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七聖龍と僕との物語  作者: 陸奥 昴
聖魔対決編
13/21

第十三話 地獄の番犬


ゲイルスは王国内に着くと違和感を覚えた。

街も、そして城の中も不気味な程静まり返っていた。

ミレウスがペガサスに勝ったというのに、ゲイルスは険しい顔をしている。

ゲイルスは城の中に入ろうとする。

だが、前から何者かが攻撃を仕掛けてきた。


「誰だ!!」


ゲイルスは魔法が飛んできた方を見る。

だが、そこには誰もいなかった。

気のせいかと思ったが、違う。

誰かに見られている。

ゲイルスは気付かないふりして城門をくぐる。

くぐり終えた瞬間、門が勝手に閉まり、逃げられないようにされた。

ゲイルスは険しい顔をしながら正面を射貫く。

そこにいるであろう何者かに声をかける。


「おい。これはどういうことだ?」


声をかけると体の奥から震えるような笑い声が聞こえた。

ゆっくりとゲイルスに近づいていく。

やがて、目視できるようになり、ゲイルスは驚く。

出てきたのは人ではなく、六魔獣の一角、ケルベロスだった。

三つの頭を持ち、首には首輪が付いており、そこから千切れた鎖が伸びていた。

体は闇よりも黒い、漆黒。

その体に真っ赤なラインが流れている。

その赤は鮮血の色に似ていた。

足の先には鋭い鉤爪、鋭い牙、何かを掴めそうな尻尾。

そんなケルベロスから放たれるオーラは禍々しかった。


「お前…ケルベロスだな?」

「そうだ。」


ゲイルスの問いに肯定するケルベロス。

それを聞いて、ゲイルスは龍の鎧をまとう。


「やるのか?」

「あぁ。お前を倒さないとダメなんだ!!」


ゲイルスはケルベロスへ肉薄する。

ケルベロスは後ろへ下がり、逃げる。

そう思ったのだが、ケルベロスはそのままゲイルスに向かっていく。

敵を翻弄し、食いつくす、それがケルベロスの戦い方だ。

ゲイルスはケルベロスの突進をもろに受け、城壁まで吹き飛ぶ。


「弱いな。」


鼻で笑いながらそう言った。

ゲイルスはその言葉を聞いて立ち上がる。


「誰が弱いって…?」


ゲイルスはそう口にするとブラックシーイングを発動させる。

だが、ケルベロスには効かなかった。

彼も闇の属性。

暗闇の態勢は出来ているのだ。

暗闇の中で二人は激しい攻防を繰り広げる。

ゲイルスはファントムラケルタを手に持ち、切りかかる。

ファントムラケルタ、闇の上級魔法の一つだ。

この魔法は敵に幻影を見せることのできる武器の一つだ。

常に魔力を使わなければならないため、魔力が強い者でないと使えない。

ケルベロスは彼に対抗するため、尻尾に剣を持つ。

それはどす黒いオーラを放っており、相手に恐怖を与えられる。

さらに、この剣は鞭のようになり、遠距離攻撃も可能だ。

ゲイルスはその攻撃に苦戦していた。

だが、守ってばかりもいられない。

そのため、ゲイルスから向かっていく。

だが、そのたびに鞭で攻撃をしてくる。

段々とゲイルスの顔が険しくなっていく。


「どうした?」


嘲笑うかのようにケルベロスが聞いてくる。

ゲイルスはケルベロスを睨みつけると、ファントムラケルタをしまう。


「何をしている?」


武器をしまった、ゲイルスを見て少し驚くケルベロス。

ゲイルスはそのまま突進していく。

だが、ケルベロスは剣を振り上げると、そのままゲイルスに切りかかる。

ゲイルスはそれを危機一髪のところで避け、ケルベロスの体にパンチを入れる。

ケルベロスは余裕の笑みを浮かべたが、その瞬間、膝を折って苦しがる。


「何をした!!」


ケルベロスがゲイルスに目をやると両手に鉤爪が付いていた。

その武器の名はポイズンクロー。

闇の最上級魔法の一つ。

魔力を込めた毒を相手の体内に放つことで、どんな相手にも効く毒を作ることができる。

この毒は、相手が苦手、もしくは相手の弱点のもので作られており、発動した者はそれを瞬間的に生成しなければならず、難易度の高い魔法だ。

今回の場合はケルベロスの弱点である光の成分を含んだ毒を体内に放った。

効果あったようだ。

ゲイルスは再び、ケルベロスに迫る。

ケルベロスは鞭で牽制し、近付けさせないようにする。

それを避けながら少しずつ近寄っていくが、鞭が襲いかかってくる。

ポイズンクローで切り裂こうとしたが、金属音が鳴るだけだった。

どうやらこの鞭は剣と同じ材料の金属で作られており、切ることは不可能だろう。


「ちっ。」


