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リーリンシア~The World Of LEARYNSIA~  作者:
神の意思とは
106/230

連絡

「あの」美夕は、話の腰を折るかと思ったが、焦れて言った。「私の仲間が心配していると思うんです。私達を見付けようと無理をしているかも。なので、連絡したいのですが、ちょっとでもいいので地上に出られる場所はありませんか。」

キダレスが、驚いた顔をする。ラファエルが慌てて付け加えた。

「これらは異世界から来たので、離れた位置からでも話が出来る腕輪を持っておるのだ。それが、地下では使えずで。腕だけでも地上に出られたら良いのだが。」

すると、キダレスは頷いた。

「ならば、メニクに。」と、脇に座る少し若めの男を見た。「メニク、通用口に案内してやれ。」

メニクと呼ばれたその男は頷いて立ち上がる。

ラファエルは言った。

「そこは誰も来ぬ場所か?」

キダレスは、頷いた。

「ああ、この辺りには誰も来ぬが、それでも見張りは立てておる。時に魔物は迷い込んで来るからの。とはいえ、我らが狩るのであちらもこの辺りにはついぞ来ぬようになったもの。兵士もまずここらには来ぬからな。」

心配そうなラファエルに、美夕は言った。

「今度は絶対に光も漏れないように慎重に着信させますから。」

バルナバスが、脇から言った。

「オレも行こうか。」

しかし、美夕は首を振った。

「メニクさんが強そうだし、何かあっても大丈夫よ。行って来ます。」

メニクは少し驚いた顔をしたが、黙って美夕を連れてそこを出て行った。

それを見送りながら、キダレスは言った。

「メニクはオレの弟でな。寡黙なやつだが頼りになる。ましてここは我らが二百年守り抜いた場所。案じることはない。」

ラファエルは頷きながらも、心配そうな顔のままその背を見送った。

あちらも誰か亡くしておらねば良いが…。

ラファエルは、それを案じていた。


美夕は、メニクについてうす暗い洞窟の中を歩いて行った。

途中、子供達が珍しげにこちらを見ていたが、母親らしき人が苦笑しながらそれらを咎め、美夕に会釈してくれた。

平和で、この島に問題が起きているなど考えられない様子だった。

この穏やかな様子を壊してはいけない。

美夕は、心にしっかりとそれを留めて、慎重に着信させようと思っていた。

メニクは、ドンドンと暗い細い道へと歩いて行く。

段々に前が見えなくなって来るのだが、メニクは光の魔法を使う様子はなかった。

美夕も、もしかしたら外から見えてはいけないからかと思い、必死に目を凝らして足元を見定めて足を進めた。

そのうちに、少し前から光が漏れて来て、出口に近付いているのが分かる。出口付近には木々が生い茂り、そして狭いので大柄なメニクは這うようにしてそこを斜めに上がって外へと出た。

外には、二人の同じような風貌の男達が立っていて、メニクに頭を下げた。

「メニク。長が何か?」

メニクは、首を振った。

「いや、長の客人の用ぞ。」と、美夕を振り返った。「こちらで良いか?」

美夕は頷いて、自分は出口から出ずに、腕輪だけを外へと出してみた。

すると、腕輪がブルブルと震え始め、メニクも男達も一斉に構えた。美夕は、光を片手で押さえてなるべく隠しながら、言った。

「すみません、仲間からの連絡が貯まっているようで、全部ここへ着信するまでは止まりません。」

メニクは、恐る恐る腕輪を見ると、顔をしかめた。

「着信とは?」

美夕は、どう言ったら分かるかと真剣に考えながら、言った。

「私達の世界の魔法のようなものだと思って頂ければ。仲間が自分の腕輪に伝えたい事を書いて送ると、腕輪を持つ皆にそれが宙を飛んで届くのですわ。空を飛んで来るので、地下では届かないのです。なので、地上に出て来た今、一気に届いてこんなことに。この光とブルブルは、仲間からの連絡が届いた合図なのです。」

メニクは、理解出来たのか感心したように腕輪を見つめた。

やっと静かになって、美夕は腕輪を開いて見た…掲示板には、結構な数の書き込みがある。

見ると、ライデーン組は無事に逃れて来た仲間と合流したようで、何やらゲーム関係の、他の人気ゲームの中のシチュエーションなどを絡めた隠語のようなものが書かれてある。

それは美夕には理解が出来なかったので、翔太と連絡が取れたらそこで、聞いてみようと思った。

肝心の翔太からの連絡だが、それは一つも来ていなかった。万が一翔太に何かあったとしても、真樹や慎一郎、亮介など他の仲間も居るはずなので、誰かが連絡して来るはずなのだ。

