第23話 そんなに大事なの
「もうすぐ着くぞ」
涼太の声で目を覚ました花蓮とスタインとバリウスの3人は、目を開けて外を見る。
「わぁーっ!すごーいっ!」
いつの間にか日が昇っていた外の景色は、道路の両脇は一面青い海で、水面がキラキラと反射して輝いていた。
そして正面に見える駅は、普通の駅とは異なり立派過ぎる、まるで美術館のような建物だった。
タクシーから降りると4人は建物の駅内に入り、海生島行きの電車の始発を待つことにした。
「わぁ〜駅の中も天井が高くて素敵〜っ!」
まだ朝早いせいか、駅内には人がほとんどおらず、花蓮はくるくるとその場で回ったりして、伸び伸びと過ごす。
そんな花蓮をスタインは嬉しそうに見つめていたが、急に目の前の景色がグニャリと歪み、前に倒れかける。スタインの異変に気付いたバリウスと涼太が素早く動き、スタインの体を支えた。
「スタイン!!」
スタインは2人に抱えられるも、顔色は悪く呼吸も少し荒い。
「…大丈夫だ…」
「…始発まで、まだ時間があります。椅子に座りましょう」
バリウスに言われ、バリウスと涼太に支えられたスタインは、ゆっくりと近くにある椅子に腰掛けた。
かろうじて1人で座れてはいたが、ぐったりとしていて具合が悪いのは一目瞭然だった。
花蓮は椅子に座るスタインの前にしゃがむと、下からスタインの顔を覗き込む。
「ねぇ…スタインやっぱり帰ろう…?東堂さんがうちの会社に私のことを何て言おうと、別に私は大丈夫だから」
「だめだ。帰らない」
スタインは低く静かな声で、小さく上下に肩を揺らしながら、花蓮をじっと見つめる。
「なんで…!?東堂さんのお願いは、ただ食事を持ってきて欲しいだよ?正直、聞かなかったっていいじゃない…!」
「内容どうこうの問題じゃない。とりあえず、帰らないでこのまま行く」
スタインの頑なな態度に、花蓮は気持ちがカッと熱くなるのを感じた。
「なんで…?なんで、そんな頑なに東堂さんとの約束を守るの…?そんなに、東堂さんとの約束が大事!?私は東堂さんとの約束より、スタインの身体が心配だし、気遣ってるのに!!」
ほとんど人気がない建物内で、花蓮の声が響き渡る。
「……今は、彼女の要望に答えるだけだ」
シ———ン と静まり返る。
バリウスと涼太の2人は、心配そうに花蓮の顔を見つめる。
そのとき、建物内でアナウンスが響き渡る。
「お待ちいただいております、皆さまへのご案内です。これから当駅に、海生島行きの列車が参ります。お乗りのお客様は、ホームへとお越しいただきますよう、お願いいたします」
「…行くか」
スタインがゆっくりと1人で立ち上がったのを、花蓮は俯いたまま気配で感じ、胸のモヤモヤを抱えたまま皆の後についてホームへと向かった。




