第1話
それは、夏休みのある日のこと。
勉強会をやりに、友達の家に遊びに行った。
友達の家に入って、すぐに感じた違和感。
それは、初めて訪ねた家だからだけでは
ないような気がしてならなかった。
その違和感の正体がハッキリしたのは、
差し入れを貰ったとき。
友達の部屋で勉強をし始めて少し経ったとき、
友達のお父さんが差し入れの飲み物を持ってきてくれた。
その時に、気がついた。
違和感の原因は、男の人が居る家だった、と。
友達は、楽しそうに父親の話をした。
中学校の先生をしていることや、
体育担当でサッカー部顧問なこと。
劇団四季が好きでよく連れて行ってくれること。
素適なお父さんだって事がよく分かった。
「お父さんが、大好きなんだね」
私がそう言うと彼女は嬉しそうに、
でも少し照れくさそうに笑った。
そして、会話の流れ的に当然のように、
私の父親はどんな人なのかと問われた。
「近くの女子大の、事務をしてる人で・・・」
そこまで言って、言葉が止まった。
その質問、こっちが聞きたいくらいだよ。
それ以外、答えられる情報がない。
「ねえ、もしかして・・・」
友達が、地雷を踏んでしまったという顔をする。
ごめんね、話したつもりになってたけど、
話してないの忘れてたよ。
でも、よくこれだけで気がついたね。
きっと、想像しているとおり・・・。
そうだよ、私の家は、母子家庭。