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楽器王子〜楽器の中に宿るは王子様!?〜  作者: めんだCoda
ピアノの王子の過去

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第21話 全然チャージされない…!

 倒れかけたスタインをバリウスが受け止めると、ゆっくりと床に寝かす。


「どうしよう…!!スタイン、しっかりして…!!」


 花蓮が必死に呼びかけるも、横たわったスタインは微動だにしない。


(顔が青白い…それに唇も青くなってる…!)


「バリウス、スタインを抱えてタクシーまだ行ける?!早く帰ってピアノを弾かないと…!」


「ここにもあるわよ」


 東堂麗香が隣の部屋を指さす。


「この部屋にもピアノが置いてありますの。どうぞ、弾いて差し上げて」


 そう言うと、東堂麗香は白谷に向かって頷き、白谷は隣の部屋に行き電気をつける。


「…ありがとうございます…。お言葉に甘えて、利用させていただきます…」


 花蓮とバリウスはスタインを抱え、白谷の後に続いて部屋に入ると、そこには広い部屋にグランドピアノが置かれていた。


「すごい…ホテルの一室にピアノが…?」


 驚いた花蓮だったが、急いでピアノに座ると演奏をしていく。

 正直なところ、東堂麗香の前で自分のつたない演奏をさらすのは恥ずかしかったが、今はそんなことよりスタインのチャージに必死だった。


「スタインっ!!」


 演奏を始めて数分たった頃、バリウスの腕の中で横たわるスタインに、ピアノを弾きながら呼びかけるとスタインが薄らと目を開けた。


「良かった…!!」


 花蓮が笑顔を見せると、スタインもほんの僅かに唇を動かし笑った。だが、まだ起き上がれないのか、バリウスに抱えられたまま、だらりと横たわったままだ。


(まだ演奏が足らないんだ…全然…どうしよう…!)


 5分…10分…小まめにチャージしているいつもであれば、このくらい弾けば満タンチャージになるスタインなのだが、今は目を閉じたまま横たわったままで状態が悪い。


 焦る花蓮が視線を正面にうつすと、真っ直ぐ前の壁に東堂麗香が寄りかかり、こちらを見つめていた。その目はあざけ笑っているかのようで、口元も笑みを浮かべていた。


(…スタインの体調が悪いのに…よくあんな表情を……。それに、私の演奏の下手さに、きっと笑ってるわ…東堂さんなら…東堂さんが弾いたなら、もうとっくにスタインを元気にさせてるのかも……)


 花蓮は目を瞑り、東堂麗香が視界に入らないようにし、がむしゃらに演奏をしていく。


「スタイン!?」


 バリウスの声に花蓮は弾きながら顔を横に向けると、スタインが上半身を起き上がらせたところだった。


「スタイン…大丈夫!?ごめんね…!」


 不安でいっぱいになった花蓮は、震える声でスタインに話しかける。


「…少しずつ良くなってきた…ありがとう、花蓮…」


 いつもより小さい声で話すスタインに、まだまだ完全とは程遠いことを思い知る花蓮。


(ダメだわ…まだまだ演奏が必要…)


