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七聖龍と僕との物語  作者: 陸奥 昴
聖魔対決編
18/21

第十八話 鎮火


キリカは動かないリヴァイアサンを見て、勝ったのか、そう思っていた。

だが、その予想は外れ、ゆっくりと起きあがると、浮上し始める。


「なかなかやるようだが、詰めが甘いな。止めを刺さずに勝ったと思うなど…。それでも貴様、七聖龍か?」

「!?」


リヴァイアサンに言われた瞬間、キリカの心に迷いが生まれる。

自分自身でさえ、未だに七聖龍なのかどうか、よくわかっていないというのに。

キリカは戸惑っていた。

誰が見てもわかるほどに。

リヴァイアサンは陰湿な笑みを浮かべると、キリカに向かっていく。

今が攻め時だからだ。

戦場において必要なこと、それは常に平常心でいること。

リヴァイアサンはそれを分かっていても、キレてしまうのだが。

そしてもう一つ、それは何を言われても、動じないこと。

この二つは、似ているようで少し違う。

平常心でいるのは意外と簡単だが、知性を持つ者に何かを言われた時、動じない、これは難しいものだ。

よほど感情がないか、それとも割り切ってしまうか、そのどちらかだ。

今のキリカは、この二つの点を欠けさせていた。

その状態ならば、狙ってくださいと言っているようなものだ。

そのことにキリカが気づいた時にはもう手遅れだった。

リヴァイアサンの顎が、ガッチリとキリカを挟んでいた。

キリカは、かろうじて鎧で肉体へのダメージはなかったが、締め付けられるダメージがある。

苦しそうな叫びが口から洩れる。


「くぅぅぅぅ…。」

「貴様もその程度か。」


キリカの頭の中で、何かが弾けた。

急に視界が開け、興奮しているのか、落ち着いているのか分からない不思議な感覚に陥った。

今なら何でも出来そうな気がした。

キリカの両腕は、幸いフリーだ。

キリカは思考をめぐらす。

あっさりと結論が出る。

キリカは先の尖った氷の(つぶて)を、リヴァイアサンの顎の周りに出す。

これは水属性の上級魔法、ハーゲル・ディ・クーガー。

そしてそれを発射。

リヴァイアサンは痛みと筋肉が急に冷やされ、痛みで少し顎が開いたまま硬直した。


「あぁぁぁ!!」


悶え苦しんでいる中、キリカはするりと抜け出す。

その優雅さは人魚のようだった。

キリカはそのまま発射し続け、リヴァイアサンが湖底に沈むのを見届けた。

だが、まだ感覚的に根拠はないが、リヴァイアサンはまだ向かってくると思っていた。

その予感は当たった。

我を忘れたリヴァイアサンが突っ込んできた。


「許さぬ…。貴様だけはっ!!」


玉砕覚悟の突進を何とか紙一重でかわす。

だが、近くを通ったことによって水の流れが変わった。

キリカの体が持っていかれそうになる。

だが、何とか踏みとどまり、体勢を立て直す。

その時、リヴァイアサンと目があった。

その眼は血走り、怒りのこもった顔があった。

キリカはそれを見て戦慄した。

だが、負けるわけにもいかない。

キリカは仲間のことを思い、リヴァイアサンに立ち向かう。

両者ともに譲らぬ攻防を始める。

水中と思えないほど自由自在に動いている。

それはまるで、空を飛んでいるように。

これは七聖龍であるキリカと、六魔獣であるリヴァイアサンだからこそのものであり、常人には決して真似のできない攻防だ。

例え他の七聖龍でも、水中での戦闘は不得手だ。

だからこれは水龍、キリカの力だ。

近づいては離れ、再び近づいては離れの繰り返しではあるのだが、息の詰まるような攻防は未だ続いている。

空気が、いや、水の雰囲気が張りつめていく。

これが真の緊張感なのだ。

リヴァイアサンは七聖龍である彼女と戦えて嬉しい。

気性の荒いリヴァイアサンにとって戦闘とは、生き甲斐であり、唯一の娯楽なのだ。

だから強い奴とやれて嬉しい。

強い奴と命をかけあう勝負をするのは楽しい。

リヴァイアサンはそう考えながら、キリカと戦う。

だが、最初は拍子抜けした。

姑息な手を使って攻撃してきた。

それに、不意打ちばかりする。

リヴァイアサンは彼女のような戦い方は好きじゃなかった。

もっと肉体と肉体でぶつかり合う、ひりひりとした、それでいてどこか楽しいような接戦を望んでいた。

だが、彼女は違った。

でもそれが今となっては、楽しい。

だから全てを出してこいつを倒したい。

そう言う思いでここまで来た。


「もっとだ!!もっと俺を楽しませろ!!」


そう叫びながらキリカと死闘を繰り広げる。

キリカもそれに答え、真っ向から勝負を受けている。

今まで自分の戦い方をしていたため、こう言った真っ向からの勝負は苦手なのだが、いざやってみると楽しく、ヒリヒリ感、それらを感じることができ、自然と笑みが出てしまう。

