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プロローグ 真夜中の遭遇

 この小説は麻葉紗綾さんが描いた、イラストをもとにしたイラスト小説です。

挿絵(By みてみん)






――いったい何なんだ?


 少年は地面に尻餅を付いて、目の前に現れた奇妙な生物を眺めていた。

 その夜は新月であったため、いつもより外は暗いが、近くにある外灯によって辛うじて少年の目の前にいるものの外観を把握することができた。

 それは呼吸をしており、四本足で歩いていたため、おそらく何らかの生物と言っても、過言ではないだろう。しかし真っ黒な皮膚には体毛は生えておらず、硬く、ごつごつとした印象を受ける。また歩く度に微かな振動をたてており、かなりの重量がありそうだ。目の辺りは窪んでいるが、その奥から緑色に光る目が少年を鋭く睨み付けている。

 こんな生物を、テレビやインターネットを通じて現実世界では見たことがなかった。まるで小説やゲーム内にいる、暗闇の中から現れた暗黒の使者のようだ。


――学校に忘れ物を取りに来ただけなのに、なんでこんなことになったんだ!?


 あと少しで学校というところで、この生物と遭遇、隣をこっそり通ろうとすると突然攻撃を仕掛けられたのだ。持ち前の運動神経の良さを生かして、次々と繰り出される鋭い拳を左に右にと回避したが、途中で足を滑らせて、尻餅をついてしまった

 目の前にいる生物はその隙を見逃さず、拳を振りあげ、勢いよく下ろしてきたのだ。

 状況を理解できないまま殺されるのか――そう思った矢先に、美しい長い黒髪が目の前を横切り、謎の少女が間に割り込む。

 そしてその少女は持っていた鞘を盾にして、拳を受け止めたのだ。

 一瞬の出来事に唖然とする少年。同時に安堵の息を吐こうとしたが、少女が歯を噛みしめながら険しい顔をしているのを見て、その息を吐くのをやめた。謎の生物の異常なほど腕力によって、押されていたのだ。少年は慌てて立ち上がり加勢しようとする。

 しかし彼女は焦りもせず、拳が目前に近づく寸前に鞘にかけた力を抜く。生物はバランスを崩し、倒れそうになる。その隙に彼女は液体が入った小瓶を、その生物の胸の辺りに叩きつけたのだ。

 叩きつけられた部位の皮膚は急激に溶け、内部の一部が露わになる。それを見た少年は思わず息を呑んだ。そこにはどす黒い色の石が埋め込まれており、鼓動のように動いているのだ。またそこから全身に向かって血管のようなものが多数伸びていた。

 これは人間で言う、心臓のようなものの存在だろうか。

 だが考えを巡らせている間に、その皮膚の部分はすぐに再生し、石を再び隠し始める。

 一方、少女は鞘から光輝く刀を引き抜いた。そして石が見えなくなる前に、その部分に向かって突き刺したのだ。

 謎の生物はけたたましい悲鳴を上げる。あまりの声量に少年が耳を塞ぐほどだ。

 やがて悲鳴が小さくなると、全身が粉々になり、黒い粒子と変化していく。その粒子はその場に落ち、すべてが粒子となった頃には生物は消え、地面は真っ黒に染められていた。

「どうして粒子に……」

 少年が声を発すると、彼の存在に気づいた少女は、刀を鞘に納めて、ゆっくりと近づいてきた。

「あの、いったいこれは?」

 ちょうど外灯がない場所だったため、少女の顔は見えなかった。

 事情を知るために少女に向かって歩み寄ろうとすると、突然彼女は右手を突きつけてくる。その手には何重にもなる円が描かれた鏡が握られていた。

「え?」

「今、起こったことはすべて夢よ。忘れなさい、そうでなければ、あなたはもう二度と平凡な人生は送れないから」

 彼女の手に握られているものから目が離せなかった。急激にその中心部に意識が吸い込まれるような感覚に陥る。じっと見つめていると、段々と少年の意識は遠のいていた。

 そして少女が口元に笑みを浮かべている姿を垣間見ながら、少年の意識はその場から消えた。



 やがて少年が次に意識を取り戻したのは、翌朝のベッドの上だった。



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