思わず舌打ちをしてしまった。

ケルベロスはふらふらと立ち上がる。

その口元には微かに笑みが浮かばせている。

ゲイルスは眉間に皺を寄せ、ケルベロスを睨む。


「何を笑っている?」

「面白いからさ。」

「何?」

「こんな強いお前を倒せるんだからな…。」


そう言うと今度は、誰が見てもわかる笑みを浮かべると、ゲイルスに迫り、剣を振り上げる。

ゲイルスは不意を突かれ、薙ぎ払われる。

そのまま吹き飛び、地面に叩きつけられる。

ゲイルスが起きる前に、ケルベロスは黒い弾丸を口から放ち、ゲイルスに当てる。

再び人形のように吹き飛ばされる。

姿勢を整え、立ち上がるとゲイルスの方が攻撃に出る。

後ろ宙返りをしながら、闇の上級魔法、ディメンションカットを足から繰り出す。

ディメンションカットは再生できないように全ての次元から物体を切る魔法。

ケルベロスはその魔法を剣で受け、ゲイルスを目で追うが、見つからない。

ゲイルスは剣で受けた時できる死角を瞬間に狙い、中級魔法、シャドウチェイスで影の中に潜り、ケルベロスの腹の下まで来ていた。

そして、そのまま突き上げるように飛び出し、ポイズンクローで殴る。

ケルベロスは苦しそうにしている。


「貴様…。」


ケルベロスの空気が変わる。

ゲイルスの脳にある警報が鳴り響く。

この魔力は尋常じゃないと。

この時、ゲイルスはハッとする。

ミレウスが戦っている最中にこのような魔力を感じたことがあった。

あれは滅殺魔法を繰り出した時だ。

ゲイルスは対抗するべく、自身の魔力も上げていく。

地面がひび割れ、風が吹き荒れる。

それと同時に、周りの者が恐怖するような負の魔力が発散されている。

そして。


「いくぞ。」

「来るなら来い。終わりにしてやる!!」


仲間のため、何より、国民のため、負ける訳にはいかない。

ゲイルスは龍魔法を放とうとしたその時だった。

突如、はるか上空から一筋の漆黒の矢がケルベロスを貫き、葬り去った。

そして、その魔法の主であろう人物の声が聞こえた。


「さっさと殺せって言ってんだろうが。全く…こののろまが。」


ゲイルスはその声に聞き覚えがあった。

それは、古くから一緒に住んでいて、自分のことを可愛がってくれた人物、ジグナス・チェルトボーグだ。


「ゲイルス…悪いがお前にはここで死んでもらう。」


ゲイルスは奈落の底に落ちた気分だった。

何となく勘付いてはいた、だが、こうやって直接的に言われると裏切られた気分になる。

実際、裏切られたわけだが。

ジグナスは薄気味悪い笑みを浮かべながらゲイルスを見ていた。

その笑みを見た瞬間、全てを思い出した。


**************************


これは、まだゲイルスが幼かったあの頃、ジグナスとゲイルスは母親を失いつつも幸せな生活を営んでいた。

はずだった。

ある時、ジグナスが一番信頼していた側近がジグナスの母親を毒殺した、そう言う真実を聞いてしまった。

それから、ジグナスは変わってしまった。

何かに取りつかれたかのように暴走し始めた。

暴力と殺戮による政治。

さらには、自分の部下にも手を下す始末。

ジグナスの暴走は止まらず、他国を侵略するために攻撃を始めたり、怪しい書物を持ち、禁止されている魔法を調べたり、色々した。

その結果、城下町、城の内部、全てが活気をなくし、最悪の状況になった。

ゲイルスはそんな彼を見て恐怖した。

だが、自分がいなくなってしまえば、さらに彼がおかしくなるだろうと思い、ジグナスにぴったりとついていた。

いつもジグナスはゲイルスの顔を見るたび、おかしくなる前の優しい顔に戻る。

だが、それは演技であったのだ。

ある日、ジグナスに見せたい物があり、彼の部屋に行ってノックしようとした時に、中で話し声が聞こえた。

それを聞いてしまった。


「ゲイルスは私の捨て駒にすぎない。必要になったら使い、不必要にあれば殺すまでのこと。」

「あんたいい性格してるよ。」


この時に話していた相手は、邪龍の使い魔だ。

ショックでしばらく動けなかったゲイルスはジグナスが部屋から出ていくことに気付かなかった。

ゲイルスは彼に見つかると、頭を鷲掴みにされ、部屋に強引に入れられた。


「全部聞いたのか?」


殺意にも似た感情の籠った視線を浴びせられ、声を出せずにこくりと頷いた。

ジグナスはそれを聞くや否や、顔面へ蹴りを入れる。

そして、気が済んだのか、髪をつかみながら、顔を起こすと、こう言った。


「死にたいか?」


ゲイルスは首を横に振る。