こんな感情は初めてだった。

今まで六魔獣と戦ってきたみんなも、そんな風に感じたのか、そんなことを思ってしまった。

一進一退の攻防の中、両者ともに、引き下がらない。

キリカの戦い方が伸び伸びとしてきた。

きっとこれが、本来の彼女の戦闘スタイルなのだろう。


「捻り潰してあげる!!」


彼女らしい言葉が、その口から漏れた。

今の彼女には、縛るものが何もない。

自由だ。

自由の身となった彼女は、段々とリヴァイアサンを苦しめていく。

次々と繰り出される攻撃が、リヴァイアサンへと吸い込まれるように当たる。

リヴァイアサンは、彼女の豹変ぶりに驚いたが、それでもすぐに気持ちを切り替え、キリカについていこうとする。

だが、それは叶わなかった。

キリカの放ったアイスエッジがリヴァイアサンを切り裂く。

その攻撃を受け、沈んでいく。

リヴァイアサンの頭の中は負けたくない、それだけだった。

そしてその思いは形となる。

勝利を確信したキリカに、一筋の渦が衝突する。

何とか体勢を立て直し、リヴァイアサンの方へ目を向ける。

すると、リヴァイアサンを包むオーラが変わった。

この雰囲気、この魔力、間違いなく滅殺魔法。

湖面が震え、渦が各場所で発生し、湖底は揺れる。

キリカはそれを目視したのと同時に、自らも魔力を高める。

両者の魔力が高まっていく。

それと同時に湖も荒れていく。

だが、そんなことを気にしている場合ではない。

やらなければやられる。

そんなことが頭をよぎった。

だからキリカは、龍魔法を使う。

この街と、仲間のために。

そんな思いで魔力を溜めていく。

お互いにオーラが変わってきた。

リヴァイアサンは荒々しく、獰猛なオーラ。

キリカは静かな中に、荒々しいオーラだ。

似ているようで少し違う両者のオーラ。

それらが、溜まった。


「喰らえっ…。ワールドエンド!!」

「負けたりしない!!パーマネントグレイザー!!」


世界の全てを破壊するワールドエンドと、この世界に存在する全ての物を、永久に凍らすことのできるパーマネントグレイザー。

この二つが衝突した。

ほぼ互角の状態で魔法を出している。

互いに気持ちの乗っているため、一歩も引かない。

だが、優劣はそんなことに左右されない。

リヴァイアサンが少しずつだが、キリカを押す。

キリカも負けじと放ってはいるが、段々と押されていく。

リヴァイアサンの頬が段々とつりあがっていく。


「我の勝ちだ。」


そんな呟きを聞いた瞬間、キリカに語りかけるものがあった。

それはここにいるはずのない、アークの声だった。


「お前はこんなところで負けるやつじゃない。だから勝てっ!!」


キリカはハッとする。

リヴァイアサンの魔法が目の前に迫ってくるが、キリカは落ち着いて自分の魔法に集中する。

それが功を奏したのか、それとも、アークの声でなのかは知らないが、キリカの魔法の威力があがった。

形勢は逆転した。

押されていたキリカだったが、たちまち押す側となる。

リヴァイアサンの顔に焦りと怒りの表情が浮かぶ。


「ふざけるなぁ!!」

「あなたの負けよ。」


そう言うのと同時にリヴァイアサンに龍魔法が激突し、永遠に解けることなき氷となった。

キリカはその状態のリヴァイアサンに近づいていくと、アイスエッジで割った。

それは氷のように真っ二つに割れ、消滅した。

キリカは浮上していき、天を仰ぐ。

そして、後は頼んだわよ、アークに届くはずのないエールを心の中で送った。


**********************************


キリカとリヴァイアサンの決着がつく直前の頃、ガイア王国に到着した三人はイーゼルと合流し、次なる到着地、エーギル王国へ針路を変える。

その途中、とんでもない魔力を感知した。


「勝ったな…。」

「あぁ。あのキリカが負けるはずないからな。」

「そうだな。」

