第3話
そんなある土曜日のことだった。
真夏ほどではないけれど、
じりじりと照りつける太陽。
通行人も誰もいない静かな道路と、
お昼時だからかキッチン音がするいくつもの家。
いつものように部活の午前練習を終えた私は、
一緒に帰ってきた友達に分かれを告げ、
自宅への道のりを早足に歩いていた。
その時、後ろから車のモーター音が聞こえ、
お腹がすいた、なんて思いながら
私は無意識の内に道路の端によった。
「お姉ちゃん」
不意に、背後から男性の声がした。
辺りに人が居ないことから呼ばれているのは私だと悟った。
部活の癖からか、「はい」と少し高めの声で
はっきりと返事をして振り向いた私。
振り返ると、白い車に乗った男性が、
窓から顔を出して私に声をかけている。
数日前に白いバイクに乗った男性に
道を聞かれたことからか、
今回もそんなことだろうと思った。
道が分からなくなったか、
どこか探している場所があるか・・・。
方向音痴の私でも答えられるかな、と
思いながらも男性の言葉を待つと、
思いがけない言葉が飛び出してきた。
「おじさんと遊ばない?」
そういうとその男性は、視線を下に下ろした。
その視線の先をたどると、
男は車内で下半身を裸にしている。
そして次の瞬間、その男ともう一度目があった。
私は全身の血がさぁっと引いてくのを感じた。
よく「血の気が引く」なんていうけれど、
実際に体感したのは初めてだった。
なんと言っていいのか分からないけれど、
全身から冷や汗が出て、体温が急激に下がった気がした。
そして、血が全て足の方へ落ちていく気がした。
声を出そうとしても出ない。
一瞬体が硬直するのを感じた。