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第一話 「開店前」
第一話 「開店前」
「あぁさむい……。」
冬の朝、俺は、冷えきった書店の中で、明かりを付け、エアコンの電源を入れる。それから、バックヤードにある雑誌と書籍を台車でレジ横まで運ぶ。
俺の職業は、書店員だ。名前は小川春樹。二十八才独身。
身長百七十センチ、体重六十キロ。
趣味は、マンガ、ゲーム、野球観戦、少々じじくさいが囲碁。
給料は少ないが、まあふつうの人間だ。
人生に特に不満もない。
今は、午前八時十五分。
もうすぐパートの主婦が二人来る。
それまでに雑誌の入ったビニール袋を開けておこう。
店の中や外の掃除は二人に任せよう。
今日は、雑誌の入荷の多い日なのだ。
ところで、今日は、好きなコミックの発売日だ。ビニール袋から開けて早く目を通しておこう。パートの二人が来る前に………。
カッターを手にコミックの入ったビニール袋を破った時、大きな揺れが、俺を襲った…………。