「さっさと勝者を迎えに行くぞ。」


口々にそう言い、急いでエーギル王国へ向かった。


************************************


キリカの決着と共に、アーク、カリン、ザキロスの三人はフェニックスの元へたどり着いた。

フェニックス、それは不死鳥であり、全身に炎を纏っているため、攻撃がしにくい相手である。

今までの敵とは違い、苦戦を強いられるであろう。

だが、だからと言って引き下がるわけにも、逃げ出すわけにもいかない。

守りたい物、守りたい人がいるから戦う。


「行きましょう。」

「はい。」


アークの合図と共にザキロスも後からついてくる。

フェニックスは、彼ら二人が初めて戦った場所にいた。


「遅かったな。」


ゆっくりとフェニックスがこちらを振り向く。


「待たせたようだな。だが、安心しろ。待たせた分、楽しませてやる。」


アークがそう言うとフェニックスは鼻で笑い、馬鹿にしたような顔を向ける。


「お前がか?」

「俺だけじゃない。」

「そうだ。私もいる。」

「そうか…。ならばかかってこい!!」


そう言った瞬間、辺りが火の海と化した。

それを見た二人は龍の鎧を展開する。

ザキロスは火龍の、アークは無龍の鎧を。

フェニックスは言葉を失った。

あの死んだはずの無龍がいることに。


「なぜだ?死んだはずでは?」


聞こえていないのか、二人は答えなかった。

フェニックスはボスである邪龍に無龍は死んだ、と聞いていた。

だから、六つの属性が揃った今この時に目覚めたのだ。

だが、目の前にいるのは七聖龍の火龍と無龍だ。


「くそっ…。嘘ついていたのか?」


フェニックスは考える。

だが、考えたところでこの状況が変わるわけもない。

ならばここで、証明すればいいだけだ。


「いくぞ!!」


アークが一気に間合いを詰める。

殴りにかかったアークを避ける。

だが、その後ろにいたザキロスのマグマブレイドによる斬撃は避けることができなかった。

体が真っ二つに切り裂かれるが、すぐに修復される。

さすがに不死なだけはある。

簡単には倒されてはくれないらしい。

それを再認識したアークとザキロス。

だが、立ち止まってはいられない。

前に出なければ倒せない。

だからこそ、前に出る。

そう自分に言い聞かせてアークは前に出る。

仲間のため、世界のため、何より、自分のために。


**********************************


邪龍復活と、その力を取り込もうとしているジグナスは、扉が少し開いたのを見て、笑みを浮かべる。

扉に歩み寄り、無理矢理に扉を開く。

そして、ジグナスはおもむろに、邪龍を引きずり出すと、強制的に魔法陣の中央にやる。


「ついに…、ついに私の夢が…。」


その眼はすでに理性のかけらもなかった。

そこにあるのはただ、この世界を滅ぼすことを考えているだけだ。

そして、契約の言葉、いや、呪文というべきだろう。

それを詠唱し、自分のものとした。

ジグナスは狂ったかのように笑う。


「これで…。これで私の夢が叶う!!早く私の元まで来い。七聖龍!!」


両手を広げながら、高笑いをする。

このことを七聖龍たちは察知していた。

だが、まだフェニックスが倒せていないため、向かうことができなかった。

しかし、戦うのも時間の問題だろう。

それにしても、これから起きることは誰が予想できたのであろうか。

いよいよ、始まりと、終わりの両方が起こる最終戦が始まろうとしている。


もうそろそろ、最終戦となります。

フェニックス戦が終わればそうなります。

この小説も残りわずかとなりました。

最後まで見て行ってくれると嬉しいです。


最後までお楽しみに!!

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