第十一話 決戦
六魔獣を追いかける七聖龍たち。
彼らは自分の国を守るため、必死に戻っていく。
そんな中、自国に最初に着いたのは、チェルトボーグ王国にもっとも近いヘイムダル王国のミレウスだった。
ミレウスは城よりもまず、城下町を見る。
どこも破壊されたり、襲われたりしていないようだ。
ミレウスは城の反対側、城下町もない方へ行くとそこではミレウスの父、レイゼルがペガサスと交戦していた。
だが、レイゼルの方が防戦一方でいつ終わってもおかしくなかった。
ミレウスはそんな状況を見て、龍の鎧をまとうとライトニングアローを放ちながらレイゼルの元へ走る。
「父上!!」
「おぉ。来てくれたか。」
喜びの声を上げるレイゼルだったが、緊張が解けたのか、へたり込んでしまった。
ミレウスはそんな彼を見て、感謝の気持ちを伝える。
「ありがとうございます。父上は下がっていてください。」
「任せたぞ。」
「はい。」
ミレウスはレイゼルが去っていくのを見届け、ペガサスに鋭い眼光を向ける。
「さぁ、やろうか。」
そう言ったミレウスに対し、ペガサスはこう答える。
「いいだろう。退屈だけはさせるなよ。」
そう言うとペガサスは大空へ舞い上がり、空中ですばやく動く。
ミレウスは追うのがやっとといった感じでしばらく見ていたが、目がその速さになれるとペガサスについていく格好で舞い上がる。
そして、両手にライジングブレイドと、ホーリーランスを持ち、ペガサスに切りかかる。
ペガサスはそれを難なくかわすと、頭のところから魔法陣を出し、光の光線を出す。
それは真っ直ぐに飛んで行く。
ミレウスはそれをホーリーランスで突く。
この魔法は人間が使えるものではない。
そう、この魔法はペガサスにしか使うことができない魔法だ。
技の名前も、対処の仕方もわからない。
まさに未知数な魔法なのだ。
だが、そんな状況にもかかわらず、ミレウスは笑っていた。
「おもしれぇ。」
ミレウスの強いところは魔法を使った攻撃や、防御ではなく、どんな戦いにおいても常に笑っていられるところだ。
もちろんミレウスは死ぬのが怖い。
だが、ミレウスは自分が死ぬ時は敗北した時だけ、そう心に誓っていた。
それでも、アークに負けたのだが。
そんな彼を見たペガサスは疑問をぶつける。
「なぜ笑っていられる。」
「決まってるだろ。楽しいからさ。」
そう、それ以上の言葉なんかいらない。
戦うのが楽しい、それだけだ。
ミレウスが戦いを好きな理由、それは幼い時、父であるレイゼルと見たヘイムダル王国内で行われた魔法演武、これがわくわくし、見ていておもしろかったからだ。
そして、大きくなり、自分も魔法演武に出、その時の勝利の味、それを味わってしまったため。
そんなちっぽけなことだが、ミレウスにとってその出来事は大きかった。
それに、もともと好戦的な性格をしていたらしい。
そのため、戦うのが楽しいと感じるのだ。
「いくぞ。」
ミレウスはそう呟くと、ペガサスに迫っていく。
それを見たペガサスは再び頭に魔法陣を出す。
ミレウスはそれもお構いなしに、両手に持つ剣と槍を振り上げる。
それは吸い込まれるようにペガサスの頭を切るはずだった。
だが、ペガサスの頭にユニコーンのような角でその攻撃は弾かれた。
「甘い。そんなに簡単にやれると思ったのか?」
ペガサスはそう言うとミレウスは両手に持つ武器を合わせ始める。
「思ってなかったさ。だから、俺はさらに強くなる!!」
二つの武器は共鳴し、光り輝く。
光の塊となった二つはフルフェイスの兜となり、ミレウスの魔力が上がる。
「ほう…。」
ペガサスはそれを見て、声を上げる。
それもそのはず。
こんなぶっ飛んだことをやろうとするやつなんていないだろうから。
全身に龍の力が加わったことにより、魔力、身体能力、共に強化された。
ミレウスは体の奥底から溢れてくる力に驚きつつも高揚感を覚えた。
「まだまだこれからだ…。そうだろ?」
「あぁ。」
互いに天空へ飛び上がり、空中戦を繰り広げる。
互いにぶつかっては離れ、再びぶつかる。
瞬間しか見えないため、周りの人にはパッパッと光が弾けて見えているだろう。
それほどまでに二人は速い。
時に魔法を使い、時に肉体で攻撃し、そんな切迫した攻防が続く中、ミレウスは兜の中で笑っていた。
