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Episode 07 ~fade~
目の前で起きたことが信じられなかった。
これは幻想なんだと、これは目の錯覚なんだと、これは虚偽なんだと、これは、これは、これは…。
僕はわけもわからず走りだした。
そこにはもう聖域なんてなかった。
あるのは目の前で起こった現実だけ。
女の子に近づいてるはず…だ。
何度もつまずき、何度もよろけ、何度も転びそうになった。
身体中が痛くて、手が震えて、嫌な汗が頬を伝って…。
…だんだん、
―女の子を抱えた気がした。
……ぼやけてゆく、
―酷く辛そうで、顔は血の気が引き、汗にまみれ…。
(ま、待ってくれ!)
―力の抜けた身体は細身の女の子ですら重く…。
―意識が…、
(く…くそ、なんで……!!?)
『……た、…たす、け…て…。』
目の前が真っ暗になった。