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七聖龍と僕との物語  作者: 陸奥 昴
七聖龍編
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第四話 水の都からの使者

ザキロスとの闘いに勝利してから、一週間が過ぎた。

今、アークはスヴァローグ王国の城に住んでいる。

それは戦いのときにカルロスが約束したアークの身を守るためのものだ。

負けたザキロスはカルロスにも、アークにも敬語を使うようになった。

アークは、ザキロスに敬語はやめてくれと頼んだのだが、拒否されてしまった。

その時に理由を聞いたのだが、ザキロスは答えてくれなかった。

そんなわけで今は、上下関係がおかしい状況にある。

アークはカルロスにこのままでいいのかと尋ねたところ、面白いからこのままにしておこうといわれた。

この親にしてこの子あり。

そういうのをアークは実感した。

そんなことより、今日は水の都といわれるエーギル王国国王の娘が来ることになっていた。

エーギル王国とスヴァローグ王国は今、友好条約を結んでいる間柄で、両国共に時々使者を遣い、友好を深めている。

それだけではなく、両国王共に個人的に親しい間柄らしい。

何やら昔あったようだが、教えてくれなかった。

そして何より、エーギル国王は戦争行為が嫌いらしく、それを避けるために友好条約を結んだらしい。

アークはその日、カルロスに命じられ、その使者を出迎えるという重要な役目を勤めることになった。

そんなわけで、来る予定の時間の三十分前から門の前で待っているのだが、五分を過ぎても来ない。

不審に思いながら首をかしげる。


「遅いなぁ。」


そんな呟きを漏らした直後だった。

ものすごい勢いで馬車がこちらに走ってきた。

何やら異常だ。


「なんだ?」


よく目を凝らして見ると、エーギル王国の小さい旗が見えた。

それだけではない。

後ろから迫っているのは山賊だ。

近づいてきたその集団に目にしたことのある山賊がいた。

カリンを襲っていたやつだ。


「あいつ…。懲りないなぁ。」


呆れたように呟き、アークはその集団に向かって走る。

すぐにその集団の前にやってきた。

そして馬車の操縦士にここは任せて逃げろ、そう言って山賊に向き直る。


「止まれ!!」

「!?」


あの山賊がこちらに気付いたようだ。

怯えた顔をしている。

その山賊に向かって笑いながらアークはこう言った。


「久しぶりだな。また俺とやるか?」

「とんでもねぇ。俺らこ、これで引きますんで。」


引き返そうとする山賊に向かってアークはこう言った。


「次誰かを襲ってるのを見たらただじゃおかねぇからな。」

「肝に銘じておきます!!」


そう言って馬車を追っていた時より、早く馬を走らせ、逃げて行った。

アークはそれを見届けると、城へ戻り、門の中に入っていた馬車のところへと向かう。

そこで操縦士と執事らしき人に声をかける。


「お怪我はありませんか?」

「はい。助けてもらいありがとうございます。」

「いえ。当たり前のことをしただけですので。」


執事らしき人が行儀よくアークにお礼を言うと、馬車の扉を開き、国王の娘を出そうとする。


「お嬢様、着きました。」


すると中から弱々しい声が聞こえてきた。


「揺られて気持ち悪い…。」

「どういたしますか?」

「ちょっと休ませて…。」

「わかりました。」


扉から離れる執事にアークは声をかけ、中をのぞく。

そこにはぐったりとしている少女の姿があった。


「大丈夫ですか?」

「申し訳ございません。どうやら酔ってしまったようでございます。」

「そうですか。」


それはそうだろう。

いくら王族の馬車だからと言って山賊に決して道路整備がしっかりしているとは言えない道路を物凄いスピードで走っていたのだから。

そこでアークはしばらく考え、自分の部屋に酔った時に飲むといい薬を持って来ようと思い、執事に声をかけていく。


「ちょっと待っててください。良い薬を持ってますから、取ってきます。」


アークは走って城に入って行き、誰も見ていないことを確認し、凄まじい身体能力であっという間に自室につき、薬を取る。

その薬はユニコーンからつくられた薬で、アークが山に住んでいた時に一度だけ捕まえ、売らずに自分のために取っておいたものだ。

それがこんなことに使えるとは思ってもいなかったが、持ってきてよかったと思いながら、5mある自室の窓から飛び降り、馬車のほうへ走っていく。


「お待たせしました。これを飲ませれば大丈夫です。」


瓶の中から一粒取り出し、執事に渡した。

すると執事の眼が驚愕なものに変わった。


「これはどうされたのですか?」

「自分で作ったものです。」

「そうですか。」


それだけ言うと中にいる国王の娘のところへ行き、薬を飲ませた。

すると中から少し短い青い髪をなびかせ、活発そうな少女が出てきた。

少女はアークの元へ歩み寄ると、頭を下げた。


「ありがとうございます。私はエーギル王国国王の娘のキリカ・エーギルと申します。」

