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楽器王子〜楽器の中に宿るは王子様!?〜  作者: めんだCoda
ヴァイオリンの王子

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第11話 ヴァイオリンの王子

 涼太は花蓮の家から自宅へ戻ると、そのまま練習部屋に入りヴァイオリンをケースから取り出す。


 ヴァイオリンを構えると、思いのままに演奏していく。


(あー…クソ、モヤるな…)


 涼太は激しく弓を動かし、感情的に演奏していく。だが、指が上手く弦を押さえられず、途中で音階が崩れる。


「あー…、ダメだ!」


 涼太はヴァイオリンと弓を持った手を下にダランと下げると、天井を見上げる。


「集中できない…だいたい、ピアノの王子をそのまま受け入れる花蓮もどうかと思うが、男と一緒に暮らすことに抵抗ない…とはなー…。俺が今まで何十年、花蓮への気持ちを抑えてたと思うんだ。あー…くそっ」


 涼太は気持ちを落ち着かせようと、ヴァイオリンをケースに戻すと、眼鏡をかけて楽譜を手に取る。

 次の演奏会で花蓮と演奏する曲を確認していると、突然、部屋の中が明るくなった。

 驚いて眼鏡を外して部屋を見渡すと、ケースに置かれたヴァイオリンが発光し始めており、それに気付いた途端、急に部屋全体が真っ白く光を放つ。


「な…なんだ…!?」


 涼太が戸惑っていると、部屋全体が、カッ——!と眩しいほどの白い閃光に包まれる。


 思わず腕で目をふさぐ涼太。


「大丈夫ですよ。目を開けてください」


 突然、部屋の中で優しく低い声が響く。


「…誰だ…?」


 涼太が顔の前の腕をバッと勢いよくおろすと、ヴァイオリンの近くには白い服を着た男性が真っ直ぐに立っていた。


 髪の毛は茶髪で目元は優しく、だがどこか涼しげで、鼻筋は通り、整った顔をしていて美形だ。爽やかな貴公子にも見える。


「初めまして。僕の名前はバリウスといいます。僕は、楽器の国でヴァイオリンの王子をしております。この度、ランダム決定により、あなた様が選ばれここに召喚されました。涼太様、あなたを僕の主として、願いを3つ叶えるまで、もしくは願いを叶えずとも1年間はあなたと共に生活をいたします。どうぞ、これからよろしくお願いいたします」


 バリウスは片手を胸に当て、ゆっくりと腰を曲げて涼太に向かってお辞儀をする。


「…はっ…おい、まさか…信じられない…」


 涼太はその場に座り込み、バリウスを見上げながら唖然とする。


「俺のところにも、楽器の国の王子か」


 涼太は髪をかきあげバリウスを見ていると、バリウスが驚いたように目を見開く。


「今なんて言いました?俺のところにもと、言いましたか?」


「あぁ、そうだが…」


「あなたの近くに楽器の国の王子が、他にもいるのですか!?」


「あぁ、いる。偶然にしては、すごい確率だろう」


「どこにいるんですか、その王子は」


「…隣の家だが…やはり、そんなに驚く程の確率なのか?」


 バリウスの必死な表情に涼太は疑問を感じていると、バリウスが床に座っている涼太に素早く近付き、涼太の腕を取り立ち上がらせる。

 先ほどは遠かったことと、見た目の爽やかな印象で分からなかったが、近くに立つとバリウスが自分と同じくらいの長身であることに驚く。


「連れて行ってもらえませんか?」


「今から…か?あー…まあ、いいんだが、さっきまで一緒にいて、少しごたついたからな…。…まあ、いいか。行くか」


 涼太が立ち上がり部屋を出ると、その後ろに続くバリウス。


「ご無理を言って申し訳ありません」


 申し訳なさそうなバリウスの声に、涼太は顔だけ後ろを振り返る。


「気にするな。俺も2人の様子がまだ気になってるしな…」


 涼太は家を出ると、隣の花蓮の家に向かう。

 涼太は、自分の1歩後ろを歩くバリウスの顔をチラッと見る。


「それにしても、他の王子のことが気になるのは、なんだ、こんな近くにいるのは珍しいからか?それとも、他の何か別の理由があるのか?ずいぶん、焦っていたように見えたが」


