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魔王の勇者チズム  作者: エドラ
4/6

第三善 何事も礼儀から 前編

あらすじ

 唐突ながらも、魔王の子フィロと少女レイスは近場の村を目指す事になり、道中会話を弾ませながらも村へと歩を進める。フィロに助けてもらうも、彼に振り回される事に頭を抱えるレイスだった。

 丘を越えると、小さな村が見えてきた。森を切り開いた農村らしく、村を囲う木の柵のすぐ外には木が生い茂り、村の入り口らしき柵のない所はそのまま平原へとつながっていた。家の二、三軒程建てられそうな畑と質素な木造の家々が建ち並んでいる。

「あそこに見える村がホルンよ。時々、物々交換や小さい頃はあの村で遊んでたりしてた」

「あれが人間達の住まう村というものか…」

 昼が過ぎ、日が傾き始めている夕刻間際に二人は農村が望める丘の頂きに着いていた。森に囲まれた村へと二人は心なしか歩調を早めて歩いていく。

「村長さんとは知り合いだから、今晩泊めてもらえると思う。あんまり、失礼のないようにね」

「案ずるな、人間界での礼儀なども多少なりとも学んでおるぞ」

(本当なの…?)

 出会った当初、そして今に至るまでの言動を考えると、とても信じる気にはなれなかった。だが、教えて直す気も起きなかった。

「それじゃ、挨拶しに行くよ」

「うむ」

 村の入り口に辿り着き、先を歩いていくレイスにフィロは付いて行く。大人達は畑仕事や家の中で家事に勤しんでいる様子が見えた。途中、遊んでいた子供達が興じていた遊びを止め、物珍しそうにこちらを見ている。

 やがて、村の少し奥側に位置する家でレイスは足を止めた。

「ここが村長の家よ。村長、いらっしゃいますか?レイスですー」

 少女は慣れた様子で村長の家の戸を軽く叩きながら、村長を呼びかけた。すると、間もなく戸が開き、中から杖を突いた老人が出迎えた。

「おお、レイスちゃんか。しばらくの間、音沙汰もなかったもんだから心配したぞ、ほっほっ」

「お久しぶりです、村長。すみません、ちょっと事情があったので‥」

 出てきた老人は少女の顔を見ると、驚きつつも嬉しげな表情を浮かべ、笑いながら彼女を迎えた。迎えられたレイスも破顔しつつ挨拶を返した。

「事情とはどんな‥おや?この辺では見かけないお連れさんがいるようじゃが‥」

 挨拶を交わし話し始めようとした時、村長はそこで初めてフィロの存在に気付いた。フィロの方は自信に満ちた不敵な笑顔を浮かべ、

「えーと、この子は‥」

「フィロスィアという。勇者を目指している魔族だ、見た目では分からんかもしれんがな」

(ちょっと‥!?)

 レイスが紹介するよりも早く、フィロは自らの出自を話していた。

 やっちゃった‥レイスは後悔した。フィロ自身に自分が魔族である事の口止めをしていなかった事に。少女は恐る恐る村長の様子を窺った。しかし―

「ほっほっ、面白い事を言う子じゃのう。どれどれ、取りあえず部屋に入りなさい。春とは言え、夜はさむぅなるからの」

「あ、どうもです‥」

 どうやら、村長はフィロが魔族である事に気付いていないようだった。何事もないまま、部屋と招かれた。ともあれ、騒ぎになる事態を避けられて、レイスは安堵の溜め息を吐いた。

「おい、村長とやら。おれ様は子供という歳ではないぞ!」

「バカ!取りあえず、話の調子を合わせて!」

「むぐっ!」

 村長に子供扱いされたのが気に喰わないのかフィロは勢いよく反論しようとしたが、素早くレイスに口を塞がれた。そんな二人が喧嘩する様子を見て、村長はほっほっと好々爺の笑いをこぼした。


 忙しくなってきましたが、毎日連載は何とか頑張っていきます。まだまだ短い投稿となりますが、どうかご容赦を!

_(・ω・_`)

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