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第2話
両親が離婚したのは、今から12年前の私が2歳のとき。
原因は、家事や娘である私の世話を
全て母親に押し付けて、何もしなかったことと聞いている。
離婚以来会いにこない父親の事は、
私の記憶の中に何ひとつとして残っていない。
名前、姿、性格・・・何ひとつとして。
きっと、例えば通りすがりの男性を連れて来て、
この人が父親だと説明をされたとしても、
疑うことは出来ないだろう。
私はその話を、基本的にカミングアウトしている。
自分から進んで話したりはしないけれど、
聞かれれば答える程度。
この話をして、決まって返ってくる答えが
「寂しくない?」だった。
別に、今の環境に不満や寂しさがあるわけではない。
父親のことを覚えていたり、
会いたくても会えない人よりかは、
父親に関する記憶もなく、
会いたいとも思わない私はマシなんだと思う。
だから私は、会いたいなんて思わない。
このまま一生会うことがなくても、
別に構わないとも思っている。