…まだ地下に居るのかしら。

美夕は思いながら、とりあえず掲示板では皆に公開されてしまうので、仲間同士のチャットの欄にかき込んだ。

『私は無事です。これからの行動をどうするか、また話し合いたいです。』

そう書き込むと、驚いたことに、いきなりブルブルと腕輪が震えた。

「!!」

美夕が仰天して腕輪なので腕についているのにそれから離れるように顔を反らすと、メニクも仰天して飛び退った。

美夕は、自分が驚いてどうすると思いながら、メニクと二人の男達に苦笑してから、言った。

「あの、音声連絡です。」と、言って、通話ボタンを押した。「翔太?」

すると、腕輪から声がした。

『美夕!お前無事か!』

美夕は、あまりに大きな声に、慌てて言った。

「翔太、声が大きい!」

向こうから、息を飲んだ音がした。恐らく、思いもかけず連絡が着いたので思わず声が大きくなってしまったのだろう。

次の声は、幾分落ち着いて小さめの声だった。

『…すまねぇ、つい。通信が来てるかもしれねぇと思って今、外へ出て来たばっかりなんでぇ。そしたら、パッとリアルタイムでお前のチャットが来たから、慌てて通話した。そっちはどうだ?こっちはみんなとりあえず元気だが、シャルクス…いやみんながグルーランって呼ぶ魔物に会ってな。』

美夕は目を丸くした。グルーランって…地下水脈の?!

「え、あの恐れられてる?!」

目の前で聞いている、メニクと男二人も顔を見合わせている。翔太の声は、答えた。

『ああ、だがショーンがシャルクスと話せる魔法を知っててな。あいつらはグーランじゃなくてシャルクスだって言ってる。助けてもらって、今シャルクスの住み処に居る。』

美夕も驚いたが、目の前のメニクも驚いて思わず言った。

「グルーランの巣だと?!」

すると、その声は翔太にも聞こえたらしく、翔太が怪訝な声で言った。

『…誰か居るのか。』

美夕は、頷く。

「あのね、私とラファエル様と…」巫女たちを置き去りにしたことは、後で言った方がいい。「ええっと、巫女たちは来れなくて…修道士達とレナートおじさんはね、ココ・サカの民の人たちに会って、そこで話をしているの。とっても頼りになりそうな、強そうな人たちなのよ。ここに居るのは、見張りの人たちとメニクさん。」

メニクは、紹介されたので話していいかと口を開いた。

「オレはメニク。こちらの長の弟ぞ。主がこの、ミユの仲間の異世界から来たショウタか?」

翔太は、戸惑いがちに答えた。

『ああ、その、はじめまして。オレは美夕の仲間の一人の、翔太だ。翔太って呼んでくれ。オレもメニクって呼ぶ。ところで、そこはどこだ?オレ達はシャルクスの巣に隠れてるから今は安全だが、そっちは大丈夫か?』

後半部分は美夕に言ったのだろうが、メニクが答えた。

「ここは我らの里があるゆえ、大丈夫ぞ。それより、主らこそ大丈夫なのか。グルーランに出逢って生きて帰った兵士は居らぬと聞いておるぞ。我らは確かに、グルーランを見かけたことはあるが、脅されるだけで殺されはしなかった。とても敵わぬから、我らも会わぬように水脈には近寄らぬようにしておるのだ。」

翔太は答えた。

『いや、シャルクス達は別に人全般を憎んでるとかじゃねぇ。理性的だし話が通じる。これまで、話をする術を知らなかっただけで。ところで、ラファエルは何て言ってる?アガーテと数人の巫女を助けてるんだが、ラファエルは皆を禁足地に置いて、それからシーラーンへ向かおうとしていると聞いてるがな。なんか禁足地って行きづらいんだろ?行けそうか?オレ達も行った方がいいか?』

