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セイバーズ  作者: 六花
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第二章 血、肉、骨、獣

セイバーズ、正式名称は全国中高学校絶対導入組織守護委員会という名である。

やたらと長い名前だが簡単にいうと全国の中高学校が絶対に学校の組織のひとつとして導入しなければならない委員会、名前は守護委員会ということである。

世間一般には、セイバーズという名前で知られている。

ちなみに話はそれるが中高学校とは中学と高校がひとつになったもので小学校が終われば頭の良い悪いに関係なく、自分の地区にある中高学校に進学することと決められている。

中学3年生が終わっても受験はせずに同じ校舎にある高校に行くのである。

校舎は48階建てでひとつの階に一クラスという構造である。

そしてその学校の委員会のひとつであるセイバーズ。

雅樹は詳しくは知らないのだが、推測ではEUCエレクトロンユニオンクリーチャーが関係しているのではないかと雅樹は考えていた。

EUCとは電子合体型生物の略称でその名の通り電子が合体して生まれた生物である。

実際に見たことはないが非常に凶暴らしく、知性もあるため危険であるらしい。

何故生まれるのか、どこで生まれるのかも明らかにされていない。

体が電子でできているため、色々なところへ侵入でき、神出鬼没らしいのだが15年間生きてきて一度も見たことはなかった。

雅樹が住んでいる地区のセキリュティがしっかりしているということもあるのだろうが、興味本意で少し見てみたい気もした。

そしてそのセイバーズはそのEUCから学校を護るためにある委員会なのではないか。

雅樹の考えはそうだった。

そしてそのセイバーズには中学3年生になると入隊できるのであった。

故に中学3年生になるとセイバーズからのプリントが届く。

入隊希望書と活動内容が記載されているのだが、ほぼ不明であった。

というのも入隊希望者にのみ情報提供可能としか書かれていないのである。

そんなことを考えていると学校の前に着いた。

自動的に進む平らなエスカレーターで自分の階専用のエレベーターに乗り込む。

この校舎は非常に広大で横に300メートルほどの長さがあり、それぞれの教室に通じるエレベーターが設置されている。

300メートルもあるので学校の中についたとしても教室までは約10分ほどの時間がかかる。

エレベーターで24階まで上がる。

乗り込んでエレベーターが動き出すとすぐに、エレベーターが入り乱れる風景が広がった。

ケーブルが青色で蛍光効果があり、その線がさまざまに根を張っており、その上を緑色のエレベーターが暗闇の中を走っている光景を雅樹は好いていた。

その光景に見とれていると24階に到着した。

エレベーターを降りればすぐ教室だ。

教室のなかにはすでに数十人いてしゃべったり勉強したりと朝の自由をそれぞれ満喫していた。

外から見ればかなり規則に縛られた世界に見えるかもしれないが、

中の住人達は結構自由に過ごしている。

娯楽施設も設置されているし、塾や学校もある。

会社も無数にあり、そこまで束縛されている感覚はない。

「おい、雅樹!」不意に後ろから声をかけられた。

「ああ、なんだお前か」「なんだとはなんだ!お前の唯一の友人、教室でぼっちだったお前を救った救世主じゃないか!」「別にぼっちじゃないよ。それに友達お前の他にもいるから。」自称救世主の彼は雅樹と身長はさほど変わらないが、体つきは雅樹よりも断然たくましい。

名は華松 葵といった。

中学に入って雅樹に一番最初に声をかけてきたのがこの葵である。

比較的元気な性格で社交的。

しかし、自分の名前に嫌悪感があるようでいつも「女みたいな名前だ!」とわめいている。

「今日始業式だぞ!お前寝る?」「分からんなあ。先生に見つからない保障があるなら寝るけどさ」「それはそうと、お前セイバーズ入るってマジ?」「いちおう入隊希望書は書いてきたけど」「うわあ、マジなんだ~!あんな謎い委員会」「いや、まだ完全に入ると決めたわけじゃない。少し迷ってる」「なんで?」「そりゃ、怖いからだろ。EUCと関係あるっぽいし」「EUC?見たことないな」「う~んどうしよっかなあ」「まあじっくり考えるんだな」「妙に上から目線だな」「あ、もうそろチャイムが」「いや、ごまかすなよ」二人で笑いあい、まだチャイムが鳴るまでは10分あったが、お互い座ることにした。

EUC。

雅樹にとっては未知の相手。

恐ろしさも姿形も何も分からない。

だが、ひとつはっきりしていることがあった。

雅樹達が人生で一度も目にした事がないということはそれだけ一般市民には近づけたくない存在なのではないか?

