第七話 光の帝王
馬車の中でアークは今回即位した国王のことを聞いていた。
ヘイムダル王国国王ミレウス・ヘイムダルはわずか20歳という若さで国王となった人物。
容姿端麗、頭脳明晰、そして魔法の実力も兼ね備え、さらには龍の力も持っている。
まさに完璧。
ただ一点を除いては。
性格だけは悪く国王にするのを反対した者がいたという。
ザキロスは昔の自分のようだと笑っていた。
だが驚くべきことはそれではなく、反対した者を殺してしまったというところだ。
それも全員が見ているところで無残に。
それを聞いたアークは絶句した。
「なんですかそれ。」
「正気の沙汰とは思えませんよね。」
アークはカルロスが行きたくなかった理由を察した。
カリンは顔を真っ青にしながら震えていた。
「大丈夫か?」
「はい。」
「辛くなったら言えよ?」
「わかりました。」
頷いてはいたが、アークは心配になり、話題を変えることにした。
「今回のパーティーには何人ぐらい来るんでしょうか?」
「大体千人ぐらいでしょうか。すいません。よくわからないんです。」
ザキロスはアークに頭を下げながらそう言った。
それに対してアークは慌てながら顔をあげるように言った。
「顔を上げてください。初めてなんですからわからなくて当然かと。」
「そう言ってもらえると助かります。」
「では誰が出席するのかわかる範囲で教えてください。」
「確か、エーギル王国のキリカさんとガイア王国のイーゼル・ガイアさんが出席するようですよ。」
カリンはキリカの名前が出たとたんに鋭い目をしてザキロスを見る。
ザキロスはその迫力に圧倒されたのか、顔がこわばっていた。
しかし、カリンはすぐにその表情を見ると、目をそらし、顔を俯かせた。
アークはそっちよりもガイア王国の方が気になった。
ガイア王国は現在、武器や資源を他の国へ売っている重要な国だ。
そのため、金は稼いでいるのだが、土地の問題上、作物が作れない荒れ果てたものなので資源を売って得た金は全て作物に変わってしまう。
そのため経済的には六大王国の中では一番下になる。
それでも世界に多大な影響力を持つほどの国だ。
「そうなんですか。ガイア王国の人と初めて会うので楽しみです。」
アークはそんな事を言いながら窓の外を見た。
するとそこには光り輝く城が見えてきた。
「あれがヘイムダル城です。」
「あれが…。」
アークたちはどんなパーティーになるのかと思いながら城を見つめていた。
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城内に入った三人はパーティー会場へ案内された。
そこにはパーティー用のテーブルがいくつも並び、とんでもない数の人がこの広い空間にいた。
人がいなければとんでもない広さだ。
「すごい人ですね。」
「はい。」
アークとザキロスは着くなり、そんな事を口にした。
たがいに初めてだったからだ。
カリンは周りが知らない人で少し怖がって、アークの背中に隠れるようにしていた。
そんな三人を後ろから声をかけてきた人物がいた。
「初めまして。」
後ろを振り向くと筋肉で隆起している巨大な体がそこにはあった。
例えるなら鉄壁な壁。
まさにそのものだった。
「私はガイア王国次期国王候補のイーゼル・ガイアと申します。以後お見知り置きを。」
「初めまして。私はスヴァローグ王国国王の息子、ザキロス・スヴァローグと申します。」
二人はにこやかに握手をしながら自己紹介をした。
イーゼルは次にアークの背中に隠れているカリンに目を向け、歩み寄る。
「あなたがスヴァローグ王国のカリン様、ですね?」
「はい。」
「お美しい。こちらの方は?」
アークに目線をやりながらカリンに尋ねた。
カリンは彼を見ながら説明をする。
「お兄様と戦い、勝った者のお話はご存知ですよね?」
「えぇ、もちろん。」
「彼がそうです。」
「なんと。」
驚愕の目でイーゼルはアークを見る。
アークは一歩前に出て彼の前に立つと自己紹介を始めた。
「初めまして。僕はアークと申します。」
「アークさん、ですね?」
「はい。気軽にアークと呼んでいただいて構いません。」
「わかりました。これからもよろしくお願いします、アーク。」
「もちろんです。こちらこそよろしくお願いします。」
「では私はこれで。」
イーゼルはそう言って踵を返し、別の相手のところへ話をしに行った。
アークは一息すると今度は背中に衝撃を感じた。
「アーク様!!」
後ろを振り返るまでもなく、この声はキリカだ。
キリカが抱きついてきたのだ。
アークは踏ん張りながら何とか体勢を立て直し、キリカに向き直る。
向き合った瞬間キリカの顔が目の前にあった。
それを見たカリンが間に入ってきた。
「あら、ごきげんよう。」
「カリン、いたのですか?」
「えぇ。」
アークはここまで来てこの二人の争いは見たくなかった。
何よりこの二人の争いは恐ろしいからやめてほしかった。
そのため疑問に思った事を聞いてみた。
「キリカ、久しぶりですね。しかしなぜ様付けなんですか?」
