Episode 08 ~Awake from the dream~
「…!…、……!!」
声で目を開けると、天井が見えた。
窓から差し込む朝日が部屋を照らしていた。
突然、
“バタアァン!!”
「うわああ!?」
「こら!いつまで寝てんの!」
お袋が起こしにきた。
「突然開けんなバカ!!そして叫ぶな!心臓に悪いわ!!」
こんな言い争いはいつものこと、しかし…
「早くしなさいよ!…って、何泣いてんのよアンタ。」
言われて気付く。
「はっ?何を…」
これはいつものことではない。
手で目や顔を擦れば、たしかに僕の目から頬にかけて濡れていた。
「…そうか、夢だったのか。」
「はあ!?何言ってんのよ! ほら、顔洗って!!……ああもう、早くしなさい!!」
「んな、早く早く言わなくても…。」
机の端の置き時計を見る。
「充分過ぎるくらい朝早いぞ。」
(……長い夢を見ていたようだったけど、それでも4時間しか寝てないのか。)
「今日は始業式じゃない!! もう高校3年生なのよ!しっかりしなさい!!」
あ、そうだっけ。
昨日は春休みの課題を片付けるのに必死で…
「それに今日からアンタの高校に―する子がいるのよ!!」
ん?ちょっとまて。
考え事をしていた僕はその言葉を聞き取ることができなかった。
「はい?今なんて?」
「転入生よ! て・ん・にゅ・う・せ・い!!」
「初めて聞いたぞ! まてまて!それだけのために早く起きたり……って!そもそも僕と転入生の子と関係ないじゃないか!!」
「それが関係あるのよ! 前話さなかったっけ?お隣りさんにその転入生の子が引っ越してくるから、アンタに高校まで案内してほしいって話…。」
「んなこと聞いてねぇよ!」
“高校まで”といっても、どうせ校内をいろいろ案内しなければいけないんだろう…。
「あ~!!もう! うちに何分にくることになってるんだよ!」
お袋は親指を立てながら、
「その辺は大丈夫よ!あと30分くらい余裕があるわ!」
「ナイス!」
僕も(ウインクまでして)親指を立てて応えてやった。
男の朝の身支度は早いのだ。
“ピー……
……しかし、
聞こえてはならないはずの音が僕の耳に聞こえようとしていた。