美夕は、メニクと顔を見合わせた。禁足地には、行けないとキダレスから聞いたばかりだった美夕は、その視線に無理だろうというメニクの意思を感じた。

なので、言った。

「実は…こちらの長のキダレスさんから聞いたんだけど、禁足地ってほんとに行けないんだって。断崖絶壁を降りなきゃならないし、ディーラっていう翼竜が来るらしくて、それに海からだと波が荒すぎて無理とかで。キダレスさんも、何度も行けないか道を探していたらしいけど、無理だったって言ってた。」

翔太の声は、怪訝な色になった。

『じゃあ、ラファエルはどうするつもりなんでぇ。こっちも大概人数が多いが、全部連れてシーラーンには行けねぇとオレは思ってる。だから、何人か見繕って、残りはここに残して行くつもりなんでぇ。そっちはその里に預けて行くのか?』

美夕は、困ったようにメニクと視線を合わせたまま、首を振った。

「分からないわ。まだそこまでの話になっていないから。」と、ハッと思い立った。「そうだ、翔太!掲示板見た?ほら、隠語みたいなの使ってて私には分からなかったけど、あれどういう意味?別のオンラインゲームのキャラの名前とか地名とか出てたけど、私あのゲームしてないから分からないんだけど。」

翔太が、急に言われて面食らったのか、一瞬黙ったが、すぐに、ああ、と息をついた。

『あれはゲームで使われてる地名をこっちの地名に置き換えて言ってるんだ。恐らくだが、地図にある島があるだろ?ええっと、キースっていう島だ。』

美夕は、急いで腰のポーチから地図を引っ張り出して、頷いた。

「ああ、ライデーンから海をずっと行った島ね。」

翔太の声は頷いた。

『そう。そこに、どうやら神殿があるらしくて、そこに仲間達と潜んでるみてぇだな。オレはあのオンラインゲームはやったことあったから、地名ぐらいなら覚えててな。あのゲームの中ではミミックっていう横長の島がある。丸い島はチタ。だからチタだったらアディアナの方だっただろうが、ミミックだからキースの方だってわかる。神殿はデルタって呼ばれてて、回復スポットになってる。あいつら、ライデーンの近くのミミックにデルタがあってそこに居る、って書いてるだろう?つまり、そういう事だ。』

そうだったのか。

美夕は、目が開かれるようだった。確かに、その書き方だったらもしこの世界の住人に知られても解読されることは絶対にない。

ゲームという存在自体を皆が知らないからだ。

「じゃあ…仲間は、そこに預けた方がいいのかな?」美夕は、考えながら言った。「だって、みんなで帰るんでしょ?何かあっても人数が居た方が対抗できるし、島なら守りやすいし。あちこちに迎えに行くのって大変でしょう?合流するの難しくなるわ。」

翔太の声が、また怪訝な色を帯びた。

『え?今からキースか?海から行けば可能だろうが、軍がライデーンに居るのに。どうやって海を渡るんだ?』

美夕は、見えないのを承知で肩を竦めた。

「だって、メジャル組が無事に合流出来たわけでしょ?掲示板をずっと遡って行ったら、その方法が翔太なら分かるんじゃない?私は、あのゲームを知らないから隠語が分からないのよ。」

翔太は、言われてみたらそうだと思ったらしい。

なので、頷いたようだった。

『分かった。もしかしたらショーンが何か術を知ってるかもしれねぇし。』

美夕は、顔をしかめた。

「さっきも言ってたけど、ショーンって誰?15年前にこっちに来た人?」

翔太は、あ、と慌てて言った。

『そうか、お前は知らねぇな。慎一郎達が前に潜んでた事のある遺跡ってのを調べに行った時に出逢った、大陸から来たって術士で。シャルクス達と話せたのもショーンが術を知ってたからなんでぇ。空も飛べるんだぞ?すごい力がある。』

美夕は、仰天した。空を飛べるの?!最強じゃない!

「空を飛べるなんてすごいじゃない!」

翔太は、呆れたように笑った。

『まあ、オレ達が飛べねぇから移動は時間かかるけどな。地下水脈でも力がちょっとしか使えなかったしよ。命の気がなきゃ一緒だ。』と、息をついた。『じゃあこっちもまたいろいろ含めて考えてから、また夜に連絡する。チャットで知らせてから音声通話するから、お前もそれまでにラファエルと方向性を考えておけよ。』

美夕は、頷いた。

「分かった。じゃあ、また夜に。」

翔太の声は、幾分明るめに言った。

『おう。じゃあな。』

そうして、通話は切れた。

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