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リーリンシア~The World Of LEARYNSIA~  作者:
神の意思とは
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ココ・サカの民

回りには、大柄の人影がずらりと並んでこちらを睨むように見ている。

よく見ると、皆甲冑のようなものを身に着けていた。

ここは広いので、回りを囲む大柄な男達でも、余裕で立っていられるようだった。

ラファエルは、座っていた岩から立ち上がって、凛とした様子で言った。

「我らはその昔、アレクサンドルにシーラーンの地下神殿から逃れて隠れ住んでいた者。主らは、見た所アレクサンドルの兵士では無いようだが、こちらに住む民か。」

美夕は、その落ち着いた様に驚いた。ラファエルは、変わらない。あんなことがあって、こんな状況に陥っていても、いきなりに現れた相手を見定め、まず話を聞こうとする姿勢は変わらないのだ。

その姿は、どこか神々しくさえあった。

先頭に立っていた、ひと際大きな男は、戸惑うようにそれを聞いてラファエルを見つめていたが、両脇に居る男達を見てから、手にしていた槍を下ろした。

「…我らは、ココ・サカの民。その昔島の向こうに広がる土地、ディア・メルから移って来た民の末ぞ。アレクサンドルが街に結界を張ると言い出した時、我らの曾祖父、祖父は地下のこの土地を知っておったのでここへ潜って隠れた。アレクサンドルに支配されるのが嫌だったからぞ。主らも、あれに追われたか。」

ラファエルは、頷いた。

「我が幼い頃に、地下神殿へと襲撃して参って、大勢の仲間を失いながらパージ近くの森の地下神殿で潜んでおった。この度、そこも襲撃され、地下の洞窟の中を、水脈を越えてこちらへ逃れて参った。多くの仲間を亡くし、今居るのはここに居る十人だけぞ。皆であちこちに逃げておるから、もしかしたら生きて逃れておる者も居るやもしれぬが。」

そのココ・サカの民の男は、じっとラファエルを見ていたが、頷いた。

「…主は嘘を言うておらぬな。」ラファエルが驚いた。自分がいつも、皆に言うことだからだ。「ならばこちらへ。詳しい話を聞こうぞ。我は、(おさ)のキダレス。我らの村へ案内しよう。」

回りの男達は、ぞろぞろとそれを聞いて移動し始める。

ラファエルは、バルナバスと美夕を振り返った。

「あれは嘘をついておらぬ。皆も共に。参ろうぞ。」

そうするしかない。

美夕は、バルナバスと頷き合って、そうしてレナートと修道士達を促して立ち上がらせ、皆と共に、そのキダレスという男と大柄の男達に付き従って、地下の道を歩いて行った。


しばらく歩くと、広く天井に穴が開いた場所があり、その下では数人の女達が、畑の世話をしながらふと、顔を上げたのが見えた。

男達は、どうやら侵入者が来たと皆でラファエル達の方へと来ていたようで、そこに居るのは女子供ばかりだ。

天井の穴から離れた場所には、木造の家が何軒も立ち並び、裕福そうな平和な様子だった。

そのうちの、奥のひと際大きな一軒の家へとキダレスは足を進めた。

「オレの家だ。」と、ラファエル達を招き入れた。「さあ、中へ。」

言われるままに入って行くと、その家には暖炉もあり、暖かい。

床には何かの毛で編まれた絨毯が敷き詰められてあり、良い暮らしをしているように見えた。

奥へと足を進めたキダレスは、そこにある座布団のような物に、座った。こうしてみると、キダレスは身長が二メートル以上ありそうで、体は横にも大きくガッツリとしており、髪は黒く短く刈り込み、肌も幾分茶色掛かったいるように見える。美夕は、その姿が自分達アジア人に似ている、と思ったが、こんなに体が大きなアジア人には会ったことはなかった。

「座ってくれ。」

示された床には、絨毯の上に丸い座布団が幾つか置いてあった。ラファエルはキダレスの正面になる場所へと座り、その両脇にバルナバスと美夕が並んで座る。

他の七人は、その後ろへと居心地悪げに並んで座っていた。

キダレスは、それを見て、言った。

「…見た所、主が長か。」

ラファエルは、頷いた。

「長と申すか、皆を導く任を神から与えられた者。ラファエルと申す。」と、脇を見た。「こちらがバルナバス、そしてこちらがミユ。後ろに居るのは、同じ神に仕える修道士達ぞ。」

キダレスは、皆を見回して、頷いた。

「ラファエル。主はどうやらかなりの力を持つ男のようぞ。アレクサンドルが禁じた神を信仰しておる者達は、皆白い髪であると聞いておる。主の両脇に居る者達は違うようだが、他は皆聞いておった通りの風貌ぞ。して、あちらから追われて参ったと?」