 すると、突然パン!という大きな音が部屋中に響き渡る。


 驚いて花蓮が手を止めると、東堂花蓮が両手を合わせて笑顔で近付いてきた。


「はい、終わりですわ」


「はい…?」


「このホテルで演奏できる時間は、9時までですの。ほら、見て?今9時を回っているのよ、もう終わりにしてくださるかしら。このホテルのルールですので、ね?」


「…わ、わかりました。お貸しいただき、ありがとうございました…。スタイン、あとはお家で弾くから、なんとか立ち上がれる…?」


「あら、家に帰るなんて、そんな余裕ありますの?」


「え?」


「海生島に行くには、時間がかかりますでしょ。今すぐに出発しないと、明日に戻って来れませんよ?あなた、島への移動手段も覚えていらっしゃらないのね」


「はい…?覚えてない…って、私は海生島に行ったことはありませんが…」


「そう、じゃあ私が教えてあげるわ、まずは…」


「必要ない!!!」


 急にスタインが大きく叫び、その声が部屋中に響き渡る。

 床に座ったままのスタインは、歯を食いしばり東堂麗香を睨みつける。


「何も、伝える、必要はない!!」


「……あら。私は移動手段で、どういった乗り物に乗るかを伝えようとしただけよ。それなのに、なあに、そんなに慌てて」


 東堂麗香は座っているスタインに近付くと、しゃがみ込みスタインの口に自分の口を重なる。


「やめろ!!」


 スタインが東堂麗香を押し退けると、東堂麗香は高らかに笑い転げる。


「花蓮、行こう。もうこの部屋には用がない」


 スタインが口を袖で拭きながら立ち上がるが、立ったその瞬間もふらついていて、慌ててバリウスが支える。


「悪い、バリウス…花蓮、行こう…」


 スタインが1歩ずつ、ゆっくりとピアノの前に座る花蓮に近付き、花蓮に触れると優しく笑みを浮かべて見つめてきた。


「行こう、花蓮」


 スタインが差し出す手のひらの上に自分の手を置くと、強く引き寄せられ一瞬にして抱きかかえ上げられる。


「きゃっ、スタイン…!!ダメだよ、まだ体は完全じゃないんだから…!」


「これくらい大丈夫、行こう」


 花蓮、スタイン、バリウスの3人は、ホテルの部屋を出ていくと、白谷が後ろからついてくる。


「下まで送ります」


 1階にエレベーターが着くと、涼太がロビーでウロウロと歩き回っており、3人を見つめると駆け寄る。


「スタイン、大丈夫だったのか!?花蓮、どうした怪我でもしたのか!?おい、バリウス、お前なんで元の姿になってるんだ??」


「…私は大丈夫…でも、スタインはまだ…だから下ろして…?」


 花蓮は自分を抱き抱えるスタインを見上げると、スタインは明るい笑顔を見せる。


「そんな不安そうな顔をするな。俺はまだいけるから」


「でも……」


「いいから」


 見つめ合う花蓮とスタインに、涼太は鼻から息を出した後、バリウスに顔を向ける。


「おい、なんで人形の姿を解いた?その姿で出てきたってことは、東堂さんにも見られたってことだろ」


「はい、そうです。勝手に申し訳ありません」


「姿を解いた理由は?勝手な真似は困るって、言っただろ」


「それは……」


 バリウスが黙って視線を下に落ろすと、抱き抱えていたスタインの腕からおりた花蓮が躊躇いがちに口を開く。


「バリウスは悪くないの、怒らないであげて…私を助けてくれただけだから」


「助けた??」


 スタインと涼太が口を揃えて言う。


「そうなの…その……別に何もない…わけじゃないんだけど…その…、あの人にその…エレベーター内で…ちょっと襲われて…」


 花蓮は、先程おた数メートル後方のエレベーター前に立ち、こちらをじっと見つめる白谷を指さす。


「あぁ…?襲われたって言った…?」


「あいつにか…?そうか、分かった…」


 明らかに戦闘モードなスタインと涼太を、花蓮は慌てて制する。


「だから、バリウスに助けてもらったから大丈夫だって…!!それより、早くここを出よう!ここを出ないと、あの人にずっと監視されてるみたいで気持ち悪い…」


 花蓮は手で自分の腕をさすりながら俯くと、スタインが素早く花蓮を抱きしめる。


「そうだよな。ごめん。早くここを出よう。それから、バリウス、花蓮を助けてくれてありがとう」


「…いや、気にするな」


 バリウスはスタインに笑いかけると、スタインに抱きしめられている花蓮を切ない表情で見つめる。


「おい、とりあえずタクシー乗るぞ」


 涼太に呼ばれ、全員ホテルから出てタクシーへ慌てて乗り込む。

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