それはペガサスにも移り、その顔に笑みが映る。
二人は心の底から楽しんでいる。
「これだ…この一進一退の攻防がしたかった…。封印されているときはつまらなかったからな。」
ペガサスはそう呟く。
そう、ペガサスはあの邪龍誕生と同時に誕生し、龍の力を持つ者たちと戦ってきた。
その時、戦えることを楽しいと感じた。
だが、今日ほど楽しいと感じたことはない。
今までも戦ってきた。
だが、楽しいのだが、何か物足りない。
そう感じていた。
その時には何が足りないのか分からなかった。
だが、目の前にいる龍の力を持つ者と戦ってみるとよくわかった。
今まで物足りなかったもの、それは一歩間違えれば死ぬこのハラハラできる戦いだ。
それが今までできなかった。
そのため、ペガサスはどこかあきらめていた。
だが、今回の龍は違う。
このハラハラした戦いができる。
ペガサスはいつしか絶対に勝ちたい。
そう思い始めていた。
邪龍の復活の手伝いなんかのためではなく、個人的に勝ちたい。
今までそう感じたことはなかった。
それもこれもすべては目の前にいる男のせいだ。
楽しい、この男に勝ちたい。
そんな欲望にも似た気持ちでミレウスと戦うペガサス。
「楽しいなぁ。」
「あぁ。」
ミレウスも同様に七聖龍の仲間のためではなく、このペガサスに個人的に勝ちたい、いや、それすらも思わず、ただ、この強い相手を倒したい、その一心でペガサスと一戦交える。
この二人の戦いは見ている方は心臓に悪い。
レイゼルが様子を見に来てみると、そこにはぎりぎりの攻防をしている姿があった。
一歩間違えれば死。
そんな攻防だ。
それに速すぎる。
目で追うのが不可能だ。
レイゼルは二人の気配、魔力をもとに見ることにした。
「すごい…。」
この速さは風属性の飛ぶスピードと同じ、いや、それ以上だ。
見ていると風属性の戦いではないのかと勘違いしてしまう。
だが、違う点は魔法の使い方だ。
遠距離も、近距離も使う光属性。
一方、風はどちらかといえば遠距離だ。
その点を見れば違う。
だが、初めて見るやつにとってはわからないだろう。
そもそも魔法を使ったのかどうかすら分からないのだから。
そうやって考えていると空中で大きい爆発音と同時に二人が落ちてくる。
お互いにボロボロだ。
それでも立ち上がる。
その顔は見えないが楽しんでいるのが分かる。
レイゼルはそれを見た瞬間、戦慄を覚えた。
「すげぇ…。」
そんな言葉が漏れた。
「楽しいなぁ。」
「そうだな…。」
「もっと来いよ。」
ペガサスはその言葉を聞くと魔法陣を出し、あの光線を放つ。
ミレウスはそれを見ると右手を掲げ、同じく光の光線を放つ。
光の最上級魔法、ライトニングバスター。
お互いに光線を出すが、その性質は全く違う。
神々しく、美しい方がミレウスの放つ光線。
禍々しく、恐怖を覚える光がペガサスの光線。
この対照的な光線がぶつかる。
力が均衡しているのか、真ん中の方で動かない。
だが、しばらくして変化が見られた。
ミレウスが押されているのだ。
そして段々とペガサスの光線が迫っていく。
ミレウスはまだあきらめていない。
だが、その顔からは笑みが消え、苦しそうな顔に変っていた。
そして、ペガサスの光線が目の前に迫った瞬間、ミレウスは心の中でこう思う。
負けてしまうのか、と。
その時だった。
何者かに、名前を呼ばれるのと同時にペガサスの光線がミレウスに直撃し、吹き飛んで行く。
見ていたレイゼルも敗北した、そう思った。
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ミレウスは真っ白の世界で目を覚ました。
「ここは…?」
これが死後の世界なのか、そう思った。
だが、後ろから何者かの気配を感じ、振り返る。
そこには光に包まれた龍がいた。
ミレウスは驚き、何も話せなかった。
「お前がミレウス・ヘイムダルか?」
「……。」
口をパクパクさせるだけで何も答えられない。
そんな彼を見た龍は衝撃のことをミレウスに言った。
「我が名はアヴァロン。光の龍皇なり。」
「!?あんたが…?」
「その通り。」
ようやく声が出たミレウスは素っ頓狂な声が出てしまった。
だが、そんなことより、今気になっているのは目の前にいるアヴァロンのことだ。
