第七話 「騎士熱」
第七話 「騎士熱」
俺は、熱に浮かされながら教会に戻る。見張りの二人が、「大丈夫か?」と声をかける。
「あまり大丈夫じゃないみたいです……。」
俺は、そう答えるのが精一杯で床に倒れる。シャツの下は、汗でぐっしょりで、手足がしびれる感覚がある。熱でぼんやりした目に、俺の手の皮膚が、ぼろぼろはがれてゆくのが見える。
クラーラさんとルカさんが、俺の側に駆け寄って、俺の顔を心配そうにのぞき込む。
「ドミトリー様、これはもしや!」
「騎士熱じゃな。この若造助からんかもな。」
「そ、そんな……。」
「お前たちも知っておろう。ふつう、騎士は、騎士の血を受け継いで、生まれながらに騎士になる。ところが、普通の人間として生まれて、後に騎士の血が目覚めたものは、騎士熱にかかる。なぜなら、身体の作りが変わるからじゃ。致死率9割以上。成人の生存率はもっと低い……。」
「おじい様、なんとかなりませんか!!」
「騎士熱にかかると、大体三日間、高熱を発し、体中の代謝が急速に進み、激痛に襲われる。ゆえに、痛みを和らげる魔法の術師と身体に活力を与える魔法の術師が、何人か交代で魔法をかけねばならん。」
「それでは、侍女のイリーナさんとソフィアさんにお願いしては?」
「わが孫よ。二人で、三日も魔法をかけつづけれるわけがなかろう。無理を言うな。」
「……。」
俺は、彼らがそんな会話をしているのを、遠のく意識の中で聞いていた。痛いのはいやだなあ、と思いながら、俺の意識は闇にのみこまれた。