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七聖龍と僕との物語  作者: 陸奥 昴
七聖龍編
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第二話 赤き龍との出会い

アークは山を抜け、スヴァローグ王国が統治する街、コレイスに着いた。

コレイスは城の近くにあり、様々な代物が売っている活発な街だ。

そこには行商人や、この街にいる商人が使っている買い取り屋がある。

買い取り屋は彼らから品物を買い取り、それに見やった金を支払い、手に入れる。

手に入れた品物は様々なところへ売りに出したりしている。

アークはそこへと向かう途中だった。


「きゃあ!!誰か助けて!!」


声のした方を振り向くとそこにはいかにも悪そうな男が二人で一人のアークと同い年ぐらいの少女を強引に手を取り、どこかへ連れて行こうとしていた。

男たちは盗賊だろう。

面倒事は避けたかったアークだが、その少女と目が合ってしまった。

ため息をつきながら盗賊たちに近づいていく。


「あの。」

「あん?なんだてめぇは。」

「通りすがりの者ですがその手を外してもらいたいのですが。」

「てめぇには関係ねぇだろ!!」

「関係あるんですよ。助けを求められましたので。」

「正義の味方ごっこかよ!!」


アークをバカにしたように笑う盗賊たち。

ひとしきり笑った後、アークを見下すかのように見る。

だが、そこにあったのは殺気を含んだ顔だった。


「さっさと手を放せと言っている。」


盗賊二人はビビっていたが、威勢良く、アークに食いつく。


「お前なんかに言われても絶対離さねぇよ!!」

「そうか…。ならば実力行使でやらせてもらうぞ!!」

「ひっ…!」


盗賊は小さな悲鳴をあげ、固まっていた。

アークはまず、少女の手をつかんでいるやつの右手を取り、捻ってから投げた。

盗賊の一人は吹き飛び、壁に当たって気絶した。

その光景を見たもう一人の方は覚えてろ、そう言って気絶した一人を背負って逃げて行った。


「ふぅ…。」

「あの…。」

「怪我はないですか?」

「あ、はい。ありがとうございました。」

「ではこれで。」

「あの!!ついて来てくれませんか?」

「どこに?」


アークの質問を無視して歩いていく少女。

アークはやれやれといった顔をしながら後を追った。

数分間歩いて行くと少女が振り返った。


「絶対に驚かないでくださいね。」


そんな事を言われ、何も言えずにただ頷いた。

だが、薄々感づいていた。

少女が行こうとしているのはこの王国の中心にある建物、スヴァローグ家の城だ。

アークはこの少女が何者なのか、わかってきた。

スヴァローグ家には長男と長女がいる。

ということはこの少女が長女の可能性が高い。

その理由は、一つ、城に連れて行こうとすること。

二つ、左の手の甲にある紋章が赤色だから。

スヴァローグ家は代々火属性の力を宿した者しか生まれないらしい。

そして最後に来ている服だ。

その服は世界一美しいとされるシルクシープの毛でできているものだろう。

シルクシープの毛は王族の者しか買えないという、とても稀少価値の高いものだ。

かつて、アークも獲ったことはあるが、どの毛よりも軽く、肌触りもいいものだった。

それを買い取り屋で売ろうとしたのだが、売れなかった。

そこの店長に聞いた話によると城の中にシルクシープの毛を買い取る場所があり、そこで売ってほしいと言われた。

アークはそこへ行き、今の土地をもらった。

つまり、シルクシープの毛はお金ではなく、土地で交換される。

それほど価値の高いものだという。

と、そんなことを思って歩いているといつの間にか、城の門の前についていた。


「少々お待ちください。」


少女は礼儀正しく一礼していくと、中へ入って行った。

しばらくするとその少女がアークの元へ戻ってきた。


「お待たせしました。どうぞ中に入ってください。」

「あぁ。」


少女は再び頭を下げながら中に入るように促した。

アークは緊張を押し隠し、中に入っていく。

案内され、城の中へ入っていく。

中はとてつもなく広く、天井が空に届くような錯覚に陥る。

そして何より、埃一つない廊下。

きっとメイド達が掃除しているに違いない。

長い道のりを経て、ようやく目的地に着いたようだ。

少女は静かにノックをする。


「お父様、連れて参りました。」

「入りなさい。」


中からしっかりとした声が聞こえ、少女が大きい扉を開ける。

上座に座っていたのはこの国の支配者、現国王のカルロス・スヴァローグだった。

アークは間近で見たのは初めてだったが、あまり緊張はなかった。

その理由はカルロスが柔らかい笑みを浮かべていたからだ。

アークはカルロスに対して一礼した。


「失礼します。」

「君がカリンを助けてくれたそうだな。」

「いえ。僕は何もしていません。」

「まぁ、座りなさい。」

「はい。」


アークが座るとカリンと呼ばれた少女が中に入り、彼女もまた座った。


「まずは自己紹介からだったな。君の名前は?」

「僕の名前はアークです。」

「アーク君、娘を救ってくれてありがとう。改めてお礼を言うよ。私の名はもう知っているだろうがカルロス・スヴァローグだ。」

「よく知っております。」

「そうか。カリン、お前も自己紹介しなさい。」