だとしたら噂通りかなりの力を持っていることになる。

となると生死に関わる問題だ。

そんな敵と戦い、学生及び一般市民をその脅威から護る。

それがセイバーズ。

ではなぜ大人、学校の場合だと教師がやらないのか。

そこが妙に引っかかる点だった。

「雅樹~行こうぜ~」葵が数人の友人とこちらに向ってきた。

「ああ、もうそんな時間か」「朝の会もうとっくに終わってるぜ」

ドアの入り口から担任が顔を出して「後はお前たちだけだ。急げ」

と声を張り上げている。

全員が多人数用大型エレベーターに乗り込み、始業式が行われる室内運動場(生徒達はスポーツアリーナと呼んでいる)に移動した。

このスポーツアリーナでは出入り口付近に設置されているイベントセレクトパネルで野球、バスケットボール、サッカーなどのメジャーなスポーツからスカッシュ、ラクロス、セパタクローなどのマイナーなスポーツも選択できる。

なお、スポーツアリーナでは学校行事も行われるため行事も何にするか選択することができる。

スポーツアリーナの特徴といえば校舎の屋上にあるということだろう。

窓が大きいため、見晴らしは良いのだが完璧に並んでいるビル郡をを眺めてもなにもおもしろくなかった。

この校舎の中学生が全員整列し、あらかじめ用意されていたイスに座った。

「それでは校長先生の挨拶です。全員起立してください。」司会担当の先生がそういうと全員起立し、校長先生が壇上に上がる。

「はい、皆さんお座りください。えー今日から新学期が始まり・・・」校長先生の長ーい長ーいお話が始まった。

「みなさんにはこれからも勉学に励み・・・」校長先生の話が中盤に差し掛かった時だった。

雅樹はスポーツアリーナが何かの影で暗くなったような気がした。

その時。

「う、上だ!みんな!上を!上を見るんだああ!」生徒の一人が声

を上げた。

全員その声につられて天を仰いだ。

雅樹も上を見上げた。

そこにあったものとは・・・

例えるならば動物、それも狼のような動物の腹だった。

足も四本。

顔もあった。

それがこのスポーツアリーナの上に降ってきたのだ。

「全員逃げろ!早く!」先生がそう叫んでいたが時すでに遅し。

「バリバリバリバリバリ!」ガラスの割れる音。

その数秒後に「ズドーーーン!」という衝突音。

全員パニックで逃げ回っていた。

その何かが落ちたのがスポーツアリーナの真ん中。

雅樹はその周辺にいたため、落下の衝撃で吹っ飛ばされていた。

「雅樹!大丈夫か!?逃げろ!あいつはEUCだ!」葵が来て助け起こしてくれた。「みん・・・なは?俺らのクラスのやつらは・・・?どうなった?」「そんなこと今気にしてる場合じゃない!逃げるんだよ!」そういうなり葵は雅樹をかついで走り出した。

そして雅樹は見た。

その化け物を。

下敷きになった生徒達を。

それはこちらを見据えていた。

凶悪な赤い目に鋭く尖った牙。

その牙は異常に長く、いつしか図鑑でみたサーベルタイガーに似ていた。

その下にあったものの中には雅樹のクラスメートの顔もあった。

体はほぼ原型をとどめていなかったが。

血があった。

大量の血が流れている。

落下の際に舞い上がったほこりでよく見えなかったがそれは確かに血と骨と肉であった。

その生き物はひとつ瞬きをし、天井に飛び上がった。

信じられないような脚力だった。

そしてまた雅樹を一瞥し、ほこり舞うスポーツアリーナから消え去った。

「なんでだ・・・ちくしょう・・・なんでこんな・・・」恐怖、悲しみ、怒り、憎しみ、その全ての感情が雅樹の体を駆け巡った。

そして雅樹と葵はスポーツアリーナから脱出した。

その悲劇は一瞬の出来事であった。

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