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七聖龍と僕との物語  作者: 陸奥 昴
聖魔対決編
10/21

第十話 七聖龍の会合


一番最初に会議場に着いたのは闇龍のゲイルス。

次いで火龍、ザキロス、無龍、アーク。

そしてその付き人のカリン。

しばらくはその四人で無言のまま待っていた。

アークたちが着いてから一時間後、イーゼルが到着した。

その十分後にキリカ、そして母国に一旦帰って国王と話をしていたレイネス。

最後に集合時間の五分前にミレウスがやってきた。

どうやら、職務に追われていたらしい。


ここはチェルトボーグ王国辺境の地、ダウラス。

そして今、会議が行われようとしているのは、邪龍の封印地の祭壇。

そこに大きい円形の机があり、椅子が七脚ある。

七人はそこへ座る。

並んでいる順番は中央から右へ、アーク、ザキロス、レイネス、イーゼル、ゲイルス、ミレウス、キリカ。

カリンはアークの後ろにそっと立っている。

会議しているのが祭壇なため、封印地は、と思う人もいるだろうが、封印地はアークの後ろにある、無駄に大きい建物がそうだ。

建物の大きさは大体10m程度で、古めかしい門には魔力の籠った鎖が、頑丈に閉じられていた。

そこから、時折、ぞっと寒気がするような邪悪な気配がする。

おかげで全く魔物がいない。

そのため、魔力の壁で会議場を包まなくて助かっている。


「さて、皆さんお揃いのようですのでこれから緊急会議を始めたいと思います。」


最初にアークが会議の初めの音頭をとる。

全員がアークを見つめる中、彼は堂々と今回の会議の内容を話す。


「今回、皆さんが集まってもらった理由の一つは、邪龍のことをどこまで知っているのか、倒す方法。もう一つはこれからどうするか、この二つです。」


アークは立ち上がり、邪龍のことを話し始める。


「邪龍は、この世に破壊と絶望をもたらす七聖龍の天敵ともいえる存在です。そして何より、七聖龍がそろった時、封印は解け、再びこの世を襲う。これが大まかな邪龍の話です。皆さんは知ってますね?」


