第24話 嵐
「綺麗だ…」
列車の車内窓から外の景色に、涼太が感嘆する。
「本当ですね。僕も海は過去に見たことはありましたが、こんなに綺麗な海と景色は初めてです」
隣同士に座ったバリウスと涼太は、外の景色を見ながら互いに和かに会話をしている。
海生島行きのこの列車は、海面ギリギリのところを走っており、また海が透き通っているため、よく目を凝らせば海の中の魚も見えるほどだった。
そんな列車の中で、花蓮、スタイン、涼太、バリウスの4人は、先頭車両のボックス席に座っていた。
窓側の席に座っている花蓮は、相向かいに座っている涼太とバリウスの会話を流し聞きしながら、窓の外をぼんやりと見つめる。
花蓮は、左隣に座るスタインの視線を後頭部に感じていたが、振り返って顔を見る気持ちにも、また話しかける気持ちにも、今は到底ならなかった。
前の主人の東堂麗香との約束を、是が非でも守ろうとするスタインの態度と行動に、花蓮は自分が東堂麗香より蔑ろにされているような気がして、虚しさと悲しさで溢れかえった気持ちに、スタインと向き合えずにいた。
(まあ、最初から無理だったんだよね…東堂さんと私なんて…比べ物にならないくらいレベルが違うもんね…)
花蓮が1人ぼーっと窓の外を見つめていると、少し離れた場所で、イルカが群れで列車と並走し始め、時折りジャンプをしてくれた。
「えっ…すごい…!可愛い!野生のイルカ、初めてみたぁ!」
嬉しくなった花蓮は思わず振り返ってしまい、スタインと真っ直ぐに目が合ってしまう。
スタインは、過去一番、優しい瞳で花蓮を見つめており、僅かに微笑むスタインの表情にドキリと動揺してしまう。
だが、そんなスタインをまだ受け入れられず、花蓮はサッと顔を背け、また窓の景色に顔を向けてしまった。
(なに…よ…そんな優しい顔で…見つめないで…よ…)
思わぬスタインの表情に、花蓮は心臓の鼓動が早くなる。
どうにか平静を保とうと、イルカの群れにまた目をやると、先ほどまで元気よく水面をジャンプしていたイルカたちが、急に姿を見せなくなった。
(あれ…イルカはどこにいったのかな…?)
そう思った、まもなくに気付いた。前方の空が真っ暗なことに。
花蓮はゆっくりと座席から立ち上がり、列車の運転席の大きい窓を見つめる。
「え…うそ、あれって…」
「やばいな、嵐だ」
眉間にシワを寄せた涼太が立ち上がり、花蓮と共に前方を見つめた。
すると、列車内に緊急アラートのような音が鳴り響き、車掌からの放送が始まった。その内容は、天候急変により予定していたルートを変更すること。そのため、到着時間が夜になってしまうこと。そして、嵐を避けて運行するが、多少近くを通るため、これから先はかなり車体が揺れるため、必ず着席しているよう案内を促すものだった。




