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楽器王子〜楽器の中に宿るは王子様!?〜  作者: めんだCoda
ピアノの王子

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9/21

第9話 お願いします…!

 花蓮はテーブルに置いてある3つのカップに、食後の紅茶を注ぐ。


「お砂糖かミルクがいる人?」


「俺は大丈夫」


「俺も必要ない」


 注がれた紅茶入りのカップをスタイン、涼太のそれぞれ前に置くと、花蓮も2人の向かいの席に座る。

 すると、涼太が躊躇いがちにゴホンと咳払いをする。


「…で、花蓮、さっきの話だが、本当なのか?こいつが…」


「こいつ呼びは傷つくな〜」


 距離はとって隣に座るスタインが、頬杖をついて涼太を見る。


「あぁ…悪い。じゃあ…スタイン…が、ピアノの王子だっていうのは、本当なのか?」


 スタインを指差しながら、涼太はまだ信じられないという顔をする。

 花蓮は飲んでいた紅茶のカップを置くと、コクンと頷く。


「うん、本当だよ。急にピアノの前に現れたの」


「……本当かよ…信じられるか…」


 額に手を当て考え込む涼太。

 花蓮とスタインはそんな涼太の姿を見た後、互いに視線を合わせる。

 花蓮が、どうしようかと肩をすくめると、スタインは片眉をあげ涼太を見る。


「信じないならそれでもいい。俺の主は花蓮だ。あんたがどう思おうと関係ないからね」


 挑発的なスタインの言葉に、イラッとした表情をみせる涼太だったが、宙を見るなどして自力で気持ちを抑えているようだった。

 涼太は息を吐いた後、正面に座る花蓮を見る。


「花蓮、いいか、花蓮のご両親がいなくなった途端、こい…あー…スタイン、とこの家に2人だけで暮らすのは、どうかと思うぞ。まず、ご両親は、このことを知っているのか?」


「知らない…。…2人に言う…?」


 花蓮は唇をギュッと噛み締めて、不安そうに涼太を見つめる。


「…おい、そんな目で見るのはずるいぞ。そんな顔されたら、流石の俺も…言えない…」


「ありがとう!!お願いっ、親には言わないでっ…!色々と面倒なことになるのは嫌だし…!」


 両手を合わせ指を絡ませてのお願いのポーズをする花蓮に、涼太は、やられたーといったように、悔しそうな顔で前髪をかきあげる。


「はぁー…言わないで欲しいのは分かった。ただし、その代わりに2人に約束してもらいたいことがある」


「うん、なに?」


 真剣な顔をした花蓮は、じっと涼太を見つめる。


「2人とも、この家では男女の関係をもたず健全に過ごすこと、それを約束して欲しい」


「…だ、男女関係…??え…!?ち…ちょっ…と!涼太、何を言ってるの!?私とスタインは全然そんな関係じゃないしっ、そんなこと、あるわけ無いよ!ね!スタイン?」


「………」


 花蓮はスタインに同意を求めたが、スタインは腕を組み冷めた目線で涼太を見ただけだった。


「ちょ…ちょっと、スタインくーん…?何か言って〜…」


 花蓮はテーブルを、トントンとほんわか優しく叩くも、スタインは口をつぐんだままだ。

 そんなスタインの様子を、涼太は冷静に見つめる。


「2人が同意しなければ、悪いが今ここで花蓮のご両親に伝えさせてもらう」


 涼太がスマホを取り出し、連絡するような素振りをする。


「ちょっ…!ちょっと、涼太待って…!」


「——あんたは、勘違いしてるようだが」


 スタインが組んでいた腕を降ろすと、挑発的な顔で涼太を見る。


「俺の主は花蓮だ。花蓮の言うことならきくが、主でもないあんたの命令に従う気はない」


「……なるほど。俺の言うことに答えるつもりはない。つまりは、この状況がバレても構わない、ということだな。この状況が伝われば、普段は温厚な花蓮のご両親も、流石に心配なって帰国し、花蓮と話をするだろうな。優しいスタイン王子は、主である花蓮が悲しい思いをしても気にしないってことだ」


「そうは言っていない。花蓮に悲しい思いはさせたくない。だが、俺と花蓮の関係に、()()()幼馴染の涼太くんに口を出される筋合いはないと思ってね」


「1年経ったらお国に帰られる王子様に、花蓮が都合よく扱われないか不安になってね。家が隣同士で二十年以上、付き合いがあって、花蓮の好みも性格もよく知っている俺に口を出されるのは、そんなに不満だったかな?それは、すまなかったね」


 見つめ合う2人は、見えない火花が散ってるがごとく、視線がバチバチと激しく絡み合っている。


 花蓮は心配になり、オドオドとして2人を交互に見つめる。


「ねぇ…もうやめよ…?」


「それなら、あっちの王子様に言ってくれ。俺はもともと喧嘩をするつもりはない」


「するつもりがないなら、最初から変な提案しなければいいだろ」


「変な提案ではない。花蓮のことを大事に思うなら、当たり前のことを言ったまでだ」


「それならご心配なく。俺は、誰よりも花蓮のことを大事に思ってる。俺のことを、あんたの周りにいる男どもと一緒にしないで欲しいね」


 延々と互いに言い合う2人に、最初はオドオドしていた花蓮も徐々にイライラしてきて、深く息を吸うと、次に大きく口を開ける。


「もう、いい加減にしてっ!!」


 大きい声を出すと、スタインと涼太はハッとし目を丸くして花蓮の方を見る。


「いい?2人共、よく聞いて!ここの家は私の家で、今は両親がいないので、実質、私が主です!それから!スタインも私が呼び出したので、彼の主は私です。つ、ま、り!ここでは全てにおいて、私が主です!だから、私の話も聞いてください!」


 頬を少し膨らませた花蓮は、驚いた表情をしてピタッと止まっているスタインと涼太を交互に見つめる。


「いいですか、私は明日からもいつも通り仕事に行って、空いている時間ではピアノを弾いて、時には演奏会に出て、もうすぐ涼太との演奏会だしね?そうやって、日々のことを着々として、普段通り過ごしていくだけです。それに加えて、両親が急にいなくなったから、日々やることが増えて大変なの。仕事しながら家の中のこともやって、今まで通りピアノを練習する時間を確保できるかどうか…演奏会が近いのに不安もあるの。だから、今は余計なことで心労を重ねたくない、というか…」


 思わず、勢いで感情的に話してしまった花蓮は、言ってしまった後に偉そうに言い過ぎたと後悔する。


 すると、スタインが椅子から立ち上がり、テーブルをぐるっと回り花蓮の元までやって来た。そして、花蓮の横に跪き花蓮の手を取る。


「ごめん。花蓮の不安な気持ちを、分かってなかった。目の前で言い合ったりして、悪かった、ごめん」


「花蓮、俺もだ」


 向かいに座る涼太も、神妙な面持ちで花蓮を見つめる。


「ごめんな。俺が2人のことなのに、勝手に口出しして…。不安でつい言ってしまったんだが、よく考えれば花蓮のことなんだ、花蓮が好きにすればいいことだよな…」


「…ううん、いいの。2人とも、ありがとう…ごめんね、私こそ大きな声を出したりして…」


 花蓮は、2人に向かって優しく微笑むと、話すのをやめて静かに目を閉じ、その後に意を消したように目をパチっと開ける。


「それでね、思いついたの。2人が納得する方法」


 花蓮の言葉に固まるスタインと涼太。

 花蓮はニコッと笑う。


「男女の関係をもたず健全に過ごすことを、守ることとし、これを、1個目の願いとしてスタインにお願いしようと思うの!」

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