「当り前です。私の夫になるのですから。」
アークは心の中で理由になってないと思ってしまった。
だが、もちろん口に出して言わない。
言ったら何をされるか分からないからだ。
「誰があなたの夫ですって!?」
「あら、本当のことを言ったまでよ。」
カリンとキリカが再び睨みあう。
アークは最終手段を取ることにした。
「ザキロスさん、喧嘩しそうなのであちらの方で二人で話し合いましょう。主にここにきている姫方のお話を。」
カリンとキリカに気付かれないよう、口元に微笑みをたたえながら言うアークを見たザキロスは彼が考えていることを表情から読み取り、頷いた。
「えぇ行きましょう。色んな方がいますから。謙虚で美しい方がいいですね。」
「そうですね。」
それを見たカリンとキリカは少し困った顔をしながらアークたちを見つめる。
だが、視線には気付いているものの、アークたちは気付かないふりをして彼女たちに聞こえるように彼らはこう言った。
「ザキロスさんはどういう方が好みで?」
「やはり、守りたくなるような方ですね。」
「そうなんですか。」
「そういうアークさんは?」
「僕は誰とでも仲良くなれる方がいいですね。」
「そうなんですか?」
「はい。後は優しい、も付け加えておきます。」
「なるほど。」
それを聞いた彼女たち二人はすぐに喧嘩をやめてアークの元に歩み寄る。
肩をたたかれ、アークは後ろを振り向くとカリンとキリカがいた。
「どうしました?」
「もう喧嘩しないから…。」
「アーク様のためなら喧嘩はもうしません。」
その言葉を聞いたアークは満足げに笑って仲良しが一番だな、そう言った。
やがてパーティーの主催者、ミレウスがやってくるとあたりは静まり返った。
「ようこそ!!わがパーティーへ!!」
両手を広げながら大げさにそんなことを言いながら胸を張っていた。
「皆さんをおもてなしするために作らせていただいた料理をお楽しみください。」
そういうと指を鳴らす。
扉を開けて入ってきたのは執事やメイドだ。
料理を作ったシェフもいた。
彼らの顔は少し重たそうだった。
それもそのはずだ。
料理は彼らが作っているのにかかわらずミレウスが作ったかのように言っているのだから。
料理が並べ終えたのを見計らい、ミレウスはさらに続けてこう言った。
「皆さん、これだけではございません。今回は私が国王にふさわしいと皆さんにわかっていただくため、この会場にいる三人の龍の力を宿す者と模擬戦をしようと思います。」
それを聞いたその場にいる全員は驚きを隠せなかった。
当然反対の言葉も出る。
ざわめく会場をミレウスは手を鳴らし鎮めると声を荒げながらこう言った。
「お静まりください!!何をそんなに驚いているのです。私の力を見せるいい機会ではありませんか!!」
アークはミレウスを見ながらこう思う。
こいつはただの暴君だ、と。
ザキロスとは全く違う荒れ方をしている。
この男は国王にふさわしくないと思い前へ歩み出る。
ザキロスやカリン、キリカは驚いて止めようとしたが、アークから出ているオーラがそうはさせなかった。
そして、壇上にいるミレウスに近づいていく。
イーゼルも気付き、アークの雰囲気を見て口元に笑みを浮かべた。
アークはミレウスのいる壇上までジャンプして登った。
「私と勝負してくれませんか?」
「は?」
「わかりませんか?私と勝負してください。」
「なんだと?お前、立場を分かっているのか?」
「はい。それとも、私が怖いんですか?」
「なんだと!?」
アークはわざと相手が怒って自分を意識させるように挑発する。
それにまんまと引っ掛かったミレウスが青筋を立てながら怒ると会場の誰もが恐れた。
この少年は殺されると。
「どうするのですか?」
「ふん。たかが民間人だか何だか知らんが俺はお前になんか興味ないんだよ。俺は強い奴とやりたいんだよ。」
「逃げるんですか?国王ともあろう人が民間人から逃げるんですか?」
「あ?なめるなよ小僧…。」
再びアークは挑発的な言葉を浴びせる。
相手が頭いいことを知っている。
だが、権力者は庶民だと思っている相手から挑発行為を受ければ怒る。
それをアークは知っていたため、わざとやっていた。
ミレウスは不敵に笑うと会場の人々を見てこう言った。
「この者が私に無礼な行動をいたしました。そのため、闘技場にて殺したいと思います。」
それを聞いた会場の人々は戦慄した。
ミレウスの目が本気で殺そうとしていたからだ。
そんな中アークは落ち着いていた。
予定通りなのだから。
その後、ミレウスはこの会場の全ての人に転送魔法を使い、闘技場へ送った。
アークはミレウスと対峙する形で闘技場の真ん中にいた。
「覚悟は出来てるんだろうな。」
「そんなものはいらない。」
そういうとアークは構えを取り、口を開こうとはしなかった。
ミレウスは不敵に笑う。
「そうか。光の届かない世界へ送ってやる。」
ミレウスはそういうと試合開始の鐘を鳴らす者へ目をやる。
それと同時に鐘が鳴り、今ここにアークとミレウスの戦いが始まりを迎えた。