アークが尋ねると一同に首を縦に振る。

どうやらそれぞれの国王がそれを話してくれたようだ。

だが、ここからは皆が知らないこともあるだろう。

いや、それはない。

全ての国王が関わっているのだから。


「そのことを各国の王は隠したのも知ってますよね?」


その質問に対しても同じでそれぞれが首を縦に振る。

ではこの先はどうだろうか。


「邪龍が復活する時、それと同じくして復活する六魔獣をご存知ですか?」


この質問は誰もが驚きを隠せなかった。

イーゼルがいきなり立つと、アークに質問を投げかける。


「それは何ですか!?」


アークはここで昔読んでもらったことのある本の一節を言う。


「この世界に再び、邪龍が目覚めしとき、火、水、土、風、闇、光を司りし六体の眷獣が邪龍と共に目覚めるだろう。これは僕が幼いときに聞かされた本の一節です。」


アークはさらに詳しく、六魔獣の話をする。

六魔獣は邪龍が目覚め、力を蓄えるための時間稼ぎだというが、その強さは邪龍に匹敵するとまで言われている。

その六体は司る属性があり、同じ属性の国へ行くのだという。

その六体を紹介していく。


六魔獣の火を司りし、不死の鳥、フェニックス。

炎に体を包まれ、さほど攻撃は強くないが、何度も蘇る能力を持つ。

次の六魔獣は水を司りし、龍の如く荒れ狂う大蛇、リヴァイアサン。

龍の如く堅い体は全ての攻撃を撥ね返す。

さらに、とても好戦的で、獰猛。

一度暴れれば、倒されるまで暴れ続ける。

次は、土を司りし暴れ牛、ミノタウロス。

牛頭人馬の姿をしており、その強靭な肉体から繰り出される攻撃はすべてを破壊する。

風を司りし獰猛な四足鳥、グリフォン。

上半身は鷲、下半身はライオンという魔獣。

背中には翼を持ち、自由自在に飛んだり駆けたりできる。

闇を司りし、地獄の番犬、ケルベロス。

三頭を持ち、狂ったように追いかけ、必要異常に、攻撃をしてくる。

最後に光を司りし、天馬、ペガサス。

翼をもつ馬で、自由に攻撃可能。

見た目によらず、性格は獰猛。


この六体はいずれも倒さなければ邪龍と戦うことはできない。

そして何より、この六体が現れるのは同時。

つまり、全員で一体ずつ戦っていては国の一つや二つ簡単に壊滅される可能性がある。

今は国王たちがいるため、それなりに戦えるだろう。

だが、龍の力を持たない彼らが戦うのはつらいと思われる。

そのためには手分けして倒したほうが早い。

一通り説明を終えるとアークは口を開く。


「では誰がどこを守るのか…。」


その言葉に龍の力を持つ、ゲイルス以外が口を開く。


「そんなの、自分の国に決まってる。」


そう言った全員の眼は真剣だった。

そんな彼らを見たゲイルスは嘲笑う。


「俺はやだね。やらないよ。」

「なんだと!?」


ミレウスはゲイルスに痛いほどの視線を浴びせているが、何ともないように漂々としている。

まるで暖簾に腕押し。

まったく効果がない。


「俺は邪龍と契約し、その力を手に入れる。」


その眼に宿っていたのは狂気だった。

禍々しいほどの狂気を持ち、全てを破壊しようとする。

アークはそれが彼の本心なのか不思議に思う。

もしかしたら、誰かに操られているのではないか。

そう思ってしまう。

その根拠は第一に、たまに目が揺れること。

第二にあのジグナスが、何もしていないというのは考えられないこと。

最後に彼が世界を憎むほど生きてはいないということだ。


「そんなことが可能だと思っているんですか?」


アークは敬語を使いながらも挑戦的にそう言う。

そんな彼の言葉を聞いたゲイルスはわずかだが、肩がぴくりと動いた。


「そんなの…。」


彼の中で葛藤があるのか、それとも。


「そんなの…。うあぁ…。」


答えようと口を動かそうとした瞬間、突如にゲイルスが苦しみだした。

頭を抱えて叫んでいる。

アークはやはりと心の中で思う。

これは精神支配の魔法だ。

しかもしっかりと植えつけられている。

アンチマジックでもなかなか解けないものだ。

さすがに国王の力だろうか。


「何があったんです?」


ザキロスは何が何なのか分からないといった風に、アークの顔を見る。

アークは他の者にこう告げる。


「精神支配を彼は受けています。戦闘になるかもしれません。心の準備をしてください。」


アークが言ったのと同時にゲイルスは叫びながら龍の鎧をまとい、机を破壊する。

それを見た彼らは、いつ襲われてもいいように準備を始める。

アークはカリンを近くにあった岩の陰に隠れさせるとここにいるように指示した。


「いいか?絶対に出てくるなよ?」

「わかった。」


怯えた様子で首を縦に振ったのを見てアークは安心しながらゲイルスの元に走っていく。

アーク以外の龍の力を持つ者はすでに龍の鎧をまとっていた。

水の龍の鎧はシンプルなものだった。

翼はなく、角が頭に一本生えているだけだった。

たぶん、水中でも戦えるようになっているのだろう。

土の龍の鎧は機動性に優れていないがっしりとしたものだった。

前足が常に前についている四足歩行。

だが、全身に盾のようなものが付いており、まさに鉄壁だった。

アークもそれらを見て自分も鎧をまとう。

ゲイルスは中級魔法、ブラックシーイングを使い、辺りを真っ暗にした。

この魔法は相手の視界を暗くすることによって自分の位置を特定させないもの。

だが、この魔法は脆く、魔法を使った本人に攻撃を当てれば消える。

その攻撃を当てるのが難しいのだが。