四本の足でしっかり立ち、首は長く、翼もある。
尻尾も長く、全身が光っている。
「なんで…。」
「お前に忠告しにきた。お前は自分のために戦いすぎる。仲間のために戦おうとは思わないのか。」
「……悪いのか?」
「あぁ、悪い。」
「なんで!?」
「お前には覚悟が足りない。仲間のために戦うのなら、お前は覚悟をもって戦うだろう。だが、一人ならば負けるのは自分だけで済む。」
「言ってることがわかんねぇよ。」
ミレウスはそう言いながら講義する。
「大体、あんたに関係あるのか?」
「ある。」
あっさりと肯定された。
そう、ミレウスとアヴァロンは関係が深い。
ミレウスが力を失った時、アヴァロンもなくなるのだから。
「それに、やつは…邪龍は倒さなければならない相手だ。
「どういうことだよ。」
アヴァロンは説明を始める。
かつて、龍がこの世界を跋扈していた時代があった。
七聖龍と邪龍は昔、仲が良かった。
そう、皆で魔獣を狩り分けて食べあったりもした。
いろいろなことをしていた。
だが、ある日を境に突然邪龍は姿を消し、七聖龍たちは探し求める。
だが、情報が全くなく、どうしようか分からなくなった。
それから数年後、邪龍は突如として現れ、町を破壊しつくしていく。
七聖龍たちはなぜ、と彼に訴えかける。
だが、何も答えず、ただ黙って攻撃してきた。
それからというものの、七聖龍たちは彼を封印し、自分たちが死ぬ前に人間の体に宿るということを決めた。
それからだ。
七聖龍が人間に宿るようになったのは。
そして、七聖龍がそろったときに邪龍が目覚め、戦い、また封印する。
それの繰り返しだった。
だが、ようやく、邪龍を抹殺できる時が来た。
アーク、ザキロス、キリカ、レイネス、イーゼル、ミレウス、ゲイルス。
この六人が七聖龍を宿したからだ。
彼らは今までの宿り主よりも断トツで強く、全員龍魔法を制御できる。
七聖龍たちは、今回が最後であると覚悟を決めていた。
いや、最後にする覚悟で仲間と一緒に戦うことを決めた。
だから、関係ないことはないのだ。
その説明を聞いたミレウスは口元に笑みを浮かべる。
「そうか…。じゃあその覚悟とやら見せてやろうじゃん。」
「よく言った。ならば、我が全ての力を受け取れ!!」
アヴァロンはそう言うと光の粒となり、ミレウスの胸に入っていく。
その瞬間、ミレウスと共鳴し、光り輝く。
その光がやんだ瞬間、胸には黄金の宝玉が埋め込まれていた。
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ペガサスは倒れて動かないミレウスに歩み寄り、魔法陣を出し、そこから剣を出す。
「面白かったぞ。だが、この勝負は私の勝ちだ。」
そう呟きながら、ペガサスは頭にある剣を振り上げ、下に振り下ろす。
ペガサスはこの時、これから起こるとんでもないことなど予想していなかった。
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その頃、他の国では龍の力を持つ者が返ってくるまで時間稼ぎとして六魔獣と戦っている。
だが、そう長くは持たない。
国王たちは彼らに早く戻ってきてほしいと願いながら戦っていた。
そんな彼らは、アーク、ザキロス、カリンは馬車を駆って急いで帰っている。
残りは一時間ぐらいだろうか。
キリカも急いではいるが、それぐらいはかかってしまう。
イーゼルも馬に乗ってはいるが、後三十分というところでゴブリンの群れに遭遇し、逃げようにも逃げれず、交戦していた。
レイネスは空を飛んで王国に言っている途中。
ゲイルスは歩いて戻っているが、道端でスケルトンに会い、足止めを食らっている。
それぞれが胸の中で自国の安全を願いながら戻っている。
「間に合ってくれ。」
切羽詰まったようにそれぞれが口にする。
そして同時に今戦闘中のミレウスに応援の言葉を向ける。
「勝てよ…。」
今戦っているのかはわからない。
でも、何となく直感が彼が戦っていると思う。
勝てよと言ったが、他の者はミレウスが負けるだなんてことは微塵も思っていない。
なぜならあれだけ強く、戦闘好きなものは他にいないのだろうから。
この時の彼らは、今ミレウスがピンチなのを知らなかった。
そしてそれと同時に覚醒したこともまだ知る由もない。




