう。

だが、ラファエルには通じないようだった。

『…もう良い!ならば我だけでも、台座へ登ろうほどに。』

翔太が、それには慌てて言った。

「待て、そこから遺跡って、また地下水脈を越えるんじゃねぇのか。越えたとしても、あっちは軍がわんさか居るぞ。そこから逃げて来たんじゃねぇのか。無理だ、今遺跡へ行くなんざ自殺行為だ!」

ショーンが、フンと鼻を鳴らした。

「今まで隠れて皆に大事にされてたお坊ちゃんじゃしようがねぇ。勝手にしろ。ただし、神に祈っても助けちゃくれねぇぞ。そこで死んで天へ昇って肩身が狭い思いをすりゃいいさ。お前は何も成してないんだからな。ウラノスは厳しい神だ。刻印を取り上げられるかもしれねぇが、ま、ただ人なら善良な人になれるだろうよ。皆と同じ民に生まれ変わりな。」

腕輪の向こうは、シンと静まり返っている。

こちらの皆も、困惑して顔を見合わせていた。

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