ラファエルは、また頷いた。

「その通りよ。この、ミユと申す者は異世界からこちらへ飛ばされて帰る方法を探しておる者。他にも仲間は居るが、今は離れてしもうておる。アレクサンドルはどういうわけか、異世界から来た戦闘員達をシーラーンへと集め、何かに利用しておるようだ。これらも必然的に追われることになり、一緒に逃げて参ったのだ。ここへ来るまで、地下水脈ではかなりの仲間を失った。襲撃でも盾になるために残った者達を失った。我らは、安住の地を求めて、禁足地へ参ろうとしておるところなのだ。」

キダレスは、それを聞いて眉を寄せた。

「禁足地と?」と、脇に座る、別の男を見た。そしてラファエルに視線を戻す。「…あそこは、我らでも近寄らぬ。あの地にたどり着くためには、海から参るか崖を降りるかしかないが、あの数百メートルはあるだろう崖を無傷で降りるのは、ディーラ達に襲われるゆえ無理であるし、海からは潮の流れが激し過ぎて近寄ることが出来ぬ。主らはもしや、地下を抜ければ参れると思うたのか?」

美夕が、それを聞いて横から言った。

「はい。もしかしたら行けるのではないかと思ったのですが、やはり無理ですか?」

キダレスは、首を振った。

「無理ぞ。我らだって、もっと日の当たる安住の地を見つけたいと思うておったし、出来ればあの地へ移りたいと何度かルートを探したが、無理であった。ディーラはかなり賢い魔物で、こちらの話すことも理解しておるようだった。裏をかいて何とか降りようとしても、全て尽く見抜かれてしまう。なので、我らはこのような地下での生活に甘んじておるのよ。」と、窓の外を指した。「あの、穴が開いておる場所の下で作物を育て、夜は見張りに立って兵士にでも見つかろうものなら、全て地下水脈へと追って口を封じておる。ま、滅多に誰も来ぬのだがな。ここらには結界のある町が無いゆえ。」

ラファエルは、眉を寄せて言った。

「…それで、ディーラという魔物は?話に聞く翼竜か。」

キダレスは、頷く。

「そう。両方の羽を広げたら五メートルはある大きな翼竜よ。何やら会話をするような鳴き方をするゆえ、恐らくはかなりの知能を持っておるのではないかの。他の魔物も、あそこには近寄らぬ。ディーラに狩られてしまうからぞ。」

翼竜…ディーラ。

美夕は、その名を頭に刻んだ。まだ見た事が無い魔物だ。

ラファエルは、息をついた。

「…では、禁足地には行けぬと。」

キダレスは、頷いた。

「無理ぞ。主とオレの能力は恐らく似ておって、恐らく主も、あの地に清浄で眩しい気を感じて安息を求めて目指しておるのではないのか。」

ラファエルは、少し驚いた顔をしたが、頷く。

「その通りよ。幼い頃、シーラーンの地下神殿であちらの方向から流れて来る気に魅せられて、いつかあの場所へ参りたいと思うておった。主も、我のようにいろいろ感じ取ることが出来るか?」

キダレスは、苦笑しながらも答えた。

「主のようにとは行かぬだろうの。何しろ、主の力はかなりのものぞ。オレは、ただ感じ取れるだけ。例えば、主らが嘘を付いたならオレには気取れる。いやな気が近づいて来ても気取れる。遠く移動しておるいろいろな気の事なども、集中すれば感じ取ることが出来る。だが、術を放つとて人並みよな。」

ラファエルは、眉を寄せた。

「人並みとて…町の一般の人は、魔法すら放てまい。」

キダレスは、それに息をついた。

「昔は、誰でも術を放てたと祖父から聞いておる。アレクサンドルの結界の内に住まうようになってから、皆術を忘れたのか魔法を放てぬようになった。だが、我らは違う。ずっとこうして外に居たゆえ、術を伝えて皆が使える。それは、力の強弱はあるがの。」

美夕は、それを聞いて驚いた。この大きな体の民族が、魔法も使えて戦えるというのに、ここにずっと隠れ住んでいて、禁足地には足を踏み入れられずにいるのだ。

それなのに、自分達のような非力な者達が、禁足地に行くのはもちろん、シーラーンのアレクサンドルの膝元へなど行くのは、無謀なのではないか…。

だが、弱気になっている場合ではなかった。

翔太達は、今頃美夕を探して無理をしているかもしれないのだ。

…とにかく、腕輪の圏内へ入れたら。

美夕は、そう思いながら、出来たら地上のどこかへ上がって腕輪の着信をして来たい、と会話が途切れるのを待ってソワソワしていた。

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