ジグナスはそんな彼を見て嫌らしい笑みを浮かべてこう言った。


「なら、俺のために働いてもらおう。」


そういった瞬間、ジグナスは記憶改ざんと、精神支配魔法、忘却魔法をかけた。

その結果、ゲイルスはジグナスの思いのままに動く操り人形と化したのだ。

そして今に至る。

ゲイルスにかけられていた魔法は全てヴァニシングドライヴで消えたが、それが発動される瞬間に、ジグナスは忘却魔法を開放していたのだ。

そのため、ゲイルスは何も覚えていなかった。

だが、深層心理にまでの記憶までは消せなかったらしく、思い出す可能性が高かった。

そのため、ゲイルスを抹殺しようとしたのだ。


****************************


全てを思い出したゲイルスは憎しみの目で彼を見る。


「あんた、何をしているのか、わかってんのか?」

「あぁ。私はこの世界を滅ぼすためにここにいる。邪龍の力を手に入れるためにな。」


ゲイルスはそれを聞き、怒りがこみ上げてくる。

怒りのせいか、はたまた別の理由かはわからないが、ゲイルスの魔力が上がっていく。

ジグナスを見る目に殺気がこもっているのは言うまでもない。

その視線に見つめられても漂々としているジグナス。

まるで、お前には俺は殺せない、そう言っているようだ。

ゲイルスは魔力を高めると、龍魔法を発動させようとする。


「その程度か。」


そう呟くとジグナスはため息をつき、腕を振り上げる。

すると、漆黒の柱が勢いを増しながら、ゲイルスに伸びていく。

闇の封印魔法、ラストジャッジメント。

封印魔法とは、危険すぎる魔法として、滅殺魔法と同じく使用禁止に指定されている魔法だ。

だが、滅殺魔法と違う部分は、封印魔法は封印されているのだ。

封印されている理由は二つある。

一つ、滅殺魔法よりも安全で敵を一掃出来てしまう威力を持つため。

二つ、魔力が少ないものでも使用可能であり、魔力に関係せず、一定の破壊力を持つため。

そのために、封印を解いたもの、封印魔法を使った者は、各国で厳しく罰せられる。

国によっては死刑という国もある。

この魔法、ラストジャッジメントはその封印魔法の一つであり、敵が死に至るまで、苦しめながら徐々に徐々にダメージを与える。

それだけではなく、術者以外の周りにある生命体の生命力を奪ってしまう。

そのため、封印されたのだ。

ゲイルスはこの魔法を知らなかった。

そのため、避けることもままならず、直撃してしまった。

ゲイルスは悲鳴を上げながら、もがき苦しむ。

それを見ながらジグナスは笑い声をあげる。


「最高だ!!この悲鳴、苦しみ。もっと俺を楽しませろ!!」


ジグナスの眼は完全に壊れていた。

我が子を手にかけているにもかかわらず、躊躇いも何もない。

その姿は悪魔だった。

ゲイルスは苦しみながらも龍魔法を発動させる。


「ヘルフレイム!!」


黒き炎がジグナスの魔法を焦がし、彼へ迫る。

だが、ジグナスはこれを避けると、再び腕をかざそうとするその時だった。

どこから現れたのか知らないが、ゲイルスを守るように国民が囲んだ。

彼らは協力して、町に擬態しながら隠れていたらしい。

そんな彼らはジグナスの動きを封じている。

それに地面に何か書いている。

ゲイルスはこれが何なのか分かった。

これは移動するための魔法陣だ。

魔法陣を書き終えるとゲイルスを運び、転送しようとする。


「お前ら?」

「後は我々にお任せしてください。この国を再建できるのは、ゲイルス様だけです。どうか、生きてください。」

「ダメだ…。お前らも一緒に逃げよう。」

「お心遣い感謝します。ですが、我々はゲイルス様のために、命をささげる覚悟で来ました。今更立ち去れません。」

「だからって…。」

「心配ございません。我々も時が来たら逃げます。」

「絶対に…絶対に逃げて来いよ。そして私と共にこの国を再建しよう。」

「わかりました。では、後ほど。」


彼らを束ねているであろう一人の若者はそう言うと、ゲイルスを転送した。

ゲイルスは涙を流しながら転送された。


「ゲイルス様のために、何としてでも押さえるぞ!!」


士気を上げるために先程の若者が声を張り上げる。

それに答えるように骨髄まで震える叫びを他の者も張り上げる。

彼らの他の国民は全て、ゲイルスと同じ場所に転送している。

彼らは皆、ゲイルスにこの国を託し、ジグナスとの闘いに臨むのであった。


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