「僕の名前はアークです。よかった。元気になって。」


すっかりと元気になっていたキリカと名乗った少女は、見違えるほど綺麗だった。

その後ろには先ほどの執事がいた。

その執事はアークに目を向け、口を開いた。


「失礼ですが、先程の薬、もしかしてユニコーンから作りましたか?」

「…隠しても無駄ですよね。そうです。」

「倒したのですか?」

「えぇ。一匹だけですけどね。」


なぜわかったのか、アークは疑問に思ったが、隠さずに答えた。

そうするとキリカとその執事は驚きながらアークを見ていた。

その目線が嫌でアークは話題を変えた。


「あ、案内いたします。キリカさんとえっと…。」

「申し遅れました、アーク様。私はキリカ様の執事をしておりますゲルダスと申します。」


ゲルダスは年齢としては三十代後半といったところだろうか。

だが、その落ち着いた口調と雰囲気だけを見ると五十代に見えてしまう。

そして背も高く、体は鍛えられているのが分かる。

しかし、顔は優しい笑みが常に浮かんでいる人だ。

アークはこの人のことを少しわからない人だが、気に入っていた。


「では、ご案内いたします。」


アークは城の中に入り、客間に案内し、そのまま去ろうとしたが。


「お前もここにいなさい。」


カルロスにそう言われてしまい、出て行かず、一番下座に座った。

席にはカルロス、カリン、ザキロス、キリカが座っていた。

ゲルダスはキリカが座っている席の後ろでじっと待機をしていた。


「キリカさん、よく来てくれました。大変でしたでしょう?」

「はい。山賊に追いかけられました。それで酔ってしまって。でも薬をもらったのでもう大丈夫です。」

「そうですか。それはよかった。」


いつものように優しく微笑み、カルロスはそう言った。


「キリカ、お久しぶりね。」

「えぇ。会えてよかった。」


キリカとカリンは仲が良いらしく、お互いに顔を合わせて笑いあう。

そんなキリカが隣に座る人を見て驚いた顔をした。


「あの…失礼ですが、あなた、ザキロスですか?」

「えぇ。そうです。」


ザキロスは頷くとこれまであったことを話した。

アークとの戦闘もすべて。

それを聞いていたアークは少し恥ずかしくなり、顔を赤くしていた。

キリカはその話を聞くとアークを熱のこもった瞳で見つめ、口を開いた。


「アークさん?」

「アークで構いませんよ。」

「では、アーク。私の夫になってくれません?」

「はい?」

「あなたの強さに惚れちゃったんです。ユニコーンを倒し、その上スヴァローグ家最強と言われたザキロスに勝つなんて。」

「許婚がいるのでは?」

「大丈夫です。お父様に許可はいただきますので。」


アークは頭が痛くなってきた。

と、ふとキリカの腕が目に入った。

そこには青の紋章の中に龍の頭が描かれていた。

彼女が水の龍の力を持っているものだったのだ。

アークはそれが気になり聞いてみることにした。


「キリカさん。」

「キリカでいいわ。」

「じゃあキリカ、その腕の紋章はもしかして…。」

「えぇ。これが何か?」

「いえ。」

「もしかしてもう私のことを思ってらっしゃるのですか?」

「いえ、あの。」

「あぁ。私、アークのためなら何でも差し上げます。」


そんな風に仲良くしているとカリンがアークを睨んでいた。

アークは何やらうすら寒いような感じがして、目をそちらにやるとものすごい勢いで睨まれていた。

すぐ目をそらしたアークだったが、その恐怖はなかなか消えなかった。

その恐怖を打ち消そうとしてキリカにその紋章が気になっただけ、そう言いたいのだが、聞く耳を持ってくれなかった。

そのため、この話し合いの中、ずっとカリンに睨まれっぱなしだった。


******************************


夕飯を全員で食べ終わったしばらくは話し合っていたが、アークは外へ出て星空を眺めていた。

その時だった。


「どうしたんですの?」


突然背後から声をかけられた。

大体誰かはわかる。

アークは振り返らずにその声の持ち主、カリンにこう答えた。


「なんでもない。ただ、星空を眺めていただけ。」

「そうですか。」


そう言ってカリンはアークの隣に立ち、一緒に空を眺めている時だった。

何やら騒がしい音が聞こえてきた。

すると。


「アーク!!」


勢いよく走りながらやってきたのはキリカだった。

彼女はアークに抱きつくと、カリンと目を合わせた。

その時、火花が散った気がした。


「私と見ましょ!!」

「え?」

「アークは私と見てたの!!」

「お、おい。」


二人はお互いに睨みあいながらアークを取り合っていた。

二人ともものすごい力でアークを引っ張る。


「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」


それに耐えられなかったアークの悲鳴が綺麗な星空に吸い込まれた。

この時、アークは思う。

あの平穏な森の中での生活に戻りたい、と。


今回はバトル展開がありませんでしたが、ご了承ください。

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