そう考えていた時だった。

誰かの叫び声が聞こえた。


「がぁぁぁ!!」


アークは急いでアンチマジックを使い、暗闇から脱出する。

しかし、急に視界が晴れたことにより、眼つぶしにあったかのように視界がホワイトアウトする。

光にだんだん慣れていくとそこには衝撃な光景があった。

ミレウスが一方的に攻撃されていた。

彼は何度も自分に回復魔法をかけているが、スピードが追い付いていない。

そこにイーゼルが突っ込んでいく。


「おらぁ!!」


ミレウスに気を取られていたゲイルスはイーゼルの巨体に体当たりされ、吹き飛んで行く。

5~6mほど飛ばされ、倒れる。

しばらく動かなかったが、立ち上がると次はイーゼルに狙いを定めていた。

イーゼルは防御魔法、上級魔法のドイルバリアを張り、守りに入る。

だが、ゲイルスの攻撃はそのシールドに届かずに吹き飛んでいた。


「手助けします!!」


レイネスが風の中級魔法、インパクトウィンドを発動していた。

風の塊をゲイルスにぶつけることによって吹き飛ばすことに成功した。

ゲイルスはレイネスに向かっていくが、レイネスは自在に空を飛び、来させないようにしている。

闇の鎧は漆黒に身を包み、角は無く、その代りにたてがみのような突起物が頭についている。

翼もあるし、尻尾もあるのだが、なぜか使っていない。

きっと何かが、そうさせないのだろう。


「食らいなさい!!」


レイネスを睨んでいたゲイルスに向かってキリカが上級魔法、アイスエッジを放つ。

アイスエッジは水属性の中にある、氷属性の魔法で上級魔法しかない。

それは尻尾に氷を纏わせ、相手に向かって振りおろしたりして攻撃する近接格闘魔法。

人によっては氷を腕にまとわせるものもいるとか。

そして何より、一番恐ろしいのは追加効果だ。

アイスエッジはくらった相手が15秒ごとに氷漬けにされていくのだ。

そう。

追加効果で氷結魔法も同時に発動できる、まさに攻撃に特化した魔法だ。

そのせいか、ゲイルスの動きが鈍くなっていく。

ザキロスはそんな彼を見て、自分の出番はないと思った。

アークはこの光景を不思議に思って見ていた。

何か、間違っていないか、と。

なぜ七聖龍同士で戦わなくてはならない?

ゲイルスが攻撃してきたから?

いや、どれも違う。

ここにいる誰もが悪くない。

悪いのは、ゲイルスを操っているやつ。

アークはそう思い、この無駄な争いを終わらせようとする。


「ヴァニシングドライヴ!!」


アークを中心に何かが放出される。

それに包まれた彼らは龍の鎧が強制解除され、今まで使っていた魔法、使おうとしていた魔法がすべてキャンセルされた。

ゲイルスの氷も解け、そして、精神支配の魔法も消えた。

そのため、何やら周りをきょろきょろしていた。


「大丈夫ですか?」


アークは龍の鎧を解除しながらゲイルスに歩み寄る。


「はい。」

「よかった。」


アークはゲイルスに微笑みかけると他の者にこう告げる。


「ゲイルスさんはただ洗脳されていただけです。彼に落ち度はありません。ですので、もう無駄な戦闘は止めてください。」


それを聞いた彼らはにっこりほほ笑みながらそれに賛同した。

この場にいた誰もが、この戦闘は無駄だとわかっていたのだ。


「ところでゲイルスさん、誰に精神支配系の魔法をかけられたんですか?」

「覚えていません。」

「そうですか。」


本当にすまなそうにゲイルスはそう言った。

アークは彼を責める気持ちはなかった。

なぜなら精神支配系の魔法が解かれたとき、術者のことを忘れるように二重で忘却魔法をかけるのだから。

そんなことよりも今重要なことは。


「アーク!!門が開くぞ!!」


イーゼルが切羽詰まった声を張り上げる。

そう、先程の戦闘でアークが使ったヴァニシングドライヴによって鎖の魔力がなくなってしまった。

だが、アークはこの方がいいと思っていた。

時間を先延ばしにして邪龍を強くするより、さっさと倒したほうがいいからだ。

それに何より、市民が混乱して戦い辛くなるより、よっぽどましだった。

中からうすら寒い空気が出てくる。

そして、六つの影が中から出てきた。

六魔獣だ。

彼らは飛び出すとそのまま一直線に各国へ向かった。


「僕たちも行きましょう!!そして、彼らを倒したらここにまた集合してください。」


アークはそう言うと馬車に乗り込む。

その時に、カリンの手を握り、引っ張っていく。

こうして七聖龍と六魔獣の戦いが始まった。


***********************


よく動いてくれた人形が自分の手から無くなったにもかかわらず、陰湿な笑みをもらし続ける男がいた。

彼は七聖龍たちの一連の行動を見て、満足げにうなずく。


「そのまま動け…。私の駒たち。」


そう。

その男にとって、七聖龍そのものが駒だったのだ。

彼は頭の中に何度も何度もイメージした世界崩壊の図を思いながらここまで来た。

そう、後は彼らが六魔獣に負けてくれれば全てが終わる。

この男は世界を憎んでいた。

過去にあんなことがあったから。

それを思い出したのか、激しく歯を食いしばる。


「こんな世界…全て終わらせてやる。」


彼はこの時思ってもみなかった。

全てが思い通りにならないなんて。

邪龍の力、そして何より、七聖龍の力を見誤っていたのだ。

そんなことに気付かず、彼は愉快そうに笑った。


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