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魔王の勇者チズム  作者: エドラ
1/6

第一善 勇者の道も一善から~前編

魔王の勇者チズム!


 光が透き通るような青に薄く白くかかった晴天、時折気ままに漂う雲、白光を照らしつける眩しい太陽の下で、心地好い暖かさを運ぶ風が新緑に染まった草原を吹き流れてゆく。風は新芽で包まれた草原から森へ流れていき、木々の下で仰向けに寝そべる少年の黒髪を揺らした。

 少年は目を閉じて、鳥達のさえずりや春風のささやき、木々のざわめきに耳を寄せ、子守唄代わりにしていた。春の訪れを感じながら、睡魔に身を委ねようと―

「いやあああぁぁぁぁぁぁぁ‥‥」

 ‥‥悲鳴が響いてきた。

 寝ようとしていた少年は名残惜しそうに大きな欠伸をつくと、草の張りついた身体を起こし、目を擦りながら悲鳴が飛んできた方向を見渡した。

「‥‥俺の眠りを妨げるとはどこの馬の骨だ‥?」

 聞こえてきた方向を見やると、草原に二つの動く影が視界に映り込んだ。眼を凝らすと、脱兎の如き勢いで走る人間を青い体毛の犬が追いかけるように疾走しているようだ。ふぅ‥と独り言とも溜め息とも取れる短い吐息をつくと、尻についた草木を払いながら腰を上げ、悠然と立ち上がった。

「ふっふっふ‥勇者の道も一善から、まずはあの人間を助けてやるか‥」

 少年はそんな事を呟くと、草原を駆ける二つの影を目指して走り出した。

 黒髪を揺らし、髪の合間に見える二本の“角”を覗かせながら―


 草原を駆け抜けていた二つの影―その片方である人間、頭の後ろで一括りに結った銀髪を振り乱しながら、少女らしからぬ必死の形相を浮かべ、腕や足を千切れんばかりに動かし、背後からの猛追を見せる獣から逃走していた。

「聞いてない!聞いてない!聞いてなーーーーい!はっ、はぁっ‥草原には最弱のイーター・マウスしかいないと思ってたの‥に‥」

 息も絶え絶えに走り続ける彼女は、助けを求めているのか誰もいない平原で自身が置かれている現状の不満をあらん限り叫ぶ。しかして、その声に応える者はおらず、後ろから迫る獣の荒い息遣いだけが聞こえてくる。

 少女が振り返ると、不気味な青色に覆われた犬のような獣―ブルーハウンドが舌を揺らし、凶悪な白い牙の間から半透明な涎を垂らし、今にも喰らいかかろうとする獣特有の殺気だった眼で凝視していた。

「花も恥じらう、16の乙女の最期が獣の胃袋だなんて‥断固、反対‥えっ!?」

 ―足を滑らせた―いや、踏みしめた筈の土が滑り、態勢が崩れた―

 ブルーハウンドに追い捲られ、削られ切った体力と混乱していた頭では突如のアクシデントに対応出来る訳もなく、少女は無様に転倒した。

 一回転、二回転、三回転―勢いが乗っていた分もあり、身体のあちこちを地面にぶつけながら、地面と空が目まぐるしく変わっていく―

 ようやく回転の勢いが収まり、少女が恐る恐る身体を起こすと―

 ブルーハウンドが数歩先で牙を剥き出し、舌なめずりしていた。

(もうダメ‥)

 最期の時と予感した直後、獰猛な青い獣は醜悪な口腔を覗かせ、跳躍した。

 獣が跳躍した瞬間、景色が緩慢に流れていく―目の前に迫る最期の光景に耐え切れず、少女は緩やかに体感している時の中で、目を必死に瞑った。

 鈍い音―

 身を引き裂く痛みが今か今かと恐れる中、己の激しい鼓動に混じり鈍い音が微かに聞こえた。

 そして、すぐ側に何かが近づく気配。

 恐怖で気が触れそうなな緊迫感の中、声が響いた―

「おい、貴様。いつまでそうしてるつもりだ」

 




お読み頂きありがとうございます。

粗末な作品ではございますが、皆様に楽しんで頂けたら嬉しいです。


日間連載を目指していますが途中、作者の気力の増減により滞る事があるかもしれません。ご容赦下さい。毎日コツコツ行きたい為、非~常に短いです。1500前後で一話分となります。


暇な時、トイレしてる時、通勤通学のひと時、

寝るちょっと前などにちらっとどうぞ。


今後とも、よろしくお願いしますw

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