「はい。わたくしの名前はカリン・スヴァローグと申します。先ほどは助けていただき、ありがとうございました。」


先ほどまでとは違う口調で驚いたが、城の中では丁寧な口調になるのかもしれないと思い、何も言わずにいた。

そんなことよりもなぜ自分がここに連れて来られたのかアークはわからなかった。

そんな彼の心を読んだのか、カルロスが説明を始めた。


「アーク君、君にやってもらいたいことがある。」

「なんでしょうか。」

「我が息子の鼻っ面を折ってほしい。」

「はい?」


あまりにも唐突なことでアークはカルロスの言っていることが理解できなかった。

カルロスの後を継ぐだろう息子のザキロス・スヴァローグ。

そんな彼は龍の力を持っているという。

そのため、自身の力を誇張しすぎており、やることなすことが無茶苦茶だという。

だが、なぜ自分の息子の鼻っ面を赤の他人に折らせるのかが分からなかった。


「あいつは今、調子に乗り、好き勝手やっておる。私がその心を折ろうと思い、以前戦ったのだが、私は負けてしまった。」


それを聞いて納得がいった。


「つまり、王様は赤の他人に皇太子の鼻を折らせ、自信をなくさせようと?」

「その通りだ。」


確かにそうした方がいい。

だが、相手はスヴァローグ家の皇太子。

魔力もアークよりもはるかに高く、さらには龍の力まで使える。

勝てるとしたらアンチマジックを使うしかない。

だが、ここで無属性なのが知れたら、再び襲われるという恐怖が頭をよぎる。

幼い頃の日々のように。


「僕には無理ですよ。」

「確かに今のアーク君なら無理だろう。だが、無属性のアレン・ドライグならば勝てるのではないか?」


カルロスがそういった瞬間、アークの顔が強張った。

その顔には殺気のこもった目があった。

カリンも驚いてアークの顔を見やる。


「なぜそれを?」

「私の父、前国王が君を追いかけていたからね。だが、私はそんなものには興味がない。君がもし勝ったならば他の王国に手出しできないようにしてやる。」


アークはその言葉にどれだけの信頼性があるのかカルロスの顔を見やる。

その顔には真剣なまでの思いと嘘偽りない澄み切った眼差しがあった。

それを見たアークに断る理由はなかった。

たとえ誰のためであろうとも自分の身が守れるならばそれでいい。

アークはそう思った。


「わかりました。やってみます。ただし勝てるかはわかりませんが。」

「ありがとう。」


表面上は諦めたような顔でアークはそのお願いを受諾した。

その返事を聞いたカルロスはにっこりと笑い、指を鳴らした。

それと同時に扉が開き、食事が運ばれてきた。

アークはこれが何なのか分からなかったが、カルロスに催促され、一緒に食べることになった。


「あの…紋章を見せていただけないかしら。」


一通りの雑談がすんだ頃を見計らい、カリンがそう言ってきた。

アークは黙って頷き、鍛え抜かれた上半身をさらけ出し、腕の包帯を解いた。

そこに描かれていたのは神々しいまでの龍だった。


「ほう…。」

「綺麗…。」

「誰にも言わないでください。」

「わかった。私たちだけの秘密としよう。」

「ありがとうございます。」


アークは包帯をし直し、服を着た。

久しぶりに他人に見せたのだが、反応が全く違った。

たいていの人は欲望の眼差しで見るのだが、この二人は珍しいものを見るような感じだ。

それはアークにとって初めてのことだった。

だから心が少し楽になった。

そうして食事は終わった。

その後、少しの間座っていたが、カルロスが立ち上がったところでアークとカリンが立ち上がる。


「ついて来てくれ。」


黙ってついていくとそこは広い庭に案内された。

庭というより、庭にある闘技場だが。


「頼んだぞ。」

「はい。やれるだけやってみます。」

「お気をつけて。」


アークは闘技場の真ん中へ歩いて行く。

その時だった。

炎の翼を羽ばたかせながら、アークが戦う相手、ザキロスがやってきた。

闘技場に降り立つと、カルロスにこんなことを言った。


「父上は堕落してしまいましたね。こんな、どこの馬の骨とも知らないような少年に助けてもらうなど!!」


カルロスを嘲笑う姿を見たアークはザキロスを睨みつける。

ザキロスはその視線に気付き、アークを見やる。


「小僧、なんだその目は?」

「あんたが許せないだけだ。」

「おい、口のきき方には気をつけろ。俺はスヴァローグ家の次期国王なんだぞ!?」

「だからなんだ?」

「あ?」

「あんたみたいなスヴァローグ家の恥みたいなやつが次期国王なんざ語るんじゃねぇ!!」

「貴様今何て言った?スヴァローグ家の恥?それは息子に負けたクソ弱い親父じゃないのか!?この世界は弱肉強食なんだよ!!」

「確かにこの世界は弱者を強者が食らう。」


ザキロスはアークのその言葉を聞き、満足げな顔をした。

だがアークはそこで終わらせるつもりはなかった。

そう。

この世界は弱者を強者が食らう。

でも…。


「だがな、親に敬意を払えねぇやつが偉そうに語ってんじゃねぇよ!!」

「小僧…喧嘩売ってんのか?」

「そのためにここにいる。」

「ふざけんなぁ!!」


何の合図もなしにザキロスは真っ直ぐに敵意むき出しのままアークに突っ込んでいく。

こうしてアークとザキロスの戦いの火蓋が切って落とされた。


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