「それは……」


 バリウスは口元をキュッと真一文字に閉めたまま、俯いていた。

 涼太は前を向くと、雲に覆われた曇天を見上げる。


「まぁいい。言いたくないこともあるよな。さっき俺と会ったばかりで、急に色々話せって言われても難しいこともあるよな」


「…すみません…」


 涼太はバリウスの申し訳なさそうな声を背中で聞くと、小さく頷く。

 間も無く花蓮の家の前に着き、涼太はインターフォンに指を伸ばす…が、押そうとして、ピタッと止め、後ろに立つバリウスを振り返る。


「一応、念のために言っておくが、ここにいる王子は気と我が強い奴だ。最初から俺を敵視してたし、俺は奴と仲良くなれていない。だから、もし俺が奴と喧嘩しても気にするなよ」


「はい、分かりました」


 キリッとした表情で頷くバリウスは少し緊張気味だったが、そのクールな表情は崩さなかった。

 意外と芯が通ってそうだと思った涼太は、フンと笑い、花蓮の家のインターフォンを押す。


 シーーーーン


 しばらく待つが、ドアが開く気配も物音もしない。


「…出かけたか?いや、ついさっきだぞ、俺がいたのは」


 もう一度インターフォンを押すと、バタバタバタと家の中から足音が聞こえ、ドアがガチャッ!と勢いよく開いた。


「涼太!ごめんね、すぐ開けられなくて。で、どうしたの?何か忘れ物?」


 花蓮は涼太を見て話しかけている途中に、すぐ後ろにもう1人男性がいるのに気付く。

 涼太は、バリウスがよく見えるよう体を横にずらす。


「いや、違う。花蓮達に会わせたい人がいてな。なんていうか、俺もまさかの偶然で驚いているんだが、ここにいるのは…」


「スタイン!!!」


 突然、バリウスが家の中を見て大きな声をあげる。

 花蓮は驚いてバリウスの視線の先を追うと、彼の視線は花蓮の後ろ、階段を降りてくるスタインを真っ直ぐに見つめていた。


「おま…まさか、バリウスか…?」


 困惑した顔をするスタイン。

 バリウスは玄関にいる花蓮を見下ろし、じっと見つめた後に瞳を大きく開け、その後に顔を上げると険しい顔でスタインを見る。


「スタイン、まさか君がここにいるなんて…君は自分の——!」


「やめろ!」


 スタインは勢いよく階段を下りると、そのままの勢いで玄関におり立ち、ドアの側に立っている花蓮の肩を掴み自分に引き寄せ、バリウスから引き離す。


「えっ!?きゃっ、どうしたの?スタイン…!?」


 花蓮はあまりの勢いと力に驚いてスタインの顔を見上げると、スタインは唇を噛み締め苦い表情をしてバリウスを見つめていた。

 花蓮は涼太を見ると、訳がわからないという顔でスタインとバリウスを静かに見つめていた。


 困った花蓮は、肩を掴んでいるスタインの手を優しくさすり、スタインの顔を見上げる。


「スタイン、知ってる方なの…?」


 花蓮は努めて落ち着いた声でスタインに話しかけると、スタインはハッとした顔で花蓮を見下ろす。


「あ…花蓮ごめん。肩、痛かった?」


 花蓮の肩を優しく撫でるスタインは、いつもの顔に戻っており心配そうに花蓮を見つめていた。


「大丈夫だよ。それより、スタインこの方は…もしかして…?」


 花蓮がそっとバリウスに視線をやると、バリウスがハッとした顔をし、手を胸に当て深くお辞儀をした。


「ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。私は楽器の国、ヴァイオリンの王子バリウスと申します。涼太様を主として呼び出され、先ほどこちらの世界に参ったばかりです」


「えっ!うそ…ヴァイオリンの王子…!?涼太の所に…!?王子がこんな近くに2人も呼び出されるなんて、こんな偶然あるの…!?すご〜いっ!」


 花蓮は両手を胸の前で合わせ、口をあんぐり開け、キラキラした目でスタインとバリウスを見つめる。


「あっ、こんな玄関で立ち話しないで、中に入ってもっとゆっくり喋らない?スタインもバリウスと話したいでしょ?」


「あ、いや…俺は…」


「ぜひ。お邪魔させていただいても、よろしいですか?」


 引き攣った顔をするスタインとは対照的に、バリウスはTHE・王子といったスマイルを花蓮に向ける。

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